【連載】流転のパラダイス人生
2019.10.29
パラダイス山元
佐賀でサンタ合宿開催!!
あるときはマンボミュージシャン、あるときはカーデザイナー、そしてあるときは餃子レストランのオーナーシェフ、またあるときはマン盆栽家元、さらにグリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロース、入浴剤ソムリエ、飛行機のプロ搭乗客?......。あらゆるジャンルを跨ぎながら、人生を遊び尽くす「現代の粋人」パラダイス山元さんに「遊びの発想の素」を教えてもらいましょう!
サンタクロースになってよかったこと
私が北極に近いグリーンランドに住む長老サンタクロースの命を受けて、公認サンタクロースとして活動を始めてから22年。たくさんの子どもたちと触れ合い、クリスマスの本当の意味とは何かを一緒に考え、様々な問題も共有してきました。楽しいことも、悲しいことも、ツライことも、サンタクロースとして活動していなければ触れなくてよかったことも含め、様々な経験をさせてもらってきました。
「サンタさんになってよかったことはなんですか?」
よく訊かれる質問です。
今までは「たくさんのよい子に会えて幸せだったよ」と、ノーマルな模範解答をしてきたのですが、せっかくのノートなので、ここは本音で語っていきたいと思います。
本当によかったことは、
「それまで気がついていなかった自分のポテンシャルを引き出してもらったこと」です。元々、サンタクロースになりたいなりたい!と思ってなったわけではなく、ひょんなことから他人から推薦されて、あれよあれよという間に公認サンタクロースの試験を受ける羽目になりました。サンタクロースになりたいと思ったことは、正直な話、それまで一度もありませんでした。
イベントなどで、半ばデブだから適任ということで担ぎ出され、ヒゲつけて帽子かぶって赤い衣裳着せられてステージに立つたびに、小っ恥ずかしいなぁ~こんな格好させられて・・・と心の中で思っていました。それが、一度や二度ではなく、四度、五度と続くと、「えっ、またサンタかよ!」と、ちょっと憤慨してみたり。
「夢を与えられる職業って素敵ですよね!」
これが一番、言われるたびに返す言葉が見つからないといいますか、普段は「HoHoHo~」しか発していないので、とくにその都度返答する必要もないのですが、本当に自分自身が他人に対して夢を与えている存在なのか?サンタクロースは職業なのか?と、自問自答を延々と繰り返してきました。存在だけで、夢を与えることが出来ているのであれば、もう言うことなしです。でも、見てくれの存在感、立ち振る舞い以上に、サンタクロースを演じているのではなく、サンタクロースそのものになっていなければ、それはインチキといえます。
ニセ札造り!?
話は脱線しますが、東京パノラママンボボーイズの活動を一時休止して、パラダイス山元と東京ラテンムードデラックスという、平成時代にアーティストの中で一番長い名前で活動していた時期がありました。「パラダイス山元と東京ラテンムードデラックスフィーチァーリング園田ルリ子」に至っては、「鶴岡雅義と東京ロマンチカ」、「敏いとうとハッピーアンドブルー」などムードコーラスグループを大差で引き離してダントツの長さ。そんなことはどうでもよくて、その際バンドのアレンジャーとして仕事を引き受けて頂いていたアレンジャーの〝アルセニオ清水〟氏 (清水信之氏)と、夜な夜なスタジオに籠ってクリスマスアルバム『Mambo de Christmas』のレコーディング、ダビングを繰り返していたとき、ふと呟きました。
「やってることがニセ札造りみたいだね」
「まんまホンモノに聴こえてきた・・・」
「銀座赤坂のネオンたなびく昭和の時代のグランドキャバレー」
「豪華なシャンデリアが天井からぶら下がっているゴージャスな楽団の再現!」
「まるでペレス・プラード、ティト・プエンテ自身が演奏しているようなバリバリのホンモノ感」
「なのに偽物」
「そう、ここはズバリ、ニセ札工場」
「今度来日する我が師匠、ティンバレスの王様ティト・プエンテに、このテイクを聴かせてみましょうかね」
そして、本当に彼に我々のライブの演奏テープを聴かせたら、
「これは私の演奏だよね?なぜ、これを私に聴かせるのかね?」
と言わしめました。
プロにも見破られなかった精巧なニセ札!
本当は、ホンモノになりたいけれど、いつまで経ってもホンモノになれないジレンマ。徹底的に研究し尽くして、ホンモノに限りなく近づこうとする、日本人的サル真似根性。しかしニセ札造りを極めれば極めるほど、ますますホンモノから離れていってしまいます。そんなことでイイのか、自分?
他人のやってることにいちいち口を挟んだり、イチャモンつけたりするのは嫌いだったのですが、サンタクロースという立場上〝それをやっちゃ~おしまいよ〟という存在の登場が気になりはじめました。
「私は、サンタクロースの故郷、フィンランドからやって来たホンモノのサンタクロースです」
「ホンモノのサンタクロースとの撮影は、一枚 1,500円です」
「サンタクロースからのお手紙は、一通 1,750円 税込です」
極め付けなのは、
「私は、フィンランド政府公認サンタクロースです」
もう、噴飯物というか、開いた口が塞がりません。
フィンランド領事館も、そんな認定なんかしていないと、その存在を真っ向否定する真っ赤なニセモノ。
サンタクロースが、こんなんでイイのか!と、あまりにツッコミどころ満載でしたが、自分とは一切関係がないからと放置していたのが、あとで予想もつかない災いをもたらすことになってしまったのです。
サンタからの手紙が届かない
一緒に写真を撮ったくらいで、直接お金を請求するサンタクロースなんて、考えただけでもおぞましいというか〝恥を知れ〟と言いたくなります。
子どもによかれと思って親御さんが、通販や郵便局で申し込んだ、〝ホンモノのサンタクロースからの手紙〟というシロモノが、システムトラブルでクリスマス前までに配達されないという事件が起こったのです。その数、数千通。
「いつになったら手紙届くのでしょうか、ホンモノの公認サンタさんからの手紙は?」
「金払っているのに、手紙が届かないぞ、このインチキサンタ!」
「子どもの夢を一体どうしてくれるんだ。オマエも仲間だろ、金返せ、サンタ詐欺師め!」
これには困り果てました。私に、まったく無関係なことで、それでなくてもクリスマス直前に、そんな言いがかりや苦情が殺到し、悲しみを通り越し、怒りさえ覚えました。
実は「サンタクロースからの手紙」というのは、クリスマス文化に疎い島国、日本にしか存在しない〝商品〟です。
本来、「いい子にしていたよ、だからサンタさん、私にプレゼントを下さいね」という〝子どもからサンタさんへ送る手紙〟というのが、世界標準のクリスマス習慣なのですが、日本ではまったくその逆の〝サンタクロースから子どもたちへの手紙〟但し有料という、無知な日本人を小馬鹿にしたトンデモなビジネスが堂々とまかり通ってしまっています。
しかも、これが濡れ手に粟の商売だと、気がつくと、さまざまな会社や団体が、〝唯一の公認サンタクロースからの手紙〟とか〝ホンモノのサンタオフィシャル郵便局〟〝元祖サンタからの手紙〟などと、もう温泉まんじゅうさながらに真贋を競いあいはじめました。グリーンランド国際サンタクロース協会の中で、これらに関わっている公認サンタクロースは、世界中でただの一人も存在しないのですがね。
今年初めて、フィンランドのサンタさんが合宿に参加!
なかなかクリスマスの本質や意義が正しく伝わっていかない日本で、もうしばらくは〝正しいクリスマスの過ごし方〟の啓蒙活動をしていかないといけないと感じています。
そして、日本に、北欧をはじめ世界各国の公認サンタクロースを招いて、子どもたちとの触れ合いも大事なことだと気がつきはじめました。
「サンタクロースは本当にいるの?」
という毎度おなじみの質問に、
「もちろん、いるよ」
正々堂々と答えてあげたいからです。
昨年に引き続き、世界各国から佐賀県に公認サンタクロースが集まります。
「SAGA SANTA SUMMIT 2019」では、
有田町の西山徳右ヱ門窯で〝煙突からの侵入訓練〟と黒牟田焼公民館で〝クリスマスツリー点灯式〟
嬉野市の佐賀元祖忍者村肥前夢街道で〝忍びの術訓練〟
江北町のイイダ靴下で〝プレゼントの靴下詰め訓練〟
佐賀市のインターナショナルバルーンフェスタで〝高所作業訓練〟
小城市の芦刈町海遊パークで〝ガタスキー訓練〟
唐津市の唐津くんちで〝エンヤヨイサホッホッホーの発声訓練〟
武雄市のこども図書館で〝英語絵本読み聞かせ訓練〟
と、クリスマス本番に向け、サンタクロースの任務遂行のための数々の訓練と、豪雨で被災した地区の学校、福祉施設への訪問を行います。
意外だと思われるでしょうが、佐賀県はクリスマス前の『サンタクロースの合宿地』にふさわしい地です。サンタクロースのスキルが身につくローカル色豊かなアトラクション、海外からの旅行者が大喜びなアクティビティが盛りだくさんです。
というわけでサンタさんたちもがんばっているので、よい子もおかあさんもおとうさんも、今から入念にクリスマスの準備をして、楽しいクリスマス本番を迎えて下さいね。クリスマスイブとクリスマスの25日だけがクリスマスと思っているのも日本人だけです。ハロウィンが終ったら、お部屋を綺麗に片付けて、おかあさんと一緒に手作りのクッキーを焼いて、サンタさんにお手紙書いて、アドベントカレンダーを作って、ツリーの飾りつけをしてと、クリスマスまでワクワクしながら毎日を過ごしたいものですね。
※記事の情報は2019年10月29日時点のものです。
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【PROFILE】
パラダイス山元 (ぱらだいす・やまもと)
マンボミュージシャンの傍ら、東京・荻窪で、招待制高級紳士餃子レストラン「蔓餃苑」を営む。1962年北海道札幌市生まれ。他に「マン盆栽」の家元、グリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロース、入浴剤ソムリエとして「蔓潤湯」開発監修者、ミリオンマイラー「プロ搭乗客」と、活動は混迷を極める。趣味は献血。愛車はメルセデスベンツ ウニモグ U1450。著書に「餃子の創り方」「GYOZA」「うまい餃子」「パラダイス山元の飛行機の乗り方」「なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?」「マン盆栽の超情景」などがある。
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