
【連載】季節の不調を整える“日常”薬膳
2026.01.06
国際中医薬膳師・フードコーディネーター:いのうえ陽子
冬の疲労回復を助ける薬膳レシピ
「薬膳」と聞くと、特別な食材を使ったちょっと難しいものと思うかもしれませんが、実は、私たちが普段食べている食材の組み合わせを工夫するだけで薬膳になるんです。2025年の「新語・流行語大賞」にノミネートされるなど、今話題の薬膳をおいしく、そして手軽に取り入れられるレシピを、国際中医薬膳師のいのうえ陽子(いのうえ・ようこ)さんに教えていただきました。
写真:キッチンミノル
目次
冬の体に必要なものとは?
そもそも薬膳とはどんなものなのでしょうか。薬膳とは、東洋医学のひとつである中医学(中国伝統医学)の理論に基づいて作られる、健康の維持・増進、疾病の予防、病後の回復を目指す食事のこと。......というと、専門的な素材を使うなど日常的に取り入れるのが難しいと思われがちですが、実はそんなことはありません。スーパーマーケットで気軽に買える食材の組み合わせを少し変えるだけで、薬膳になるんです。
連載1回目は、イベント続きで生活のリズムが狂いやすく、ついつい溜め込みがちな「冬の疲労」に着目します。肩こりや腰痛が長引いている、胃腸の調子がなんとなく悪い、朝からだるいなど、体調不良を抱えていませんか? そんな冬の疲労回復をサポートする薬膳レシピをご紹介します。いのうえさんによると、冬はこんなことに気をつけるとよいそうです。
●「腎」を補う食材を選ぶ
寒くなると働きが低下しがちな「腎*」をサポートする食材を選ぶとよいそうです。中医学では生命力そのものとされる「腎」が弱ると、気力や体力が低下し、体調も崩しがちに。黒ごま、ひじき、昆布、黒豆、黒きくらげといった黒い食材や、鹹味(かんみ)といって、魚介類や海藻類などミネラルが豊富なもののほか、醤油、味噌なども腎をサポートします。
*腎:西洋医学の腎臓とは異なり、生命活動の根源的なエネルギー(精)を蓄え、成長・発育、生殖、水分代謝などを司る非常に重要な概念。
●気血を巡らせる食材を選ぶ
中医学では、人の体は「気・血・水」という3つの要素で構成されており、この3要素のバランスが整っていて、巡っていることを健康と考えます。特に冬は寒さで「気血」が巡りにくく、滞る傾向があります。今回は、玉ねぎ、サバ、酒、味噌で血を巡らせる食材をチョイスしています。

●体を温める食材を選ぶ
薬膳には「体を温める(熱性・温性)」、「体を冷やす(涼性・寒性)」、「温めも冷やしもしない(平性)」という食材の分類があります。冷えやすい冬は、体を温める食材がおすすめです。鶏肉、サバ、しょうが、ねぎ、くるみ、唐辛子などが該当します。また、食材の性質だけでなく、「温かい食事」であること、そして「よく噛んで食べる」ことも食材を温めて体に取り入れることにつながると考えます。
では、国際中医薬膳師・いのうえ陽子さんに教えていただいた、手軽でおいしい薬膳レシピをご紹介します。
冬の薬膳レシピ①|サバ缶のおろしスープ

なんとサバ缶が滋味深い味わいの汁ものに変身します。少しとろみをつけたスープで体の中から温まるおかずスープです。腎をサポートするサバ、体を温めるしょうが、消化をよくしてくれる大根おろしで作ります。香りのアクセントに冬が旬の春菊をプラス。気を巡らせ、肺を潤して風邪をひきにくくする作用があります。
薬膳は食材を丸ごと食べることを大切にしているため、大根やしょうがは皮を剥かずに使用します
材料(2人分)
・サバ水煮缶...1缶
・しょうが...1/2片
・春菊...15g
・大根...100g
・片栗粉...小さじ1
・水...小さじ1
・出汁*...300ml
*出汁は有塩の出汁パックを使用しています。
作り方
- サバ水煮缶は身と汁に分けます。
- しょうがは皮付きのまま千切り、春菊は小口切り、大根はおろします(おろし汁も使うので捨てないでください)。
- 片栗粉と水を合わせます。
- 鍋に出汁、サバ水煮缶の汁、しょうが、春菊、3を入れて加熱します。とろみがついたら大根おろし(おろし汁ごと)を加えます。
- 器にサバの身を入れ、4を注ぎます。
冬の薬膳レシピ②|鶏の黒つくね

おろし玉ねぎとマヨネーズを加えてふわふわに仕上げた鶏つくねと、コリッとしたくるみの食感の対比が楽しいおかず。体を温め、気を補う鶏肉、気を巡らせる玉ねぎ、体を温め腎をサポートするくるみに、黒い食材であるひじき、黒ごまを組み合わせました。隠し味の柚子胡椒が素材の味を引き立てます。
鶏肉は、肉類の中でも特に体を温める効果があるとされています
材料(2人分)
・ひじき(乾燥)...2g
・くるみ...20g
・玉ねぎ...30g
・鶏ひき肉(もも)...200g
・塩...少々
・黒ごま...10g
・マヨネーズ...大さじ1
・柚子胡椒...小さじ1/2
・片栗粉...大さじ1
・油...小さじ2
▼タレ
・醤油...大さじ1
・酒...大さじ1
・みりん...大さじ1/2
・水...大さじ1
・きび砂糖...大さじ1/2
作り方
- ひじきはたっぷりの水(分量外)に入れて戻します。5~10分ほどしてひじきがふっくらとしたらザルにあげて水気をきります。くるみは粗く砕き、玉ねぎはおろします。
- ボウルに油以外の全ての材料を入れてこねます。まとまったら6等分にし、形を整えます。
- フライパンに油を入れて熱し、2を入れて中火で2分ほど焼いたら、ひっくり返して2分焼きます。水50ml(分量外)を加えて蓋をし1分ほど蒸し焼きにします。蓋をとり水分をとばし、取り出します。
- フライパンにタレの材料を入れて中火で加熱し、ややとろみがついたら3を戻し絡めます。
冬の薬膳レシピ③|長芋のジョン・黒ごまねぎ味噌ダレ

「ジョン」とは野菜や海鮮などに小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせて油で焼いた韓国料理のこと。このレシピでは、長芋をジョンにします。消化もよく腎をサポートする長芋は滋養強壮の働きがあるので、疲れているときの食事にぴったり。添えるタレにもこだわって、体を温める長ねぎ、鹹味で腎をサポートする味噌と、疲労回復パワーを引き上げる食材を組み合わせました。ほんのり甘めのやさしい味わいが、気持ちもリラックスさせてくれます。
卵は血を補うほかメンタルを安定させる働きも
材料(2人分)
・長芋...180g
・塩...少々
・薄力粉...少々
・卵...1個
・油...大さじ1
▼タレ
・長ねぎ(みじん切り)...40g
・味噌...大さじ1/2
・みりん...大さじ1
・醤油...大さじ1/2
・きび砂糖...小さじ1
・黒すりごま...大さじ1
・油...小さじ2
作り方
- 長芋は皮付きのまま厚さ1cmくらいの輪切りにし、塩を振り、薄力粉をはたきます。卵はしっかり溶きほぐします。
- フライパンに油(大さじ1)を入れて熱し、長芋を卵にくぐらせて、弱火で片面3分ずつじっくり焼き、取り出します。
- タレは、フライパンに油(小さじ2)を足して長ねぎを加えて炒め、香りがたったら、味噌、みりん、醤油、きび砂糖を加えます。全体がなじんだら火を止めて黒すりごまを加えます。
※記事の情報は2026年1月6日時点のものです。
-

【PROFILE】
いのうえ陽子(いのうえ・ようこ)
国際中医薬膳師・フードコーディネーター
大手料理教室で講師をした後、祐成陽子クッキングアートセミナーでアシスタントを務める。現在はフードコーディネーターとして、レシピ開発、スタイリングに携わる。
RELATED ARTICLESこの記事の関連記事
-
- 寝付きが悪い、眠りが浅い......。睡眠の質を高める栄養素とは? 管理栄養士:森由香子
-
- 成分? 食感? 味? 自分に合ったヨーグルトの選び方【ヨーグルトマニア・向井智香さんおすすめお... 向井智香さん カップヨーグルト研究会〈インタビュー〉
-
- スパイスカレーを日本の家庭料理にしたい|印度カリー子さんに聞くスパイスの魅力と本格カレーレシピ 印度カリー子さん スパイス料理研究家〈インタビュー〉
-
- 冷凍野菜と缶詰で、手軽に美味しい本格レシピ いのうえ陽子さん フードコーディネーター〈インタビュー〉
-
- いまこそ知っておきたい「バランスの良い食事」の基本 森由香子さん 管理栄養士〈インタビュー〉
NEW ARTICLESこのカテゴリの最新記事
-
- 冬の疲労回復を助ける薬膳レシピ 国際中医薬膳師・フードコーディネーター:いのうえ陽子
-
- 個性派ぞろい! 変わり種お取り寄せ餃子10選――カラフル餃子からヘルシー餃子まで|小野寺力おす... ぎょうざジョッキー:小野寺 力
-
- お取り寄せで楽しむ、絶品ご当地餃子15選|小野寺力おすすめ! 全国お取り寄せ餃子道楽② ぎょうざジョッキー:小野寺 力
-
- 冷凍餃子のパリッとおいしい焼き方をプロが伝授! 羽根つきも簡単に焼くコツとは|小野寺力おすすめ... ぎょうざジョッキー:小野寺 力
-
- 稲垣貴彦|三郎丸蒸留所の革新は、ジャパニーズウイスキーの未来を形づくる 稲垣貴彦さん 三郎丸蒸留所〈インタビュー〉





