【連載】ドボたんが行く!
2019.03.26
三上美絵
ドボクってかわいい!面白い!
遊びは創造の源泉。どんなことから「遊び」が見出せるか、そこに本当のクリエイティビティがあります。このドボク探検倶楽部、略してドボタンは、橋、トンネル、ダムなど、様々な土木構造物を愛でるコーナー。第1回はまずはその入り口、ドボクのどこが愛おしいのか、について熱く語ります。(カバーフォトは新潟県の中山隧道)
初めまして。ドボク探検倶楽部、通称「ドボたん」メンバーのミカミです。ドボたんは、ダムや橋、トンネルといった土木構造物や凹凸地形と都市成り立ちの関係、レジェンド的な建築物など、土木・建築の世界の楽しさを見つけ、面白がる人たちの集まりです。
顕在化しているドボたんメンバーはまだ私だけですが(笑)、潜在的なメンバーはきっと大勢いるはず。ほら、このサイトにふらふらと吸い寄せらせたアナタも! さあ、一緒にドボク探検の旅に出かけましょう!
私を土木ラブ♡にした「海底トンネルのつくり方」
私がドボクの魅力に目覚めたのは大昔、ゼネコンの広報部で社内報を担当していた頃のことです。新人だった私は先輩に連れられて、羽田空港の近くにある「川崎航路トンネル」の現場へ取材に行くことになりました。
「海底トンネルの現場だよ」と聞いていたので、船で行くのか?!と思いましたが、なぜかどこまでも陸路を車で進みます。到着した現場は海上ではなく、学校のグラウンドのようにだだっぴろい場所。そこにコンクリート製のバカでかい箱型の筒のようなものが置かれていました。なんじゃこりゃ。
断面が幅40m、高さ10m、長さ130mあるという四角い筒の正体は、「函体(かんたい)」と呼ばれるモノでした。これをいくつもつなげてトンネルをつくるというのです。ふ~ん、でも、どうやって? 驚いたのは、その「つくり方」でした。
私が立っていた場所は、じつは海でした。海の一部を矢板(要するに鉄板)で囲い、中の海水をポンプで抜いて、一時的に陸にしていたのです。その場所で函体を製作し、両端に蓋をした後、矢板を取り去って再び海に戻す。すると、函体は中が空洞なので、プカプカと浮いてくる。それを船で引っ張ってトンネルの場所まで運び、蓋を取って予め掘っておいた溝に沈める――。ざっくり書くと、そんな方法だったのです。
誰がそんなコト考えついたの? すごい! 土木、面白い!!と、すっかりハマってしまったのでした。
重厚長大な土木の「かわいい」を探せ!
土木の魅力にやられてから約10年。私は会社を辞め、フリーライターとして活動を始めました。それからさらにウン十年。縁あって、建設業振興基金の広報誌に連載ページをもたせていただくことになりました。内容はお任せということで、テーマに選んだのが、「ドボクのかわいい」を見つけ出し、紹介するというものです。
土木構造物といえば、スケールの大きさが魅力。それは間違いありません。私が最初に心をつかまれた海底トンネルも、巨大な函体をまるでレゴでも組み立てるような"工作っぽい"方法でつくるところに意外性や面白さを感じたのです。
でも、重厚長大であることだけがドボクの魅力なのでしょうか?
村人が総出で掘った、人ひとりがやっと通れるほどの小さなトンネル。近代的な上水道が町の誇りだった頃の凝った意匠の配水塔。「水争い」を解決するために編み出された、公平に水を分けることのできる円筒分水――。小さくて、暮らしに密着したインフラは、地元の人々に愛され、いつまでも大切に手入れをされています。
そんな、ヒューマンサイズのかわいらしい土木構造物を見つけたい。大きな構造物であっても、そのどこかにかわいい面を見出したい。そう思って、全国の「かわドボ」物件を探し歩いているのです。
といっても、私の場合がたまたま「かわいい」だっただけ。ドボクを愛でる切り口は、他にもいろいろあります。ダムや橋を風景の一部として写真に収めるのも素敵だし、形式の違いや、構造の仕組みを知れば、細部を見るのも楽しくなるでしょう。その構造物がつくられた経緯や歴史を調べるのも、好奇心をくすぐられます。
次回からは、そんなドボクのさまざまな楽しみ方や、それを実践しているマニアなみなさんのこともお伝えしていきたいと思います。どうぞ、お楽しみに。
※記事の情報は2019年3月26日時点のものです。
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【PROFILE】
三上美絵(みかみ・みえ)
土木ライター
大成建設で社内報を担当した後、フリーライターとして独立。現在は、雑誌や企業などの広報誌、ウェブサイトに執筆。古くて小さくてかわいらしい土木構造物が好き。
著書に「かわいい土木 見つけ旅」(技術評論社)、「土木技術者になるには」(ぺりかん社)、共著に「土木の広報」(日経BP)。土木学会土木広報戦略会議委員。
建設業しんこう-Web 連載「かわいい土木」はこちら https://www.shinko-web.jp
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