【連載】マインドを整える「コーチング」
2019.02.12
石見幸三
コーチングの基本は「相手に答えがある」
企業の人材育成において注目を集める「コーチング」。現代人のマインドを整えるためのコーチングとは何か。コーチングができる人、できない人。コーチングが効く人、効かない人。現場のエピソードを盛り込んでコーチングの最前線を紹介します。
はじまりは社長のなんでも相談屋
コーチング最前線ということで、コーチングコラムを書くことになりました石見です。初回は私の自己紹介も兼ねて、なぜコーチングをはじめることになったのか、そのキャリアのはじまりについて少し書こうと思います。
私のコーチングキャリアは20年近く前、地元で勢いのあった若いベンチャー企業(飲食店グループ)の社員だったときにスタートしました。社長が30歳ぐらい、私も含め社員もアルバイトも30歳以下の若い会社でした。もともとはアルバイトとしてお店で働いていたのですが社長に目をかけられ、社員にならないか、と誘われたんですね。その後、事務職についたのですが、そこからなぜか社長に"なんでも相談される人"になったんです。なぜ自分に声がかかったのかはわかりません(笑)。
社長の相談内容は多岐にわたっていて、例えば「事業の拡大に必要な資金はどうやって調達すればいい?」とか、「社員の福利厚生はどうしたらいい?」から、「スタッフ同士のトラブルを解決したい」まで本当に様々。社長は企画やアイデアにおいては天才的な閃きを持つ、カリスマ性のある人だったのですが、会社経営はあまり得意ではないという側面もありました。会社が大きくなるにつれて人が増える、人が増えるということはその分、問題も起こりやすくなります。
なので、その補佐を自分がやることになったんですね。とはいえ私もほぼ社会経験ゼロの若僧だったので、社長以上に何も知らないわけです。聞かれたこと頼まれたことを全力で調べて、答える、解決にあたる、の繰り返しで、そうこうしているうちに、気づくと社長の片腕といわれるポジションになっていました。そして社長の相談は、仕事だけにとどまらずプライベートな事にまで及ぶようになりました。
組織のトップに必要とされるのは嬉しい反面、自分も若かったのもあり、だんだん限界を感じていました。正直わからない、しんどい...と思ったことも数知れず。話を聞いて、有用性のある答えを返すには何か専門的な知識、もしくは技術が必要だと思ったんです。しかもただの(といったら語弊があるかもしれませんが)経営コンサルタントみたいなことじゃなくて、それも含めてあらゆる面、たとえば精神的な部分といったソフト面もカバーするようなもの。そんなときに出会ったのがコーチングです。
コーチングの基本は「相手に答えがある」
誤解されやすいのですが、コーチングは人に何かを「教える」ということではないんです。「答えはその人の中にある」というのが、コーチングの基本の考え方。その人の中にある答えをうまく導くとか、気づいてもらうとか、掴んでもらうっていうのがコーチング。
当時、私は社長から雇われている一社員ですよね。ある程度信頼されているとはいえ、やっぱり思ったことを正直に言えないんです。「社長それは間違ってると思います」とか、「それはやめた方がいいです」とかすごく言いづらいし、言いたくない。だから自分が言わずに済ませるには、"社長自身に気づいてもらうしかない"と思ったのもコーチングを学ぼうとしたきっかけです。戦略的防衛みたいなイメージかもしれません(笑)。
そんな流れで、通信制(電話会議形式で受講)のスクールでコーチングを勉強し始めました。仕事をしながら勉強していたので、学んだそばから即実践、というかたちで社長の他に、店長(部門長)に対してもコーチングを行うようになりました。
店長クラスの悩みで最も多いのが「人がすぐ辞めてしまう」「思ったより成長してくれない」「仕事を任せてもうまくやってくれない」といった人材育成の面と、「売上げが伸びない」といった数字的な問題でした。
人が変わらないと会社は変わらない
そんな二方向から圧の多い店長(部門長)の相談を、一つひとつ聞いて解決していくことで、店長育成もできるようになり、うまく成長のサイクルを作っていけたことはコーチとして自信を得たきっかけでもあるし、自身のキャリアの出発点でもありました。実際、自分がいた6年の間に、売上げという数字的な面では3倍以上の成長を遂げることもできました。
その過程、社内のいろんなポジションの人間をコーチングすることで、会社は人なんだ、と確信するものがありました。人が変わらないと、会社は変わらないということ。今振り返ると、至らない点もあったと思いますが、コーチとして大切な気づきを得ることができた原体験でした。そこからいくつかのステップを挟んで独立し、少しずつ自分なりのやり方を確立して今に至ります。
コーチは経営コンサルタントとは違います。経営コンサルタントは経営面でうまくいかない場合に具体的なアドバイスをするという役割がありますが、コーチはアドバイスしません。あくまでも自分たちの中にあるはずの答えを見つけてもらう、考えてもらう、掴んでもらう、というのがコーチング。できないと思い込んでいた事、その要因を一つひとつクリアにすることで自ら乗り越えてもらいます。
コーチングは今日話したから明日結果が出る、というものではありません。ただじっくりセッション(双方向コミュニケーション)することで、その人が気づきを得て変わっていく、その過程を一緒に見ることができる、とてもやりがいのある仕事だと思っています。次回からは、私が携わってきたコーチングについて、もう少し具体的な例とともにお話ししていきたいと思います。
※記事の情報は2019年2月12日時点のものです。
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【PROFILE】
石見幸三(いわみ・こうぞう)
株式会社コーチングファームジャパン 代表取締役
http://saikyou-team.com/
<専門分野>
ビジネスコーチング、経営者・エグゼクティブコーチング
チームビルディング、チームコーチング(ファシリテーション)
事業仲介(ファシリテーション)リーダーシップ
<資格>
ギャラップ社認定ストレングスコーチ
ハーマン・インターナショナル認定ハーマンモデル・ファシリテーター
米国NLP(TM)協会認定NLPマスタープラクティショナー
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