【連載】プロが教える! スマホ写真撮影のコツ
2023.05.16
写真家:三井公一
ペットのスマホ撮影術―ネコやイヌをよりかわいく撮る
シャッターボタンを押すだけで、キレイな写真を誰でも気軽に撮影できるスマートフォン(スマホ)。街を歩けば至る所で写真を撮っている人を見かけます。ただ、「なんだかうまく撮れない」「さまざまな機能があるのに、使いこなせていない」という方も多いのではないでしょうか。本連載ではスマートフォン撮影のパイオニアであり、写真家の三井公一(みつい・こういち)さんに、"スマホ"を使った写真撮影のコツを3回にわたって教えていただきます。第1回はペットの撮影術です。イヌやネコ、身近なペットをよりかわいく撮る方法をご紹介します!
アクティオノートのインタビュー記事などで、写真撮影を担当している写真家の三井公一と申します。縁あって今回からスマホでの撮影術をお伝えする連載を書くことになりました。普段の仕事では普通のカメラを使っていますよ(笑)。
私はスマホ黎明(れいめい)期から写真を撮り始め、写真集を出したり写真展やセミナーを開催したりとさまざまな活動をしています。最近はスマホで撮った写真を毎日1枚投稿しているインスタグラムが好評です。ぜひご覧ください。
さて連載1回目となる今回は、ネコやイヌに代表される「ペット」の撮り方について簡単なコツをお話ししたいと思います。何といってもペットは、「旅行」や「食べ物」と並んでスマホで多く撮影される被写体だからです。
<使用するスマートフォン>
今回使用するスマホは2機種。スマホ史上最高ともいわれるカメラ性能を誇るGoogle(グーグル)の「Google Pixel 7 Pro(グーグル ピクセル 7 プロ)」(Android)と、今や誰もが使っている親しみやすさナンバーワン、Apple(アップル)の「iPhone 14 Pro(アイフォーン 14 プロ)」(iOS)です。この2台は3つのカメラを搭載し、AIを駆使したコンピュテーショナルフォトグラフィーといわれる最先端の画像処理で美しい写真を撮影できる端末です。
1. 広角、超広角、望遠カメラを切り替えてペットの表情を撮る
搭載されている3つのカメラを効果的に使って、ネコやイヌを撮影してみましょう。写せる範囲によって、写真の雰囲気やペットの姿が大きく違って見えるはずですよ。せっかく3つもカメラがあるので、どんどん切り替えてシャッターをたくさん切るといい表情を捉えられることでしょう。
・広角カメラ
広角カメラは「カメラ」を起動すると立ち上がる標準的な撮影範囲を持つものです。しかしながら意外と周囲のものまで写ってしまうので、ここはシンプルに余計なものが入らないように撮ってみましょう。できるだけ被写体に近づいて、フレーム内にペットだけ! というイメージでフレーミング(構図)を心がけたいものです。そうするとペットが引き立ち、愛くるしい姿や表情が明確に写せるはず。
画面内を寝転んだネコと床だけにしてシャッターを切りました。しなやかなその姿とまん丸目玉が印象的なカットになりましたね。
ビーチで飼い主に抱かれるイヌをフレームいっぱいに迫って撮りました。被写体に寄ることにより背景がボケて、真剣な眼差しのイヌの様子が強調されました。
・超広角カメラ
超広角カメラはとても広い範囲をスマホに写し込めます。周囲の環境をペットと同時に撮りたい場合や、パース(遠近感)をダイナミックに誇張して画面に迫力を持たせたい場合に活用しましょう。広大な範囲が撮影できるので、写したくないものが入らないよう注意が必要です。
雨の日。こんな時はネコも憂うつになるのかベッドで丸くなっています。そんな日常のヒトコマを超広角カメラで捉えました。雨粒がついた窓と寝ているネコにググッと迫り、不必要なものをフレームに入れずにスマホのシャッターを切りました。ネコの毛並みも窓からの光でしっかりとリアルに描写できました。
ビーチを疾走するイヌとそれを追いかける飼い主をローアングルで激写しました。傾いた画面が迫力を演出しています。超広角カメラなので足元から空まで広く写し込むことができました。スマホの高さを低くすることによって臨場感を出すことが可能です。
・望遠カメラ
望遠カメラはその名のとおり遠くのペットを大きく引き寄せて撮影できます。寝ているネコも、起こすことなくそっと捉えることが可能です。また散歩中のイヌも遠くから撮ることによって、普段と違う雰囲気を出すことができるでしょう。積極的に離れてスマホをペットに向けてみましょう。
スヤスヤと昼寝中のネコ。望遠カメラを使ってやや離れた位置からシャッターを切りました。これならネコを起こすこともありません。カメラを意識しない距離から撮ることで、ペットの自然な様子を写しとることができますよ。
散歩中のイヌを望遠カメラで狙いました。離れて撮っているので撮影者を意識させることなく、自然な様子のカットになりました。望遠カメラを使う場合、画面が傾いてしまうことが多いので水平になるように気をつけてシャッターを切りましょう。この場合は階段の横のラインを目印にしています。
2. ポートレートモードでペットを浮かび上がらせる
背景をぼかして、被写体を浮かび上がらせることができる「ポートレート」モード。ポートレート(肖像画)というと人物専用かと思ってしまいますが、ペット撮影でも有効です。ボケる背景がカラフルだとより写真全体のイメージが華やぐでしょう。撮影後にボケ具合を変更できるので、まずはポートレートモードで撮影しておき、後から調整するのも便利な機能です。
Google Pixel 7 Pro:
「フォト」でポートレートモードで撮影した写真を選び、「編集」→「ツール」→「ポートレートのぼかし」→「ぼかし」でスライダーを調整してボケ量(効果)を好みに調整してみましょう。
iPhone 14 Pro:
「写真」でポートレートモードで撮影した写真を選び、「f」アイコンをタップして、画面下部の被写界深度スライダーを操作してボケ具合を調整しましょう。「f」というのはレンズを通して入る光の量(f値)を示すもので、数字を小さくするとボケ量が増えます。逆に数字を大きくするとピントが合った被写体の前後にもピントが合ってきて、ボケ量が小さくなります。
ネコは寝るのが商売、とはよく言ったものです。ぐっすりと夢の世界にいる様子をポートレートモードで撮りました。顔はしっかりと写っていますが、体がキレイにボケています。
真剣な表情のイヌをポートレートモードで。クリクリとした目にピントを合わせ、背景を美しくぼかしました。このような色がある背景だとペットがグッと引き立つ写真になることでしょう。
3. 動きの速いペットはムービーや連写から決めカットを切り出す
遊んでいる時など動きの速いペットをスマホで撮るのは至難の業です。そんな時はムービーで撮影して、これぞという瞬間のヒトコマを切り出したり、連続撮影モードを使って、いいシーンを抜き出すといいでしょう。データをパソコンに移動して、大きな画面で作業するとよりやりやすくなります。
Google Pixel 7 Pro:
ムービーを再生し、ベストな瞬間で静止させてスクリーンショットを撮って保存しましょう。
iPhone 14 Pro:
連写中の画面。シャッターボタンを左にスライドすると高速連写が可能になります。
撮影した写真を「写真」で開き、画面下部の「選択」をタップして気に入ったカットを抜き出しましょう。
写真加工アプリで出来栄えアップ! 〈ワンポイントアドバイス①〉
撮影した写真を「もう少し明るくしたい」「実際はもっと色鮮やかだったのに」などと思うことがあるでしょう。そんな時はGoogleが無料で提供している写真加工アプリ「Snapseed(スナップシード)」がおすすめです。Android版とiOS版があります。
今回はこのネコのカットをSnapseedで加工してみましょう。
加工したい写真をSnapseedで開き、「ツール」から「画像調整」を選択してください。写真が表示されたら、指先で画面を上下にスライドしてみましょう。すると編集項目のメニューが出てきます。「明るさ」を選んで今度は指先を右にスライドしてください。すると写真が明るくなるはずです。逆に左に動かすと暗くなります。
次に「彩度」を選択して指先を右に動かすと色が濃くなるはずです。このように好みの写真になるように調整していきます。ほかにも豊富な機能があるのでいろいろ試して探ってみるといいでしょう。
便利グッズを使ってペットとセルフィーを〈ワンポイントアドバイス②〉
ペットと一緒にセルフィー(自分撮り)を撮るのは難しいものです。ペットを抱きかかえて片手で薄いスマホを持ち、画面上のボタンを押すのはなかなか大変です。特に縦位置の場合、指が届きにくいですよね。
そんな時に役立つ撮影グッズが「ShiftCam(シフトカム)」から登場しました。その名は「SnapGrip(スナップグリップ)」。「iPhone 14 Pro」にマグネットの力(MagSafe:マグセーフ)で貼り付ける、シャッターボタン付きのグリップです。自撮り棒もいいのですが、カメラを操作している感覚で機敏に撮影できる点ではこちらに軍配が上がるのでは。
これを使えば横位置でも縦位置でも、しっかりと握って確実にシャッターを切ることができます。付属しているリングを貼り付ければ、「Google Pixel 7 Pro」でも装着可能です。Bluetoothを使っているので、AndroidでもiOSでも写真を撮ることができるのです。普段の写真撮影でも大変役に立つグッズなのでおすすめですよ。
三井公一 フォトギャラリー
最近スマホで撮ったネコとイヌのカットです。飼い主と仲良くするイヌや、自由に歩き回るネコは被写体としてとても魅力的ですね。皆さんもぜひ撮影にチャレンジしてみてください!
【撮影協力】
NPO法人いぬねこプロジェクト「保護猫シェルターQUEUE」
【使用機材】
・Google Pixel 7 Pro(Google)
・iPhone 14 Pro(Apple)
・SnapGrip(ShiftCam)
※記事の情報は2023年5月16日時点のものです。
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【PROFILE】
三井公一(みつい・こういち)
有限会社サスラウ 代表。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影しており、2010年10月、スペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれた。スマートフォン撮影のパイオニアとして活動中。 著書にiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapher―写真を撮り、歩き続けるための80の言葉」(雷鳥社)、「iPhone フォトグラフィックメソッド」(翔泳社)などがある。
公式サイト:http://www.sasurau.com/
Twitter:https://twitter.com/sasurau
Instagram:https://www.instagram.com/sasurau/
YouTube:https://www.youtube.com/sasurau/
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