創造の源泉は、新しい音楽への探求心

APR 23, 2019

INTERVIEW ジャズサックスプレイヤー 米澤美玖さん 創造の源泉は、新しい音楽への探求心

APR 23, 2019

INTERVIEW ジャズサックスプレイヤー 米澤美玖さん 創造の源泉は、新しい音楽への探求心 「創造」をキーワードに、各界のクリエーターへのインタビューを行う「創る」のコーナー。第2回はジャズサックスプレイヤーの米澤美玖さんです。ライブハウス「六本木クラップス」にて、サックスを始めたきっかけや、サックスの魅力、創造のヒントなどについておうかがいしました。

ずっとテナーサックスをやっていく!!という直感がビビッときた(笑)

――音楽を始めたのはいつ頃だったのですか。

小学校1年生ぐらいのときです。最初はピアノでした。はじめてサックスを触ったのは小学校3年生のときですね、吹奏楽部があって...

――小学校の吹奏楽部ですか。ご出身は北海道でしたっけ。

そうです、北海道の旭川です。小学校にたまたま吹奏楽部があったんですよ。そこでテナーサックスに出会いました。

――いきなりサックス、しかもなぜテナーサックスだったんですか。

そのとき人員不足でテナーサックスを吹く人がいなかったんですよ。じゃあやってみようかなって。新入生って最初にいろんな楽器を"試し吹き"できるんですけど、それでテナーサックスをやってみたらビビッとくるものがあって...

テナーサックスをやってみたらビビッとくるものがあって...


――小学校3年生でビビッと...? そこからテナーサックスが大好きに?


そうですね。そのときにもう、これしかないってなりました。それまではこれをやってみたいとか、かっこいいとか、何に対しても思ったことがなかったんです。でもテナーサックスを吹いたとき――もちろんそのときはまだ、まともに吹けないんですけど――ずっとこれをやっていく!! という直感がビビッときた(笑)。

――迷いがないですね。何か運命的なものがあったんですね。

迷いはなかったですね。吹奏楽部からは編成上の関係でフルートやトロンボーンをやってほしいと言われたこともありますけど、そこは断固拒否して(笑)、テナーサックスじゃなかったらやめるって言ったぐらい。まさに運命的な出会いでした。



ジャズ界のレジェンド、チック・コリアとも演奏したビッグバンド時代

――ジャズはいつ頃から始めたんですか。

実は同じくらいなんです。小学校で吹奏楽に出会ったときにジャズにも出会っていまして。

――それは吹奏楽で演奏するジャズですか。

いや、別のジャズのビッグバンドですね。

――旭川、すごいですね(笑)。小学生でもビッグバンドに参加できるんですか。

小学生から大学生まで自由に入れるビッグバンドがあったんですよ。きっかけは、友だちが持っていた譜面なんです。ジャズのワークショップに行っていた友だちが持っていた譜面に、外国の先生のサインがあって。そのサインがめちゃくちゃかっこよかったんですよ。それでジャズがやってみたくなったという、いま思うと謎の思考回路が(笑)。そこからジャズを聴くようになって、ビッグバンドに参加しました。

――外国の先生のサインですか。いままで自分が見たことがない、何か新しい風みたいなものを感じたのかもしれないですね。

かもしれないですね。そこから学校で吹奏楽もやりつつ、定期的にビッグバンドにも参加して。バンドにはいろんなゲストの方が参加されるんですけど、そこにあのチック・コリアさんもいらっしゃったんです。当時は正直チック・コリアさんのすごさとか、ありがたみがあまりわからなかったんですが、すごいレジェンドの方と一緒に演奏できたのは、とてもいい経験になっていると思います。印象深い出来事です。

――その後は音楽の学校に進みつつ、在学中からプロとして演奏活動をされていたとか。

そうですね。在学中のときから少しずつセッションに参加したり、徐々に仕事としてお金をいただいての演奏活動が増えていった感じで、どこからプロ活動かっていう線引きもあまり意識していなかったんです。だから学校を卒業したーっていう感覚もなかったです(笑)。ずっとサックス吹いてるみたいな。

学校を卒業したーっていう感覚もなかったです(笑)。ずっとサックス吹いてるみたいな。


――ひとくちにジャズといってもいろいろだと思いますが、米澤さんは、サックスでどんな音楽を演奏しようと思ったのですか。


最初はあまりジャンルは考えてなくて、学生時代は、クラシックからポップスまでいろいろな音楽に広く浅く触れていました。その中で、本当にこれがやりたい、とか、好きだ、と思ったのはジャズっぽい音楽が多かったですね。ただジャズに傾倒はしていたけど、スタンダードというより、何か新しいスパイスを入れたものがやりたい、となって、結果的に、いまはジャズをベースにしながらいろんな音楽がミックスされている「フュージョン」と呼ばれる音楽をやっています。



新しいことがやりやすい時代。大人の常識にとらわれない、視点を変えた曲作りをしていきたい。

新しいことがやりやすい時代。大人の常識にとらわれない、視点を変えた曲作りをしていきたい。


――新しいアルバム『Exotic Gravity』(4/24発売 キングレコード)は、通算6枚目のリードアルバムですね。サックスプレイヤーとしてではなく、音楽を創る音楽家としても活動されていますが、音楽の「創造」という部分で、普段から意識していることはありますか。


『Exotic Gravity』(4/24発売 キングレコード)


いつも新しい音楽を探していますね。最先端の音楽はもちろんですが、時には古いものからインスピレーションを受けることもあります。あとは時間が許す限り、音楽以外の芸術分野もチェックします。特に美術館が好きですね。「チームラボ」がやっているような、最先端テクノロジーを駆使した表現も好きで、よく見に行きます。さまざまな世界、ものの見え方、エッセンスを感じて、吸収したいというか。常にアンテナをはっていたいんです。

というのも音楽家として、表現者として、自分の個性は大事にしつつも、新しいことをしたいという気持ちが常にあるんです。今回のアルバム『Exotic Gravity』もその延長上にあって、脳内妄想民族〈エスニック〉フュージョンみたいな感じなんですが(笑)、これは何のジャンル? って聞かれても、答えるのが難しい。新しい風景というか。そんな感じで、いつも新しい音楽を模索しています。

――新しさ、いままでにないものが重要ですか。

そうですね。いまは本当にいろんな音楽があって、聴く人も同じように多様化していて、ジャンルレスというか"何でもあり"が受け入れられていると思うんです。だからこそ、今は新しいことをするチャンス、新しいことがやりやすい時代じゃないかなと思っています。
それに、サックスプレイヤーとして、サックスで"新しい遊び方"を研究していくのが純粋に好きなんです。それが一番の原動力になります。もうずっと遊んでいるというか、サックスと戯れている感じです(笑)。

――具体的に作曲するときはどうしているんですか。

基本のメロディはサックスで作ることがほとんどで、あとは簡単なコードとかはピアノを使います。でもほとんどテナーサックスで作っちゃいますね。

――曲作りのときは、やっぱり生みの苦しみがあるのでしょうか。

そうですね。でも、どうしても出なくて苦しいときはスパッとやめるようにしてます。苦しい中で無理やり進めることもありましたけど、そういうときにできた曲はだいたい気に入らないんです。だから無理に作るより、しばらく寝かせておいて別の曲にとりかかるとか、リフレッシュするようにしてます。

――米澤さんは、どんな音楽が作りたいですか。例えば聴いた人にどういうふうに感じてほしいと思いますか。

子ども心、遊び心があるような曲を作りたいです。例えば子どもがお家を作るための積み木セットをもらっても、自由な発想で、全然関係ない、家じゃないもの作ったりするじゃないですか。でも大人になると、どうやって良い家を作るか? という思考だけになる。やっぱりちょっとそれはツマラナイので、大人の常識にとらわれない、視点を変えた作り方を追求しています。ジャズだけど吹奏楽みたいな吹き方を混ぜてみたりだとか、サックスの吹き方、演奏方法で変化をつけるのも手段のひとつですね。曲の中にちょっとした工夫やこだわりポイントを入れるのも。そうやって遊んでいるところを、面白いと思ってもらえたり、なんとなく楽しい、などと感じていただけると嬉しいです。



やればやるほど、わからないことが出てくる。それを探求するのが面白いんです。

やればやるほど、わからないことが出てくる。それを探求するのが面白いんです。



――テナーサックスの魅力はなんですか。


まずは何といっても音色ですね。中低音域のあの音色が一番好きです。吹く人によっても全然違う、すごく個性が出るんです。テナーサックスはサックスの中でも一番個性が出る楽器だと思っています。あと小学3年生の頃からやってますけど、まだまだちゃんと吹けるようになった、と思えないところですかね。

――えっ、そんなに吹けるのに?

いやーまだまだです。楽器に限らずですが、なんでもハマっていくと、できないことが余計にわかってきますよね。やればやるほど、できないこと、わからないことがたくさん出てきて、それを探求することが面白い、みたいな。私はそれがたまたまサックスだった、というだけなんですけど。ほんとに奥深い楽器なんです。きっとできるようになって満足したら終わり、になるんだろうけど、この先もずっと満足することはないと思います。

――憧れのテナーサックス奏者はいますか。

憧れはデクスター・ゴードンですね。私のいまの音楽スタイルからいうと意外って思われる方が多いんですけど(笑)。

――デクスター・ゴードンですか。あのゆったりとした、深い音色の...

そうですね天才的なニュアンスのつけかたが、ほんとにシブい!! かっこいい!! 私のアイドルです(笑)。

――すごく気だるい感じで、リズムのとりかたが深いですよね。ちょっと意外です。

デクスター・ゴードンは、ノリをものすごく後ろに引っ張ってますよね。そして、あまり早いフレーズを吹かないんです。技術的に高度なこともそんなにしない。いまのテナーサックスプレイヤーは、難しいことができる人たくさんいますけど、その演奏が印象に残るか、というと必ずしもそうではなくて。でも、デクスター・ゴードンはほんの一音でデクスター・ゴードンだなってわかるんです。自分もそんなプレイヤーになりたいです。

憧れはデクスター・ゴードンですね。


――今後の夢や目標はありますか。


たくさんあります。まずは自分の名義で「ブルーノート」で演奏するっていうのが具体的な夢であり、目標ですね。あとは海外でも演奏したいです。ソナタも書きたいし...

――ソナタってクラシックのですか。

そうです。ジャンルに捉われず、ひとつの物語のような表現が成立するアルバムを作ったり、組曲みたいなものにもチャレンジしてみたいです。

――今年はジャズスタンダードのカバーアルバムも出されていますよね? Amazon日本のジャズ部門で70日間トップセラーだったという。



『Dawning Blue』(Trilogic)

はい。もちろんジャズは一番好きな音楽なので。普段自分がやっているスタイルとは少し違うけれど、ジャズジャイアンツをリスペクトして、スタンダードとか、名曲と呼ばれるものをカバーするのは楽しいですし、カタチとして残しておきたい気持ちはありましたね。

――ジャズのスタンダードは古典落語的なところもありますよね。

それが面白いですよね。演奏する人の解釈や、吹き方、こだわりで全く違うものに聴こえます。でもそのカバーアルバムを出すまでは、ずっとオリジナルのアルバムを出していたから、ライナーノーツに、これは米澤美玖じゃない、誰だ? って書かれたぐらい(笑)。バラードばかりのジャズスタンダードなので、ぜひ寝る前にゆったり聴いていただきたいです。


インタビュー後のリハーサルも拝見して、明るくてキュートなお話しぶりから一転、まさに一音一音が弾けるような、かっこいいサックスの音色が印象的だった米澤美玖さん。新しい表現へのこだわりや音楽への探求心が、創造の源泉でした。お忙しいところありがとうございました。

取材協力:六本木クラップス

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http://c-laps.jp
[住所]東京都港区六本木3丁目16-33 青葉六本木ビル B1


■米澤美玖 ライブスケジュール

米澤美玖 Exotic Garavity Tour I
2019/04/27(土)大阪吹田Take Five
2019/04/28(日)神戸Studio KIKI
2019/04/29(月)京都Bonds Rosary
2019/04/30(火)名古屋Doxy

米澤美玖 Birthday & Exotic Gravity Release Live!!
2019/05/04(土)JZ brat
米澤美玖(Sax)、小川悦司(G)、松本圭司(P)、須藤満(B)、則竹裕之(Dr)、小川このん(Per.)

米澤美玖 Exotic Gravity Tour II
2019/05/31(金)名古屋STAR EYES
2019/06/02(日)大阪梅田Always
2019/06/04(火)広島 Jazz Club Bird
2019/06/05(水)岡山MO:GLA
2019/06/06(木)京都Bonds Rosary
2019/06/07(金)草津COLTRANE
2019/06/08(土)神戸STUDIO KIKI
2019/06/13(木)銀座Swing

詳細はこちらをご覧ください
米澤美玖 Live Information
http://yonezawamiku.com/live.html

  • プロフィール画像 INTERVIEW ジャズサックスプレイヤー 米澤美玖さん

    【PROFILE】

    米澤美玖(よねざわ・みく)

    オフィシャルサイト
    http://yonezawamiku.com
    北海道旭川市出身。8歳よりテナーサックスを始め、11歳でビッグバンドに入りジャズを始める。尚美ミュージックカレッジ専門学校ソロプレイヤーズコンテスト金賞受賞。 現在、自らのリーダーライブでは青柳誠、松本圭司、岡田治郎、川口千里、則竹裕之など、国内のトップミュージシャンとの共演を重ねるほか、世界的に活躍するキーボーディスト氏家克典スーパープロジェクトの正規メンバーとしても活動。デビッドマシューズビッグバンドやGLAYのTAKUROのソロプロジェクトのツアーにも参加。そのほかスタジオワーク、サポート、セッションなど多くの一流ミュージシャンとのライブ共演も多く年間のライブは150本以上にも及ぶ。ジャズ~ファンクを中心としつつもジャンルにとらわれない幅広い演奏活動をする今最も注目されている若手女性サックス奏者である。2018年5月4日に発売した3rd AlbumはAmazon日本のジャズ部門26日間ベストセラー1位、iTunes Store Jazzのトップアルバムを記録。さらに2019年リリースのジャズバラードアルバムはAmazon同チャート70日間のトップセラーを記録した。現在ラジオ番組「人生アドリブですよね~!?」(http://yonezawamiku.com/radio.html)のパーソナリティとしても活躍中。

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