【連載】プロが教える! スマホ写真撮影のコツ
2023.07.18
写真家:三井公一
夜のスマホ撮影術―夜景モードで夜の街並みや花火、星空、月をより美しく撮る
シャッターボタンを押すだけで、キレイな写真を気軽に撮影できるスマートフォン(スマホ)。街を歩けば至る所で写真を撮っている人を見かけます。ただ、「なんだかうまく撮れない」「さまざまな機能があるのに、使いこなせていない」という方も多いのではないでしょうか。本連載ではスマートフォン撮影のパイオニア、写真家の三井公一(みつい・こういち)さんに、"スマホ"を使った写真撮影のコツを3回にわたって教えていただきます。第3回は夜の撮影術です。スマホに搭載された撮影機能「夜景(ナイト)モード」を使って、夜の街並み、花火やたき火、星空、月などをより美しく撮る方法をご紹介します!
1. 夜景モードでナイトシーンを色鮮やかに撮る
この連載で使用しているGoogle(グーグル)の「Google Pixel 7 Pro(グーグル ピクセル 7 プロ)」には「夜景モード」、Apple(アップル)の「iPhone 14 Pro(アイフォーン 14 プロ)」には「ナイトモード」という機能が搭載されています。この機能を使うことで、暗い環境でも鮮やかで美しい写真を撮ることができます。
どちらの機種も暗い場所で撮影すると「カ...シャッ!」とシャッターが長く開きますが、極端に動かない限り手ブレした写真になりません。
これは1回のシャッター音の間に、自動的に複数枚の画像を取得し、AIがそれを解析して明るさと暗さのバランス、ホワイトバランス、発色、ノイズ感、手ブレを検知して自動的に補正、見栄えのいい1枚を生成してくれるからなのです。「コンピュテーショナルフォトグラフィー」といわれるものですが、わずかな時間で、シャープで色鮮やかな写真を誰でも手軽に撮影できるのがスゴいですよね。
Google Pixel 7 Pro:
暗いシーンでの撮影に定評があり、「Night Sight(ナイトサイト)」と呼ばれる夜景モードは数あるスマホの中でも性能バツグン。三脚を使用せず手持ちで美しいナイトシーンを撮影できます。
2023年4月に新装された東京・池袋にある「サンシャイン60展望台 てんぼうパーク」内で撮影してみました。夜景モードをオンにすれば、ご覧のように暗い部分が明るく写り、ディテールが判別できるのです。雰囲気があっていい感じですよね。
窓越しに見おろす池袋の街もこのように美しく撮影できます。スマホで撮影したとは思えない画質になっています。あなたは夜景モードにしてシャッターを切るだけでいいのです。
カメラ設定画面の「光量の調節」を「月とA」のアイコンにセットしておけば、暗い時に自動的に夜景モードになります。シャッターボタンに「月」のマークが表示されればOKです。
iPhone 14 Pro:
暗い環境で撮影しようとすると、自動的に「ナイトモード」になります。撮影する場所の暗さによって自動で設定されたシャッタースピード(露光時間)が画面左上に表示され、画面下部のスライダーで調整可能です。基本的には「自動」のままシャッターを切ればきれいな夜景が撮影できるでしょう。
2. ガラス越しの夜景撮影で写り込みを防げる「忍者レフスマート」
室内からガラス越しに暗い外を撮る場合は、写り込みに注意しましょう。服装は暗い色のものを推奨します。明るい色の服は写り込みが顕著なので気をつけたいものです。
また、スマホのカメラ部分をガラスに密着させることによって、自分が写り込むことを低減できます。しかしそれができないケースや、室内がとても明るい場合があります。
そんな時に役立つのが、よしみカメラの「忍者レフスマート」です。これはスマホのカメラ外周部に装着するアクセサリーで、黒い面を撮影方向にしてガラスに近づけることによって、写り込みをカットして撮影することができる優れものです。小さく折り畳んで持ち歩けるので、展望台や飛行機内、水族館などでクリアな写真を撮ることができるでしょう。
3. 「長時間露光」で光跡を撮る
最新のスマホならば、特別なアプリがなくてもスローシャッター撮影が可能です。ここではちょっとしたテクニックを使って、面白い夜景の撮影にチャレンジしてみましょう。
Google Pixel 7 Pro:
画面を右にスワイプして「モーション」を選択し、「長時間露光」をタップしてスローシャッター撮影を試してみましょう。
東京・渋谷のスクランブル交差点で、長時間露光を使って撮ったカットです。このモードにしてスマホを動かさずにシャッターを切れば、このようにデジタル一眼カメラでスローシャッター撮影をしたかのような光跡のカットを手にできるのです。
iPhone 14 Pro:
「Live Photos(ライブフォト)」をオンにして撮ってみましょう。撮影時にカメラ画面の右上にある「◎」マークをタップすると、Live Photosが有効になります。
下の写真は夜の首都高速道路を撮影したカットです。右の写真では、走行中の車が線状に流れて写っています。これはLive Photosをオンにして撮影した後に、アプリ「写真」から該当するカットを選択し、左上の「LIVE」→「長時間露光」を選ぶだけでOKです。通常の写真よりは画角が切り取られてしまいますが、動感のある夜景を撮影することができます。
4. 花火やたき火の撮影は、ポジションや背景の明るさに注意
花火撮影のコツは、数多くシャッターを切ることです。なぜなら花火から出る火は常に明るさや量が変化するからです。たくさん撮影してその中からいいカットを選ぶのが賢明です。
花火を持つ人の表情や背景の明るさに注意しながらたくさん撮影しましょう。気をつけたいのは風下に立たないこと。流れてくる煙で被写体が見えにくくなってしまうからです。横風になるようにポジションを取りましょう。
「ペットのスマホ撮影術」でご紹介したように、ムービーで撮影していいシーンをヒトコマ抜き出すのもおすすめです。「長時間露光」や「Live Photos」からでもいいでしょう。
また、Google Pixel 7 Proはホワイトバランス(色温度)の調整が簡単です。撮影時に画面をタップすると左に表示されるスライダーで、写真の色味を劇的に変更できるのです。これによってたき火の温かみを出したり、空の青さを強調することもできます。
5. 星空はスマホを三脚に固定し、「天体撮影モード」で撮る
Google Pixel 7 ProとiPhone 14 Proなら、星空も撮影できるのをご存じですか? 夜景(ナイト)モードでもそこそこは写せるのですが、ガッチリとした三脚に端末を固定すると、「天体撮影モード」が発動するのです。
Google Pixel 7 Pro:
三脚に据え付けて「夜景モード」を選択します。端末がブレを感知しなくなると、シャッターボタンが「月」から「星」の表示に変わり「天体撮影モード」に入ります。最長4分間の露光が可能になり、とても美しい星景写真を撮ることができるのです。ピント位置も「遠距離」に設定できるので、シャープな星のカットを楽しめます。
iPhone 14 Pro:
Google Pixel 7 Proと同様に、しっかりとした三脚に固定してしばらく経つと、ナイトモードで最大30秒間の露光が可能になります。肉眼でも星がよく見える場所なら、スマホで撮影したとは思えないカットを手にすることができるでしょう。
6. 月は、30倍の超解像ズーム&露出補正で美しく仕上がる
Google Pixel 7 Proは30倍の超解像ズームがあるので、月の撮影もお手軽です。ググッと月を大きくたぐり寄せられるのです。露出補正でハイライト(明部)とシャドウ(暗部)のスライダーを一番下まで下げると、雰囲気のある月の写真になりますよ。
写真加工アプリで出来栄えアップ! 〈ワンポイントアドバイス〉
無料の写真加工アプリ「Snapseed(スナップシード)」は、Android版とiOS版があり、どちらでもさまざまな写真編集が可能です。今回は「グラマーグロー」や「トーンカーブ」を使って、写真の見栄えを向上させる方法をご紹介します。
① 幻想的な雰囲気を演出する「グラマーグロー」
サンシャイン60展望台 てんぼうパークからの素晴らしい眺めを、「グラマーグロー」でよりサイバーパンク風に仕上げてみましょう。グラマーグローとは、"魅惑的な光"という意味で、光が柔らかく発せられているような効果により、幻想的な雰囲気を演出することができます。
写真を「Snapseed」で開き、まずは「ツール」から「画像調整」を選択。画面下部にある「マジックワンド(魔法の杖)」のアイコンをタップして「自動調整」を行います。右下のチェックマークをタップして一度保存し、その後「ツール」から今度は「グラマーグロー」を選択します。
指先で画面を上下にスライドすると、編集項目のメニューが出てくるので、「グロー」(光)を選びます。そして指先を右に動かして「+75」に設定し、再び「画像調整」でコントラスト(明暗の比率)や色味を調整して好みになるように仕上げました。SFチックな写真の完成です。
② 色調を補正し、一部のディテールを出す「カーブ」
次は、キャンプ場で花火を楽しむ女性の写真を加工していきます。
上部にスマホ特有のゴーストが発生しているので、まずはこれを「ツール」→「シミ除去」で消しましょう。操作方法は「人物のスマホ撮影術」で紹介した手順と同じです。
その後「ツール」→「カーブ」で「K01」を選択し、空部分のディテールを出します。カーブとは「トーンカーブ」のことで、写真の明るさやコントラストなどを自由に調節する機能です。
仕上げに「ツール」→「画像調整」で「コントラスト」を弱めた後、「彩度」を上げて印象的なカットにしてみました。
三井公一 フォトギャラリー
Google Pixel 7 ProやiPhone 14 Proなど最新のスマホなら、AIを駆使したコンピュテーショナルフォトグラフィーパワーで、夜の光景も美しく写せることがお分かりいただけたかと思います。昔だったら撮影を諦めていたシチュエーションでも写真が撮れるので、ぜひトライしてください。基本は、夜景(ナイト)モードにするだけで大丈夫ですよ。
【モデル】
寺田華佳(てらだ・はなか)
所属:株式会社チーズfilm(現在は株式会社放映新社に移籍)
【撮影協力】
・サンシャイン60展望台 てんぼうパーク
・Grounding Space たてやま倶楽部
【使用機材】
・Google Pixel 7 Pro(Google)
・iPhone 14 Pro(Apple)
・忍者レフスマート(よしみカメラ)
※記事の情報は2023年7月18日時点のものです。
※追記:2024年8月19日に再編集しました。
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【PROFILE】
三井公一(みつい・こういち)
有限会社サスラウ 代表。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影しており、2010年10月、スペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれた。スマートフォン撮影のパイオニアとして活動中。 著書にiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapher―写真を撮り、歩き続けるための80の言葉」(雷鳥社)、「iPhone フォトグラフィックメソッド」(翔泳社)などがある。
公式サイト:http://www.sasurau.com/
Twitter:https://twitter.com/sasurau
Instagram:https://www.instagram.com/sasurau/
YouTube:https://www.youtube.com/sasurau/
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