【連載】流転のパラダイス人生
2020.02.25
パラダイス山元
マンボウォーク
あるときはマンボミュージシャン、あるときはカーデザイナー、そしてあるときは餃子レストランのオーナーシェフ、またあるときはマン盆栽家元、さらにグリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロース、入浴剤ソムリエ、飛行機のプロ搭乗客?......。あらゆるジャンルを跨ぎながら、人生を遊び尽くす「現代の粋人」パラダイス山元さんに「遊びの発想の素」を教えてもらいましょう!
散歩嫌い
散歩嫌いなんです。散歩という言葉がそもそも大嫌い。目的もなく、ただ街をぶらぶらなんて時間と体力のムダでしかありません。私は、散歩はしません。そんなこと言ったら、老化して歩けなくなっちゃうよ!と言われそうですが、全力で歩いています。歩く歩く、とにかく大股で歩きます。あと自転車にも乗ります。そして電車にも、飛行機にも、船にも、トナカイのソリにも乗っています。それらに乗ってもマンボウォークなのです。大阪のなんばウォークと語感は近いですが、とくに関係ありません。
ただの散歩とどう違うの?
それは、ここだ!という構造物だったり、情景を見つけるまで、目を皿のようにしてひたすら歩き続けるのです。〝SNS(積極型能動的視覚発見行動)〟といいます。私が勝手にそう呼んでいるだけなので、他では通用しません。
とにかく無目的にはぶらぶら歩かない。面白い瞬間に出くわさなければ、歩く速度をグングン早めます。のんびりとぶらぶらしてはいけないのです。ボーッと歩いてんじゃねーよ、なのです。
それって、せっかちなだけじゃないの?
写真や動画で残せるここぞという瞬間に出くわしたら、躊躇なくシャッターを押します。でも、よーく考えて、画角とか考えて慎重にシャッターを切ります。
テーマは「マンボなもの」、「人間の英知が結集したもの」、「心をえぐられるもの」です。〝インスタ映え〟とかとは無縁です。むしろ忌み嫌って、最近はほとんど投稿も更新もしておりません。
マンボなものは、比較的容易に見つかります。ちょっと田舎へ出かけると、マンボな看板、建物などで溢れかえっています。以前、フジテレビの深夜枠で「ラテン専科」という番組を放送していて司会をしておりました。人気コーナーの「マンボなモノを探せ!」には、全国各地からどうしようもないほどマンボなネタが届き、深夜番組としては驚異的な視聴率を叩き出しました。さらに、番組で取り上げられなかった場所を、今だにひとつひとつシラミ潰しに訪問していたりします。マンボなモノとは、珍百景とは微妙に違うのですが、説明が難しいので次へ行きます。
お詣りしたり、見学したり
人間の英知が結集、そのものズバリ、よくこんなにモノつくったよな~というスケール感とか、人間の真面目な仕事ぶり、やりきった感に心を奪われます。探すというより、出くわす感じが多いです。
人生55歳を過ぎると、確実に人生下り坂になってきている気がします。気がしますではなく、坂道を転げ落ちていく感じ。あちこち痛くなってきたり、健康診断でなんか見つかったり・・・
あと何日生きられるかはわからなくても、とにかくムダな一日を送らないよう、一日一日全力でマンボウォークしています。ご利益がありそうなパワースポットにも出かけます。申し込んだりしないと行けない工場見学などには、とくに気合い入れて申し込みます。
大人になってからの工場見学は楽しいものです。小学生の頃のそれも楽しかったのですが、ある程度知見が備わってからの見学ですと、より深く理解して楽しむことができます。工場見学は、現場に到着するまでも結構歩いたりしますが、見学コースでさらに階段上ったり、相当ロングコースだったりするので日頃から体力をつけておかないといけません。
好きな飛行機を真近で見ることができるのは、とてもハッピーフライトです。おっと、飛んではおりませんが、その流れでどこかの空港へ思わずタッチしに行きたくなります。
心をえぐられたり
私が心をえぐられるものとは、とくにジャンルは関係なく、ただなんとなく琴線に触れる程度のものは、即断捨離というか、余計な写真とか撮らず、見なかったことにして駆け足でその場から立ち去ります。
ある一定の年齢以上の方ならご理解頂けると思うのですが、写真をカメラではなく携帯電話でパシャパシャと、フィルムの交換もせず、しかも撮った後、お店に現像を依頼したりせず、バッテリーが充電されている限り何千枚でも撮影できてしまうというのは、最近になってのことです。なんともいい時代になったというか、反面、貴重なフィルムをムダにしないよう、一枚一枚丁寧に撮るという習慣がほとんどなくなってしまいました。時に、どうでもいい写真でも連写したりと、そういう流れといえば流れなのかもしれませんが、撮る前によく被写体を観察したり、ワンテイクオーケー、一発で決められる技を、この先も私は維持していきたいなと。元写真部、鉄道研究部部長としては、そう思うのであります。
これらの写真は、撮影後の加工は一切施しておりません。HDR機能を使って、コントラスト強め、彩度高めで撮影したままの画像です。マンボウォークで、マンボな撮影を楽しむ世界、楽しいですが、体力勝負になってきました。
無目的に思われて当然かもしれませんが、本当に面白いこと、楽しいことは、ネットで聞きかじりの情報ではなく、歩いて、自分の足で探すしか他に方法がないと思います、今も、昔も。
※記事の情報は2020年2月25日時点のものです。
-
【PROFILE】
パラダイス山元 (ぱらだいす・やまもと)
マンボミュージシャンの傍ら、東京・荻窪で、招待制高級紳士餃子レストラン「蔓餃苑」を営む。1962年北海道札幌市生まれ。他に「マン盆栽」の家元、グリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロース、入浴剤ソムリエとして「蔓潤湯」開発監修者、ミリオンマイラー「プロ搭乗客」と、活動は混迷を極める。趣味は献血。愛車はメルセデスベンツ ウニモグ U1450。著書に「餃子の創り方」「GYOZA」「うまい餃子」「パラダイス山元の飛行機の乗り方」「なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?」「マン盆栽の超情景」などがある。
RANKINGよく読まれている記事
- 2
- 筋トレの効果を得るために筋肉痛は必須ではない|筋肉談議【後編】 ビーチバレーボール選手:坂口由里香
- 3
- 村雨辰剛|日本の本来の暮らしや文化を守りたい 村雨辰剛さん 庭師・タレント〈インタビュー〉
- 4
- インプットにおすすめ「二股カラーペン」 菅 未里
- 5
- 熊谷真実|浜松に移住して始まった、私の第三幕 熊谷真実さん 歌手・女優 〈インタビュー〉
NEW ARTICLESこのカテゴリの最新記事
- スペイン、韓国、チベットの文学――読書の秋、多様な世界の物語を味わう 翻訳家:金原瑞人
- 主人公の名前がタイトルの海外の名作――恋愛小説からファンタジーまで 翻訳家:金原瑞人