
【連載】季節の不調を整える“日常”薬膳
2026.09.15
国際中医薬膳師・フードコーディネーター:いのうえ陽子
乾燥しがちな秋の体を潤す「薬膳鍋」レシピ
なじみのある食材で季節の体調不良を整える「日常薬膳」。連載4回目は、空気が乾燥しやすく、「肺」に負担がかかりやすいとされる秋の養生がテーマです。国際中医薬膳師のいのうえ陽子さんに、体を潤し、夏の疲れをいたわりながら冬に備える「薬膳鍋」のレシピを教えていただきました。
写真:キッチンミノル
目次
秋の体に必要なものとは?
秋は空気が乾燥しやすい季節です。中医学では、この乾燥による邪気を「燥邪(そうじゃ)」といい、五臓の中では「肺(はい)」が影響を受けやすいと考えられています。
燥邪の影響を受けると、皮膚は乾燥し、毛髪はぱさつき、大腸に影響が及ぶと便秘になります。さらに、燥邪の影響を受けると体内部の乾燥が進み、肺に熱がこもり、咳、痰、喘息などの症状につながることもあります。鼻や気管の機能が著しく低下すれば、細菌やウイルスが繁殖しやすくなり、風邪やインフルエンザにもかかりやすくなってしまうので注意が必要です。
また、朝夕に冷え込み皮膚の表皮が閉じてしまうことも、肺(呼吸器)への負担につながります。表皮が閉じると汗腺や皮脂腺からの排泄が少なくなり、皮膚からの代謝分を口や鼻などの呼吸器で補わなければならなくなります。中医学ではこれも「肺」が弱る要因と考えます。
そこで秋は、中医学で体を潤す水分のことを指す「津液(しんえき)」を補い、「肺」をサポートする食材を意識して摂ることがポイントです。また、夏の間にたまった疲れを取り、冬に備えて「気」を蓄えるために、消化を担う「脾胃(ひい)」をいたわることも大切とされています。
●「肺」をサポートする食材を選ぶ
中医学における「肺」は、西洋医学の肺と同義ではありません。呼吸するだけではなく、全身の「気」を生成し、循環させることで体のバランスを整え、体内の水分代謝の調整、皮膚のバリア機能を保つことで、邪気を防いでくれます。
秋は「白い食材」がよいとされ、津液を補う白い食材のほか、脾胃を養って津液を生む食材、辛味のある食材、肺と表裏一体とされる大腸をサポートする食材を摂り入れるのがおすすめです。
・白い食材
白きくらげ、松の実、白ごま、ゆり根、れんこん、大根、長芋、豚肉、梨、牛乳、豆腐、豆乳 など
・脾胃を養い、津液を生む食材
ごま、きゅうり、トマト、オクラ、アスパラガス、ズッキーニ、レモン など
・辛味のある食材
辛味のある食材は、体を温め、余分な水分や滞った気の流れを促して、肺や大腸をサポートするとされます。ただし、乾燥を助長してしまうこともあるので摂りすぎには注意しましょう。
長ねぎ、しょうが、わさび、唐辛子、大根、玉ねぎ、しそ、にら、アルコール(ビールを除く) など
・大腸をサポートする食材
まいたけ、しいたけなどのきのこ類、いも類(さつまいも、こんにゃく、自然薯、大和芋、長芋)など
●消化(脾胃)をサポートする食材・補気する食材を選ぶ
秋は、外側から保湿して乾燥から体を守るとともに、内側からは食事の力を借りて潤すことも大切です。さらに、夏の間にたまった疲れを取り、冬に備えて「気」をしっかり蓄えておきたい季節でもあります。消化吸収を担う「脾胃」をサポートする食材と、気を補う「補気」の食材を意識して摂り入れましょう。
・補気する食材
里芋、さつまいも、長芋、牛肉、鶏肉、豚肉、サバ、サンマ、まぐろ、米、きのこ類、栗、なつめ、長ねぎ、ほうれん草、豆腐、ぶどう など
・脾胃をサポートする食材
米、そば、にんにく、クミン、長ねぎ、豆腐、白ごま、紫キャベツ、れんこん、玉ねぎ、豆乳、卵、しょうが、長芋、かぼちゃ、栗、さやいんげん、キウイフルーツ、梨、みかん、白きくらげ、鮎、サワラ、サンマ、鶏肉、豚肉、牛肉、はちみつ など
秋の薬膳レシピ|とろろごまダレの寄せ鍋
秋に意識したい「潤い」と「気」を、身近な食材で補う薬膳鍋です。豚肉や豆腐は津液を補い、乾燥しやすい季節の「肺」をサポート。春菊、長ねぎ、しょうがを合わせ、きのこ類や長芋で「気」と「脾胃」もいたわります。白ねりごまのコクのあるつけダレに、とろろとお好みでラー油を加えて味わう、食べ応えのある一品です。最後の〆は雑炊やうどんがおすすめです。

材料(2人分)
・豚バラ肉(しゃぶしゃぶ用)...150g
・酒...大さじ2
・豆腐...1/2丁
・春菊...適量
・長ねぎ...1/2本
・しいたけ...2枚
・まいたけ・しめじ...合わせて100g
・出汁*...400ml
・出汁(つけダレ用)...80ml
・長芋...100g
・ラー油...適量
*出汁は有塩の出汁パックを使用しています。無塩の出汁パックでもOK。塩味は調整してください。
▼A
・白ねりごま...大さじ2
・醤油...大さじ2
・きび砂糖...大さじ1
・しょうが...小さじ2
作り方
- しょうがをおろしてからボウルにAの材料を入れて混ぜ合わせ、出汁80mlを少しずつ加えながらさらに混ぜ、つけダレをつくります。
醤油に白ねりごま、きび砂糖、おろししょうがの順に混ぜながら加えていくと撹拌しやすい - 豚肉は酒を絡ませます。豆腐、春菊、長ねぎ、しいたけ、まいたけ、しめじは食べやすい大きさに切ります。
豚バラ肉に酒を絡ませておくと、鍋に入れた際に肉がほぐれやすくなる - 鍋に具材と出汁400mlを入れてふたをし、火が通るまで加熱します。
- 長芋は食べる直前に皮をむいてすりおろします。つけダレにとろろとラー油(お好みの量)を加え、鍋の具材をつけていただきます。
ラー油の辛味を加えることで、体を温める
〆は雑炊にしたり、うどんを加えたりして、つけダレを絡ませて味わうのがおすすめです。
※記事の情報は2026年9月15日時点のものです。
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【PROFILE】
いのうえ陽子(いのうえ・ようこ)
国際中医薬膳師・フードコーディネーター
大手料理教室で講師をした後、祐成陽子クッキングアートセミナーでアシスタントを務める。現在はフードコーディネーターとして、レシピ開発、スタイリングに携わる。
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