アート
2021.06.29
今道しげみ(リビングフォト主宰 フォトグラファー)
今道しげみが教える「リビングフォト」 ~梅雨編~
お家でクリエイティブなことをはじめてみませんか。「リビングフォト」提唱者でフォトグラファーの今道しげみさんが指南する、室内でのお花の撮り方レクチャー。季節のお花やモチーフの選び方から、一眼レフ、スマートフォンで上手く撮るコツまで解説いただきます。美しい写真を撮ってSNSでシェアしたり、カードにしたり、お部屋に飾ったり。ぜひ「リビングフォト」を楽しんでください。
水に映し込んだ世界をのぞいてみませんか?
雨の日にカメラを持って撮影に出かけるのはおっくうですが、家の中で「雨」や「雨の気分」を楽しむ方法をご紹介しますね。
「水たまり」や「池」に映った空や木々をみてハッとした経験はありませんか? 排水が良くなった都会では、「水たまり」はかなり強い雨のときにしかできませんが、舗装された道路も水に濡れると鏡のように反射して色々なものを映し込みます。傘を差してまで撮影に出かけたくない人にまずはお勧めしたいのが、洗面器に水を張って、花や緑を映す方法です。普通ならば、直接花にピントを合わせますが、水面にピントを合わせると、違った世界が見えてきます。
花色や緑色を美しくぼかす
バケツの周りに花や緑を飾り窓際に置いて、曇り空の反射が映し込む角度を探してみましょう。自分が一番見せたい部分にだけしっかりピントを合わせて、それ以外の物をぼかします。ボケのやわらかい表現は「印象派」の絵画のように、見る人の想像力をかきたてます。平凡で見慣れた世界が幻想的な表情を現すのを捉えるのはカメラの醍醐味です。一眼レフやミラーレス一眼で撮った写真ならではの表現です。
私が主宰している「リビングフォト」という写真教室では、このボケ感の表現をしっかりコントロールするために、絞りが大きく開く「F値が小さいレンズ」を選ぶことをお勧めしています。
カメラのレンズにはバリエーションが多く、特に初心者にはレンズ選びが難しいので、どのカメラメーカーであってもセンサーサイズがAPS-Cまたはフルサイズのカメラなら「50mmF1.8」というレンズを付けるように勧めています。オリンパスとルミックスのマイクロフォーサーズというセンサーサイズには「25mmF1.8」です。
絞りを開放(F1.8)に設定して撮ると、ピントを合わせた部分と数センチほどレンズからの距離が違うだけでボケ始めます。F値の小さなものほど価格が高いのですが、50mmF1.8のレンズに限ってはリーズナブルなレンズを作っているカメラメーカーも多いので、是非試してみてください。
水の青を表現する
カメラに「ホワイトバランス」という設定があるのをご存知でしょうか? ホワイトバランスは白い物を白く撮るためのフィルターのようなものです。太陽・曇り・日陰などのマークが並んでいます。雨の日は強めの青いフィルターをかけて表現すると、みずみずしく、爽やかな印象になります。カメラの知識のない人は、天候が似ている「曇り」を選びそうなところですが、「電球」を選んでみてください。かなり青くなるはずです。
電球のオレンジ色っぽさを打ち消すために、青いフィルターをかけて白を白に写すのが本来のホワイトバランスの役目です。窓際の太陽の光は無色透明に近いですから、「電球マーク」を選んで撮ると、真っ青になるはずです。また、ホワイトバランスの項目に「K(ケルビン)」という色温度が選べるタイプの中級以上のカメラを持っている人は、4000ケルビンにすると、写真のようにわざとらしくないナチュラルな青みになります。写真の編集ソフトに「色温度」という項目を見たことがある人は、それを使って調整することも可能です。
青い方が爽やかさを増しますよね。青い紫陽花と、緑の葉っぱは特にブルーのフィルターが良く似合います。
青いフィルターをセザンヌに学ぶ
カメラの「ホワイトバランス」は本来ならば無色透明の光を被写体に照らしたときに現れる色を表現するためのものとして備えられていますが、どう使って、どう表現するかは自由です。ヨーロッパでは、写真がない時代はいかに写実的に描くことができるかが画家の技量の重要な要素でしたが、19世紀にカメラが発明されてから絵画そのものの価値観が大きく変わりました。
写実的な表現はカメラに任せて、感じた風景を自由に表現し始めたのが「印象派」の画家たちでした。ピカソの青の時代なども有名ですが、特に印象的なのがセザンヌの静物画やヴィクトワールの山を描いた絵です。ブルーのフィルターがかかったような、独特の冷たい色を放っています。何種類もの絵具を重ねて描く絵画と、フィルターのちょっとした操作で表現できるホワイトバランスを一緒にするのは少々はばかられますが、自分らしい色表現のひとつとしてホワイトバランスを応用してみるのも面白いと思います。
窓越しの水滴で雨を演出する
ニューヨークの写真家ソール・ライターは、ガラスに写り込んだ街の様子を重ねたり、雨の日や雪の日の窓の結露越しに撮った写真が印象的です。検索すると色々見つけられると思うので、参考にしてみてください。
この写真は、実際は曇りの日でしたが、フォトレッスンのときに霧吹きで窓を濡らして撮ってみました。実際に撮ってみると、意外に難しかったのがピント合わせです。オートフォーカスで撮影するとどうしても手前の水滴にピントが合いがち。水滴がしっかりした大粒だと、奥にある紫陽花にピントが合ってくれません。もちろん、水滴にピントを合わせて紫陽花をぼかすという表現もありますが、ピントを自分の意思でコントロールするなら「マニュアルフォーカス」です。
「マニュアルフォーカス」と「オートフォーカス」の切り替えは、レンズの側面についているスイッチで切り替えられるメーカーも多いですが、レンズのピントリングというところを回すことでピントを合わせます。最近のミラーレス一眼では、マニュアルフォーカスでどの部分にピントが合っているかを色付けして示す「ピーキング」という機能があるのも便利です。
スローモーションで水滴を撮る
最近のミラーレス一眼は動画機能も飛躍的に進歩しています。また、動画を共有して楽しむSNSも活況を呈しています。YouTubeだけでなく、Instagramのストーリーズやリールなどに加えて、最近ではFacebookの動画の画像解像度もフルHDにバージョンアップされてきれいになりました。
高画質の静止画が撮れるミラーレス一眼には、動画機能も必ず付いています。今回はスローモーションで水滴を捉えてみました。私はNikonのZ7というカメラを使っていますが、Menuの中に「画像解像度・フレームレート」という動画のための設定項目があります。その中の「30P 4倍スロー」で撮影したのが、芍薬(しゃくやく)のつぼみを洗う動画です。Instagramのリールに投稿しましたので、ご覧ください。
スローモーションは3秒撮影したものが4倍の12秒になります。日常の何気ないシーンも、スローモーションにすると突然ドラマティックになります。人は、非日常な光景を目の当たりにすると心が動かされます。そういった意味ではスローモーションは動画初心者にもおすすめの撮り方です。私のカメラには「スローモーション」が付いていないという人は、iPhoneの「カメラ」の画面下に、「スロー」というのが「ビデオ」に並んでありますのでお試しください。
水の反射や、水色のフィルター、水滴を利用して、梅雨の日もリビングでカメラを楽しんでくださいね。
※記事の情報は2021年6月29日時点のものです。
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【PROFILE】
今道しげみ(いまみち・しげみ)
リビングフォト主宰 フォトグラファー
神戸女学院大学を卒業後、全日本空輸の客室乗務員として勤務。
1990年よりLondonでフラワーデザイナーとして活動を始める。
2005年より、東京・久我山でサロンスタイルの写真教室『LIVING PHOTO』を主宰し商標登録も取得。
全国からの受講生は5000人を超え、オンライン講座も開催中。
ニコンカレッジ講師。APA日本広告写真家協会正会員。
⇒LIVING PHOPTO Home Page
http://livingphoto.jp/
⇒Instagram
https://www.instagram.com/livingphoto88/
⇒You Tube 今道しげみ
https://www.youtube.com/channel/UCMwRQO6MsZXxEaKJbwmXxoQ?view_as=subscriber
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