おうちで撮る「リビングフォト」はじめてみませんか

アート

今道しげみ(リビングフォト主宰 フォトグラファー)

おうちで撮る「リビングフォト」はじめてみませんか

なかなか自由に外出できなくなってしまった昨今ですが、せっかく家にいる時間が増えたのですから、自宅でクリエイティブなこと、はじめてみませんか。今回アクティオノートがおすすめしたいのは花の写真。美しい初夏の光を生かした、お部屋で撮る小さな花束の写真です。アクティオノートのインタビューでもご登場いただいた「リビングフォト」の提唱者、今道しげみさんに、室内でのお花の撮り方についてレクチャーしていただきました。

クリエイティブに楽しむ「リビングフォト」

家で過ごす長い時間。季節の花を部屋に飾り、写真に撮って楽しんでみてはいかがでしょうか? 家の中で花や料理などを美しく撮って楽しみ感謝を伝える写真に「リビングフォト」という名前をつけました。スマートフォンと一眼レフを使ったリビングフォトの撮り方をお伝えします。

リビングフォト主宰 フォトグラファー 今道しげみさん

花を部屋に飾って楽しむだけでなく、撮って楽しみ、SNSに投稿してコミュニケーションをも楽しむ。家の中で充実した時間を過ごすために、クリエイティブな刺激のある気分転換の方法をひとつでも多く身に着けたいものです。



洗練された花選びのコツ

より身近に花を感じることができる花の写真はまさに心のリフレッシュメント。撮影に必要な花は、決して豪華なブーケである必要はありません。小さな花束で十分です。庭で育てている花を摘んで、グラスに入れただけでも、ちょっとした工夫で絵になります

花は好きな場所に飾って楽しみましょう。

花は好きな場所に飾って楽しみましょう。できればリモートワークをしているデスクに座った時、視線に入る場所を選ぶと癒されます。こぼれた時の水が心配なので、お皿やトレーを利用しましょう。安心な上に、スタイリングとしてもフォトジェニックになります。この花は撮影のためパソコンに近づけていますが、もう少し離して飾ってくださいね。

自分で花を選ぶ場合は、小さなブーケに何種類もの「色」を混ぜないのがコツです。ピンクならピンクの花だけ。違う種類を組み合わせたくなったら、グラデーションを意識して、ピンクの濃淡でまとめます。

少々上級テクニックですが、上の写真のアプリコット色のパンジーの花びらの縁にはほんのりとしたピンク色が含まれていて、房のように咲く濃いピンクの花へと繋がっています。白なら白い花だけを選ぶようにします。大きさや咲き方の違う他の白い花を組み合わせるとバランスが良くなり洗練されたプチブーケができます。もっとボリュームを出したい場合は、緑色の花や葉をたっぷりと加えていきます。ピンクや黄色や紫を混ぜて、色を欲張ると、一見賑やかですが、チープで落ち着かないイメージになってしまいます。

「アルストロメリア」。

シンプルでも花の数がほしい場合は、一本の茎に数輪の花が咲く「スプレー」タイプの花がおすすめです。その中でも、この「アルストロメリア」は、八重咲きで変わった花弁の形のものです。色が落ち着いていて、とても長持ちなのでおすすめです。この状態で買ってから2週間以上も経っています。一日のはじまりに、花瓶の水を取り替えてリフレッシュさせると、気持ちまで清らかに感じられます。

「スプレーマム」。

その他にも「菊」の中でも「スプレーマム」は可愛い形の小花もあり、非常に花持ちが良く、ニュアンスのある色や緑色など色にこだわって上手に選んでみましょう。スプレーマムもアルストロメリアも、色にこだわる、色を混ぜない、この二つを必ず守ってくださいね。


カバーフォトのブーケを束ねている様子を、こちらのYou Tubeでご覧いただけます。




花がきれいに撮れる光を探す

さてブーケができたところで写真を撮りましょう。お花を飾る場所と、撮る場所は別と考えた方が良いでしょう。まずは一眼レフカメラでのリビングフォトの撮り方をご紹介します。

一眼レフカメラでのリビングフォトの撮り方

カメラは光の反射を捉える道具ですので、カメラの設定が適切だったとしても、「光」そのものが整っていないと美しい写真は撮れません。光を感じ、コントロールすることは写真の上達には欠かせません。

リビングフォトは「自然光」で撮ります。太陽の光です。日没したら撮影タイムは終了。夜に花を撮るのは潔くあきらめてくださいね。

リビングルームの日当たりが良くないから明るい写真が撮れる気がしない、という相談をよく受けますが、日当たりの良さは必ずしも必要ではありません。むしろ直射日光が射しこまない方が良いので、曇るのを待つこともあります。やわらかい太陽の光がベストです。たとえ曇りの日であっても、できるだけ白いレースのカーテンを引きます。専門用語では「デュフューザー」と呼び、光を拡散して影をやわらかくする効果があるからです。

レースのカーテンを引いた窓辺に花を置いて、窓に向かって撮ります。

レースのカーテンを引いた窓辺に花を置いて、窓に向かって撮ります。当然、花の手前に黒い影が出ますので、「レフ板」と呼ばれる、白い紙を立てて、光を反射させます。影が薄くなって、魔法がかかったように透明感のある花の写真を撮ることができます。



背景を美しくぼかす。覚えてほしい「露出補正」

スマートフォンよりセンサーサイズが大きい一眼レフカメラに、絞りが大きく開くレンズを組み合わせると、背景を美しくぼかすことができます。リビングフォトのレッスンでは、レンズが交換できる一眼レフカメラやミラーレス一眼を使用します。そして、「標準レンズ」と呼ばれる50mmF1.8というレンズを必ず付けて参加してもらっています。カメラを買った時にセットで付いている「標準ズームレンズ」ではなく、ズームができない代わりに、絞りを大きく開くことができる単焦点の50mmF1.8のレンズです。

私のリビングフォトの作品も、ほとんどはフルサイズのミラーレス一眼に50mmF1.8レンズを付けて撮影しています。フルサイズよりも一回りセンサーサイズが小さいAPS-Cのカメラに50mmのレンズを付けて撮ると、少しズームアップした画角になります。フォトレッスンでは私よりも半歩下がった位置からでないと「先生と同じように撮れない」ということが起こってきます。そこで、最近のおすすめはAPS-Cのセンサーサイズのカメラと35mmF1.8のレンズの組み合わせです。さらにセンサーサイズの小さいマイクロフォーサーズのカメラ(オリンパスやルミックス)には25mmF1.8のレンズをおすすめしています。

私の今のおすすめはNikon Z50と、レンズは少々高額になりますが35mmF1.8の組み合わせです。

カメラは日々進化し、毎年のように新製品が発表されますが、まずはできるだけ小型軽量で操作しやすいものをおすすめしています。私の今のおすすめはNikon Z50と、レンズは少々高額になりますが35mmF1.8の組み合わせです。YouTubeなどの動画撮影にも最適です。

ダイアルを「A」(絞り優先モード)にして、ダイアルを回して、F2.0に設定して撮影すると、前後が美しくボケます。

ダイアルを「A」(絞り優先モード)にして、ダイアルを回して、F2.0に設定して撮影すると、前後が美しくボケます。

また逆光で撮影すると、どうしてもお花が暗くなりがちですので、「露出補正」をして好みの明るさに調整します。Z50の場合、ON/OFFスイッチの横にある+/-のボタンを押しながら、ダイアルを回します。リビングフォトのイベントレッスンでは、私に会ったことは忘れても、「露出補正」は一生覚えていてほしいと伝えています。スマートフォンでも「露出補正」が大事な鍵になります。



スマートフォンならではのスタイリング

スマートフォンでも明るさを調整する「露出補正」があります。機種によっても多少異なりますが、iPhoneの場合は、ピントを合わせたい主役に2秒ほどタッチします。黄色い太陽のマークが出てきますので、画面上のスライドを指でなぞって上下すると、明るさを調整できます。その他のスマートフォンにもEV補正という名前で必ずあります。

スマートフォンの苦手は「ボケ」の表現です。最近では「ポートレート」などの設定で、背景をぼかす機能が付いているものもありますが、レンズのボケとは違って画像処理によるぼかしです。F値の小さい数字を選ぶと背景をぼかすことができます。

スマートフォンで撮る場合は、あえて「ぼかし」が必要のないFLATLAYS(フラットレイズ)というアングルがおすすめです。

スマートフォンで撮る場合は、あえて「ぼかし」が必要のないFLATLAYS(フラットレイズ)というアングルがおすすめです。いわゆる「真俯瞰」です。白いボードや、雰囲気のあるテーブルに花やスイーツを並べてフラットレイズで撮影してみました。麻のテーブルリネンや、つる性の植物を組み合わせて絵を描くようにスタイリングをします。「ビビッド(冷たい)」というフィルターを選んでニュアンスを出してみました。

撮影をしていたら、ピンク色の小さなカーネーションが鈴なりに咲いた鉢が宅配で届き、息子からの母の日のプレゼントに胸が熱くなりました。ポストカードにプリントをして、サンキューカードにしてみようと思います。幸せな気持ちを形にするリビングフォト、ぜひともお試しくださいませ。


※記事の情報は2020年5月19日時点のものです。

  • プロフィール画像 今道しげみ(リビングフォト主宰 フォトグラファー)

    【PROFILE】

    今道しげみ(いまみち・しげみ)
    リビングフォト主宰 フォトグラファー
    神戸女学院大学を卒業後、全日本空輸の客室乗務員として勤務。
    1990年よりLondonでフラワーデザイナーとして活動を始める。
    2005年より、東京・久我山でサロンスタイルの写真教室『LIVING PHOTO』を主宰し商標登録も取得。
    全国からの受講生は5000人を超え、オンライン講座も開催中。
    ニコンカレッジ講師。APA日本広告写真家協会正会員。

    ⇒LIVING PHOPTO Home Page
     http://livingphoto.jp/

    ⇒Instagram
     https://www.instagram.com/livingphoto88/

    ⇒You Tube 今道しげみ
     https://www.youtube.com/channel/UCMwRQO6MsZXxEaKJbwmXxoQ?view_as=subscriber

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