ノートを変えてみよう!気軽にできる「ビジュアルシンキング」

【連載】イノベーション創出のためのグラフィックレコーディング

三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

ノートを変えてみよう!気軽にできる「ビジュアルシンキング」

ビジョンデザイナー三澤直加さん(株式会社グラグリッド)、ビジュアルファシリテーター和田あずみさん(同)による、グラフィックレコーディングの新連載がスタート。ビジュアルファシリテーションやチームビルディングなど、ビジネスの現場で創造力を育てる方法や、イノベーション創出のためのヒントをご紹介いただきます。

ビジュアルシンキングとは? グラフィックレコーディングとは?

ビジュアルシンキングとは、絵や図、グラフなどを用いて考えていく方法のこと

ビジュアルシンキングとは、絵や図、グラフなどを用いて考えていく方法のこと。

例えば、物語を聞きながら、脳裏に浮かんだ情景を絵にすることも。世界的なウイルスの猛威を把握するために、その状況を図にすることも。議論している人たちの論点を関係図で整理することも。すべて、情報を目に見えるものに変換し、思考を前進させていくビジュアルシンキングと言えます。

しかし、文章を素早く入力したり、画像を簡単に検索できるようになった現代では、自分の手で絵や図を描くことは、稀かもしれません。だからこそ、ビジュアルシンキングは、手書きで絵や図を描きながら思考を活性化させるメソッドとして、世界的に注目されていいます。

そして、そのビジュアルシンキングで、「記録」にフォーカスを当てたメソッドが、「グラフィックレコーディング」です。



絵で考えること、文字で考えることの違い

絵で考えること、文字で考えることの違いでは、絵や図で考えることは、文字で考えることと何が違うのでしょうか。

まず、情報の配置について、大きな違いがあります。文字は、線の上に時系列で書いていくのに対し、絵や図は、面の上にどこからでも好きな順番で好きな位置に情報を配置していきます。

ビジュアルシンキングは、その「面的な情報把握」ができることで、全体像を一目でとらえることを可能にします。絵がパッと見て、わかりやすい、と思うのもそのためです。

実際、絵や図を描きながら考えてみると、新しいイメージがどんどん湧いてきて、思考が活性化されていくのがわかります。



グラフィックレコーディングの第一歩、ノートを変えよう!

そんな効果的なメソッド、ぜひトライしてみたいと思う人も多いのではないでしょうか。そこで、「グラフィックレコーディングをやってみたい、効果を体感してみたい」という方に、私たちがおすすめしているのが「自分のノートを変えること」です。

ポイントは3つ!
1:白紙のノートを広げて使おう!
2:文字だけではなく、キーワードや簡単な絵や図をダイナミックに描こう!
3:「正しく書き写す」ではなく「自分なりに情報を捉えて、発見をどんどん描きこんでいこう!」


実際に、小学生も、ノートを変えることにチャレンジしています!
このノートは、小学6年生が社会科の授業で書いたノートです。

「聖徳太子」についての授業の中で、その場で、リアルタイムに生徒達がまとめたものです。まったく同じ授業を受けながら、生徒たちは、自分なりに情報を捉え、自由に解釈を広げながら整理・比較・統合しながらグラフィックレコーディングを行っています。

実際に、小学生も、ノートを変えることにチャレンジしています!

このノートでは、まるでLINEの画面のように、チャット形式で、先生や生徒とのやり取りが記録されています。そして「チャット中断」という大きな文字の下には、聖徳太子と蘇我氏との関係図が構造的に表現されています。授業の臨場感が伝わってくるようなノートです。


実際に、小学生も、ノートを変えることにチャレンジしています!

こちらのノートは、豪族である蘇我氏が6つの手を持った怪物のように表現されていたり、法隆寺が擬人化されて登場しています。歴史的な背景を捉えながら、その性質をメタファで表現していることがわかります。



どうやって小学生ができるようになったのか?

では、この6年生たちがグラフィックレコーディングができるようになるまでには、どのような取り組みがあったのでしょうか。

どうやって小学生ができるようになったのか?私たちグラグリッドは、この小学生たちに、次の3つの体験をしてもらいました。
まずは、罫線のない大きな紙に、大きなペンで、思いっきり自由に書いてみる体験です。これにより、ノートの既成概念から解放されました。次に、目の前にあるものを、別のモノにたとえていく体験。ゲーム感覚で楽しんで行うことで、想像力を養っていきました。そして、それぞれが描いたさまざまな絵を見るという体験を繰り返し行いました。

これらの体験をとおして、子どもたちは自分たちで考え表現する楽しさを知り、学びの場で自由にビジュアルシンキングができるようになっていったのです。

この変化には、先生方や保護者の方も、一様に驚いています。
「後で、絵でまとめたんじゃないんですか? 授業中に、同時にここまでできるなんて信じられない!」
「授業で教えていないことまで、理解しているように見える。どうやったらここまで考えられるの?」
「全員がすべて違うノートになっている。本当に一人ひとり解釈しているんですね」



白紙のノートが苦手な方は「テンプレート」を使ってみよう

グラフィックレコーディングをやってみたい! と思っていても、「絵ごころがなくて恥ずかしい」「白紙に何かを書くのが怖い。何から書いたらいいのかわからない」と、考える方もいらっしゃるでしょう。そこでおすすめなのが、「テンプレート」です。

私たちグラグリッドでは、グラフィックレコーディングを行う時に使える、便利なテンプレートをいくつか作っています。何もない真っ白な状態から始めるより、テンプレートを使うと情報を構造化しやすく、また描く人のアイデアも触発されて、楽しみながら考えて描くことができるようになるのです。

ビジョンテンプレートビジョンテンプレート

このビジョンテンプレートは、自分の目標とそこに至るアプローチを、書きながら考えるためのテンプレートです。左上の四角にはテーマを、右上の丸い部分には、目標を。左下にいる人物は、自分に似せて描いてみましょう。

ビジョンテンプレート

塗り絵感覚で、楽しくグラフィックレコーディングを始められるはずです。慣れてきたら、ぜひ周囲のメンバーにも共有してみることをおすすめします。見せ合うことで、「そんな考え方もあったんだ!」「この人ってこういう風に捉えたのか」という発見があるでしょう。




グラフィックレコーディングを楽しもう!

連載「イノベーション創出のためのグラフィックレコーディング」の第一回となる今回は、グラフィックレコーディングとは何か? なぜ絵を描くことが思考の活性化に役に立つのか? を解説してまいりました。そして、簡単に始める方法として、ノートを変えること、テンプレートを活用してみる方法をご紹介しました。

ビジュアルシンキングは、文字で考える時とは異なる脳みそを使います。最初はちょっとだけ難しく感じるかもしれません。しかし、スポーツと同じで少しずつ慣れていくことで、自在に扱えるようになっていくはずです。

最初からうまく描こうと気負わずに、独自性を楽しむ気持ちでやってみてください。


※記事の情報は2020年4月30日時点のものです。

  • プロフィール画像 三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

    【PROFILE】

    三澤直加(ビジョンデザイナー)
    和田あずみ(ビジュアルファシリテーター)
    関美穂子(ビジュアルファシリテーター)

    株式会社グラグリッドは、デザイン思考やさまざまな手法を効果的に活用しながら、ともに戦略をつくり出す「共創型サービスデザインファーム」。「企業と、行政と、学校と、明るい未来をつくり出すためにプロジェクトに伴走する」活動を行っている。

    事業戦略やブランド力の強化を支援する「ビジョンづくり」から、イノベーション創出を支援する「商品づくり」、クリエイティブな組織文化醸成を支援する「組織づくり」まで、幅広くサポート。主な事業内容は、商品企画支援、事業戦略支援、コンサルティング業務、デザイン支援、会議活性化支援、 プログラム開発、イベント活性化支援、人事育成支援、 グラフィックレコーディング、ファシリテーション、 地域交流支援、サービスデザインなど。

    株式会社グラグリッド
    https://glagrid.jp/

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