【連載】創造する人に役立つ文房具
2025.05.07
菅 未里
ボールペンのインクの種類と違いを知ってますか?|菅未里の「創造する人に役立つ文房具」
文房具ソムリエール・菅未里さんが独自の視点でセレクトする「創造する人に役立つ文房具」。今回は文房具の中でも特に使用頻度が高いボールペンの「インク」にフォーカスしました。日本の文房具店ではボールペンは油性、水性、ゲルというインクの種類で分けて陳列されていることが多く、愛用の銘柄がある方やインクの好みの傾向がある方はインクごとに商品を見て選んでいます。今回はそのインクの種類と違いについてご紹介します。
インクの種類ごとの特長と違い
日本は世界的に見ても文房具が充実した国ということをご存じでしょうか。ただ単に種類が多いのではなく、店頭に並ぶ多くが高品質であり、良心的な価格設定という、実はとても珍しい国なのです。
しかし、あまりに水準が高いため、日本で生まれ育った方の多くは日本が文房具の豊かな国だと気づいていません。海外の文房具は買ってすぐに壊れたりすることも珍しくありませんが、日本の文房具ではそのようなことに悩むことはほとんどありません。
そんな高水準な商品の中でも代表的なアイテムがボールペン。読者の皆さんが使っているボールペンはどのようなインクのボールペンでしょうか。なんとなく使いやすい物を手に取っている方が多いので、まずはインクの種類ごとに特長を解説します。
よく知られているボールペンには油性の「ジェットストリーム」シリーズがあります。文房具店では常に売り上げ上位に入り、ビジネスパーソンに愛用者が多い定番ボールペンです。
左から「ジェットストリーム 多機能ペン4&1(低粘度油性)」「ジェットストリーム スタンダード(低粘度油性)」「JETSTREAM シングル Lite touch ink搭載(低粘度油性)」
ジェットストリームは一般的な油性ボールペンよりもインクの粘度が低い「低粘度油性」と呼ばれるインクを使ったボールペンで、最近ではさらに軽く書ける「JETSTREAM Lite toucgh ink」(写真左から3本目)というインクも開発され、人気を集めています。
水性やゲルのインクに比べてインクの乾きが早く、滲みにくいほか、書き心地が滑らかという特長があります。
ゲルインクには、「サラサクリップ」や「ユニボールワン」といった学生からの人気が高い定番ボールペンがあります。ボテ*やかすれが少ない快適な書き心地、はっきりとした発色、色数の多さも特長です。
*ボテ:ボール保持部の端にインクが溜まり、そのインクのかたまりが紙に付くこと。
「サラサクリップ(ゲル)」(左)と「ユニボールワン0.5mm(ゲル)」
最後に、水性インクです。代表的な商品に「Vコーンノック」があります(写真の左から05極細、07細字)。水性インクは書きはじめにインクの塊がボテッと出ることがなく、書いている最中にインクのかすれが起こりにくい特長があります。
筆圧が弱い人に使いやすい水性ボールペン
水性インクは油性やゲルと比べてインクの粘度が低くサラサラとしているため、書き心地も軽く、文字は濃くはっきりと書けます。
種類が多い油性やゲルと比べると存在感が薄いインクではありますが、インクがサラサラと出てくるため、手首をいためて文字が書きにくい方、筆圧をかけづらい方との相性もいい種類です。
一方で、インクの乾きは油性やゲルに比べてやや遅いので乾く前のインクが手にあたって伸びてしまうこともあります。左ききでインクが手についてしまう方などは注意したいポイントです。
また、水性は油性やゲルよりもインクが広がりやすいので、油性で0.7mmのボールペンを使っている方は水性では0.5mmを使うなど、油性よりも一段階細いボールペンを選ぶとこれまでの筆記感とのギャップが少なく使えるでしょう。
水性はボールペンの種類が多くはありませんが、「Vコーン」シリーズはキャップ式とノック式があり、キャップ式は1991年発売以降長年愛され続ける名品です(写真はノック式)。
インクは使い手との相性で決める
油性、ゲル、水性とインクを意識して書いてみると書き心地の違いがわかります。どのインクがいい、悪いということはなく、それぞれのインクの特長と人(利き手や筆圧、使う場面など)との相性によって使い勝手のよさが異なります。
一度文房具店に出かけてインク別で試し書きをしてみてください。自分にあったインクを見つけると文字を書くことが楽しくなりますよ。
【ご紹介したアイテム詳細はこちら】
三菱鉛筆「JETSTREAMシングル Lite touch ink搭載」
※記事の情報は2025年5月7日時点のものです。
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【PROFILE】
菅未里(かん・みさと)
文具ソムリエール。
文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具の専門家として独立。
国内外で商品や売り場の企画・監修、各種メディア出演、メーカーのコンサルティング、執筆などを行っている。日経MJなど連載多数。
著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。
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