乾燥・肌荒れが気になる季節。肌の調子を整える栄養素とは!?

【連載】「明日の体調」を変える「今日の食」

管理栄養士:森由香子

乾燥・肌荒れが気になる季節。肌の調子を整える栄養素とは!?

1日中だるい、疲れが取れない、肌がカサつく......。なんとなくバランスよく食事を摂っているつもりでも、体調は日々変化していきます。そんな何気ない体調の変化や不調は、体が今何を欲しているのかを雄弁に物語るサイン! 連載第1回は、空気が乾燥する冬ならではの肌について紹介します。その肌の不調、もしかしたら外的要素だけでなく食べ物や栄養素が原因かも!? 「明日の体調」を変える「今日の食」を、管理栄養士の森由香子(もり・ゆかこ)さんに監修いただきました。

肌は身体の内側を映す鏡。原因は栄養素や食べ物にあり!

乾燥してカサカサしたり、ニキビや吹き出物が増えたり、最近なんだか肌の調子がよくない......。空気が乾燥する季節だからこそ、「ちゃんと肌のケアをしているのにどうして?」と疑問に感じている方も多いかもしれません。けれど、そんな肌のトラブルの原因は、乾燥などの外的要因だけではなないかもしれません。


肌は、身体の内側の状態を映し出す鏡といわれているほど、栄養状態に敏感です。偏食や欠食をしたり、栄養過多になったりしていませんか? 栄養素が不足していたり、栄養バランスが悪いと、日頃のケアだけではカバーしきれない肌荒れや乾燥、炎症などが起きる場合も少なくありません。



まずは、乾燥肌や肌荒れなど、あなたの肌の不調が、栄養素不足に関係しているのかを6つのチェックリストで確認してみましょう。3つ以上当てはまる人は、肌荒れや乾燥の原因が栄養素不足にある可能性が高いかも!? 肌が欲している栄養素を知ることで、内側からつくる健康的な肌を目指しましょう!




栄養素不足チェックリスト

→たんぱく質や鉄、亜鉛が足りていない可能性があります。 →糖分や脂肪の過剰摂取により、体内で活性酸素による糖化や酸化が進んだり、ビタミンB2などのビタミンB群の消費が高まっている可能性があります。 →肌の乾燥や炎症をおこしている恐れがあり、皮膚や粘膜のバリア機能を強化するビタミンA不足の可能性があります。 →朝食を抜くと自律神経のバランスを乱す恐れがあります。欠食すると、その分、エネルギーや栄養素の不足、偏りにつながります。 →ビタミンCが不足している可能性があります。ビタミンCは、コラーゲン生成を助けることで肌荒れやシワを防ぎます。 →βカロテンやビタミンEが不足している可能性があります。βカロテンは抗酸化作用があり、ビタミンEは血行を促進し肌の水分保持に働きます。




肌の改善で摂取したい6つの栄養素

ビタミンA

脂溶性ビタミンと呼ばれていて、脂質と一緒に摂ると吸収されやすくなるビタミン。皮膚や粘膜を丈夫にする働きや、優れた抗酸化作用があります。また、緑黄色野菜に多いβカロテンも必要に応じて体の中でビタミンAに変換されるので、毎食適量を摂取できるとよいでしょう。

ビタミンAを摂取するなら牛乳がおすすめ!

牛乳やヨーグルトなどの乳製品には、必須アミノ酸のひとつであるロイシンという筋肉のエネルギー代謝に深く関わる成分が豊富に含まれています。必須アミノ酸は体内で生成することはできないため、食事から摂取しないとなりません。


また、ロイシンは筋肉を合成するためのスイッチを押す成分であることが近年になって分かってきました。皮膚の下は筋肉でできており、それは手足だけでなく顔も同様。健康な筋肉づくりは乾燥に負けない健康な肌の生成にもつながります。


牛乳の画像


さらに牛乳に豊富に含まれるカルシウムは、肌の細胞の代謝を促進させます。カルシウムは体内に吸収されにくいミネラルですが、食品の中でも吸収率が高いのが牛乳のカルシウムなのです。


また、卵黄もビタミンAを豊富に含むほか、美容ビタミンともいわれるビタミンB2を多く含有。皮膚やツメ、髪の細胞の再生や保護などに関係しているビタミンB2が不足すると、肌のバリア機能が低下して乾燥をはじめ、過剰の皮脂分泌といった肌のトラブルを招く可能性があります。



ビタミンC

ビタミンCは抗酸化ビタミンのひとつで、健康な肌づくりの重要な役割を担うコラーゲンの材料にもなっていて、血管壁を丈夫にする働きがあります。厚くしなやかで丈夫な血管は、健康な血液を送り出し、肌の細胞に栄養を行き渡らせることにつながります。また、ビタミンCは鉄の吸収を助けることでも知られています。

ビタミンCを摂取するならみかんがおすすめ!

ビタミンCを摂るなら生で食べられる旬の果物がおすすめです。ビタミンCは水溶性なので茹でると栄養素が逃げ出してしまい、生で食べた方が効率的に摂取できす。ブロッコリーにもビタミンCは豊富に含まれますが、茹でずに、電子レンジで加熱するとよいでしょう。ブロッコリーは野菜の中でもたんぱく質が多く、βカロテン、葉酸、カルシウム、食物繊維、抗酸化作用のあるスルフォラファンも含まれているので、肌によい影響を与えます。


みかんの画像



ビタミンE

ビタミンEは肌の毛細血管の血流をよくするので、肌の新陳代謝を促します。抗酸化ビタミンのひとつで、シミやシワなどの原因とされる活性酸素を消去する役割も。なお、ビタミンCにも同じ働きがあり、ビタミンCとEはお互いに協力し合って、抗酸化力を発揮しています。

ビタミンEを摂取するならかぼちゃがおすすめ!

「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」といわれていますが、これはかぼちゃが無病息災や健康維持を願う行事食として古くから定着しており、ビタミンEをはじめとした栄養素が多く含まれていることを意味します。とくに皮やワタの部分にはβカロテンが豊富に含まれているので、ワタはスープや味噌汁に入れて飲むとよいです。


かぼちゃの画像


なお、緑黄色野菜の多くにはビタミンC、E、必要に応じて体内でビタミンAに変換されるβカロテンが含まれますので、緑黄色野菜をしっかり摂れば、個々の栄養素で考えなくても、必要な栄養素をバランスよく摂取できます。



栄養豊かな血液をつくるために必要で、たんぱく質やビタミンCとともにコラーゲンの材料のひとつになっています。鉄は非ヘム鉄とヘム鉄の2種類がありますが、いずれも体内に吸収されにくい性質があります。比較的吸収率がよいヘム鉄は、肉や魚(特に血合い)に多く含まれている成分で、非ヘム鉄は野菜や卵、貝類に含まれます。非ヘム鉄は、ビタミンCやレモン果汁などに含まれるクエン酸が吸収を助けます。

鉄を摂取するなら牛肉がおすすめ!

ヘム鉄が多く含まれる牛肉には必須アミノ酸やビタミンB2も含まれている点も肌に良い影響を与えます。


牛肉の画像



亜鉛

皮膚はたんぱく質でできていますが、そのたんぱく質の合成に必要な栄養素のひとつが亜鉛です。亜鉛は、皮膚や骨の新陳代謝を促し、身体にある酵素の材料にもなるほか、コラーゲンの生成を助けるなど、健康な肌を保つには欠かせない栄養素です。一方で、亜鉛はストレスを溜めると消費されやすくなりますので、注意しましょう。

亜鉛を摂取するなら牡蠣がおすすめ!

牡蠣(かき)は海のミルクと呼ばれるほど、栄養価が高く、たんぱく質も豊富。ビタミンA、ビタミンB2、鉄、カルシウムも摂ることができます。亜鉛はビタミンCと一緒に摂ると吸収がよくなります。


牡蠣の画像



たんぱく質

たんぱく質は、エネルギー源にもなりますし、皮膚をはじめ身体のあらゆる部位の材料になる栄養素です。免疫細胞の主成分でもあり、不足すると身体機能に悪影響を及ぼします。

たんぱく質を摂取するなら卵がおすすめ!

卵はビタミンCと食物繊維以外の栄養素を含み、"完全栄養食品"と呼ばれるほど栄養素が豊富です。細胞膜の主成分でもあるレシチンを含み、その乳化作用もポイントです。コレステロールが多いと血液がドロドロになるといわれていますが、レシチンはコレステロールを乳化して、コレステロールの分解や排泄を助ける働きがあります。

▼横スクロールでご覧ください

乾燥、肌荒れ対策、肌の改善に役立つ栄養素と食材

栄養素 乾燥肌、肌荒れを改善する主な働き 食材
ビタミンA 皮膚や粘膜を丈夫にし、粘膜の乾燥、角質化を防ぐ レバー、卵黄、牛乳、うなぎ、ホタルイカ、銀だら、バター
ビタミンC 健康な血管をつくるほか、コラーゲンの生成を助ける レバー、ブロッコリー、ほうれん草、赤ピーマン、いちご、みかん、柿、キウイフルーツ
ビタミンE 肌の新陳代謝を促し、肌の老化の原因となる酸化を抑制する ナッツ、植物油、青魚、するめいか、かぼちゃ、アボカド、ほうれん草、ブロッコリー
コラーゲンの生成をサポート。健康な血液をつくる 【ヘム鉄含有量が多い】さんま、かつお、まぐろ、さば、いわし 【非ヘム鉄のみ】小松菜、ほうれん草、がんもどき、納豆、レンズ豆
亜鉛 皮膚や骨の新陳代謝を助け、コラーゲンの生成に働きかける 牡蠣、鶏肉、豚肉、卵、まぐろ、さけ、さわら、えび、納豆、豆腐、チーズ、レバー、ナッツ
たんぱく質 皮膚をはじめ身体のあらゆる部位をつくる 肉、魚、卵、大豆製品、牛乳、乳製品




森由香子先生からのワンポイントアドバイス!

身体の健康がなければ、肌の健康はありません。肌は身体の一部なので、健康な状態を保つとことが、そのまま肌の健康にもつながります。言うまでもありませんが、過度なダイエットや寝酒はいけません。まずは正しい食生活を心がけましょう。"正しい食生活"とは、朝昼晩3食、規則正しい時間に栄養バランスの良い食事を食べ、身体に必要な栄養素を過不足なく摂ることです。朝食の欠食や不規則な食事は、交感神経と副交感神経のバランスを乱し、肌にも悪影響を及ぼします。基本的なことですが、正しい食生活が健康な肌をつくることを理解しましょう。


また、冬は乾燥していますし、知らない間に水分が不感蒸泄(ふかんじょうせつ)*しますから、こまめに水を飲むことも肌を乾燥から守ってくれます。カフェインの入ったコーヒーやお茶、アルコール類は脱水作用があり、水分補給になりませんのでご注意を。カフェインの入っていない飲料を男性なら1.5リットルほど、女性なら1リットルくらい1日に飲むとよいでしょう。


* 不感蒸泄:発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失のこと。


参考文献:古河いけがき皮膚科「【食事で改善】乾燥肌に効果のある食べ物5選を皮膚科専門医が解説」


※記事の情報は2025年1月7日時点の情報です。

  • プロフィール画像 管理栄養士:森由香子

    【PROFILE】

    管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士
    東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。医療機関をはじめ幅広い分野で活動中。クリニックで、入院・外来患者の栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導、 フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などの経験をもつ。食事からのアンチエイジングを提唱し、「かきくけこ、やまにさち」Ⓡ食事法の普及につとめている。著書に『最新版 老けない人は何を食べているのか』『60歳から食事を変えなさい』『免疫力は食事が9割 』(青春出版社)など。
    公式サイト https://moriyukako.com/
    森由香子のパーソナル栄養指導 https://mori-yukaco.com

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