観光客が激減した地域で始まる。可視化でつくる地域の未来像

【連載】イノベーション創出のためのグラフィックレコーディング

三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

観光客が激減した地域で始まる。可視化でつくる地域の未来像

コロナ禍の影響で、大打撃を受けた地域の観光業。今まさに、これからの時代に向けた、次世代観光開発の構想が始まっています。今回は、地域の観光戦略プロジェクトでグラフィックレコーディングを活用した事例について、ご紹介します。

変動する地域の観光戦略

いまだ収束の兆しが見えないコロナ禍の中、地方における観光業にも大きな変化が訪れています。昨年はインバウンド戦略で海外からの顧客を積極的に誘致していた全国の地方観光拠点も、今では、近くからの来訪者と深い関係づくりを進めていく戦略や、マイクロツーリズムへのチャレンジにシフトしています。


そんな状況の中、私たちは、これからの地域の観光戦略を行うプロジェクトに参画する機会をいただきました(※)。

※ 株式会社ランドリームを中心としたプロジェクトや、地方自治体からお声がけいただいたプロジェクトに参画しています。




多様な関係者の意見を可視化するグラフィックレコーディング

地域を代表する企業関係者、行政関係者のみなさんが集まり、戦略を練るワークショップで、誘客したいターゲットは? 地域の強みとは? と、丁寧な議論が行われています。


山形県天童市のプロジェクトの様子


このような未来を構想する会議では、非常に多くの議題について話し合います。濃厚な議論の中では、最初に話していたことを忘れてしまったり、参加者間で異なるイメージを持ってしまったりする危険性があります。


そんな中、議論を絵としてイメージで共有できるグラフィックレコーディングは、背中を押してくれるような存在です。可視化されているという安心感をもって、議論を進めていくことができます。テーブルの真ん中に模造紙を置いたり、参加者から見える位置にホワイトボードを置いたりして、常に全員から見える場所で描くことで会議全体を活性化します。




多拠点での議論はオンラインでグラフィックレコーディング

このような観光戦略の会議は、オンラインでも行われています。下の図は、その時のグラフィックレコーディングです。


グラフィックレコーディングの1コマ



オンライン会議ツール「Zoom」を使って議論しながら、同時にグラフィックレコーディングをしている様子を画面共有して進めていきました。後から画像を共有するというやり方ではなく、その場で描いて投影しているので、同時通訳のように話したことが絵で翻訳されて画面に映し出されているように見えます。


また、オンラインホワイトボード「miro」上で描くと、グラフィックレコーディングに、付箋を貼り付けていくことができるので、絵と文字とで分かりやすく表現できます。



同時通訳のように話したことが絵で翻訳されて画面に映し出されているように見えます



普段パソコンを使っていない方がいる場合には、難しく感じるかもしれませんが、iPadでグラフィックレコーディングを行える人が1人いれば、あとの人は見ながら話をするだけで実現できます。




「分かりにくい」「聞きとりにくい」を軽減できる

実際、いくつかのケースではオンラインで議論を行いましたが、方言が混じっていると声が聞き取りにくい状況、マイクが遠くて聞き取りにくい状況がありました。そこで、グラフィックレコーディングを見ることで「そんなことを発言されていたのか!」「具体的なイメージを見てどんなものなのかイメージできた」など、理解の底上げができました。

特にオンライン会議の場合には、グラフィックレコーディングがあることで、「分かりにくい」「聞き取りにくい」という障害を軽減できる効果があります。




これから始める人のための3つのポイント

ここまで、地域の観光を構想する会議でのグラフィックレコーディング活用についてご紹介してきましたが、これは、「多様な人と未来を考えていくこと」全般に活用できる方法だと考えています。これを読んでいる皆さんも、自分の仕事場で、地域で、実践してみませんか。


●絵が苦手なら、文字でもOKと割り切り、メモを共有しよう!
グラフィックレコーディングだから、全てを絵で書かなくてはいけない、ということはもちろんありません。キーワードや、発言のポイントは、文字でメモをとっていく方が速く分かりやすくメモができます。大切なのは、みんなで共有することです。文字だけでも、断片的でもOKと割り切っていくことで、多様な人の理解を助けます。


●「何について話しているのか」を書こう!
未来のことを話しているときには、主語や主題が変化します。「何について話しているのか」、主題や主語を意識して、書き取るようにしていきましょう。議論についてこれなくなった人、途中から参加した人も、安心して議論に加わることができます。


●「未来のシーン」こそ、絵で描こう!
ポイントを絞って絵を描くなら、具体的なアイデアに注力すると効果的です。「未来のシーン」「新しい生活シーン」「新しい観光シーン」など、今は存在していないけれどこれから起こりうるような、具体的なアイデアに注力して絵にしていきましょう。具体的なイメージが、参加者全員の思考を活性化し、さらに合意形成をサポートします。


先行きが見えないこんな時代にこそ、これからのことを空想し、仲間と共に構想できる会議を行っていきましょう。グラフィックレコーディングを効果的に活用すれば、見えなかった未来が見えてきます。


※記事の情報は2020年12月22日時点のものです。

  • プロフィール画像 三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

    【PROFILE】

    三澤直加(ビジョンデザイナー)
    和田あずみ(ビジュアルファシリテーター)
    関美穂子(ビジュアルファシリテーター)

    株式会社グラグリッドは、デザイン思考やさまざまな手法を効果的に活用しながら、ともに戦略をつくり出す「共創型サービスデザインファーム」。「企業と、行政と、学校と、明るい未来をつくり出すためにプロジェクトに伴走する」活動を行っている。

    事業戦略やブランド力の強化を支援する「ビジョンづくり」から、イノベーション創出を支援する「商品づくり」、クリエイティブな組織文化醸成を支援する「組織づくり」まで、幅広くサポート。主な事業内容は、商品企画支援、事業戦略支援、コンサルティング業務、デザイン支援、会議活性化支援、 プログラム開発、イベント活性化支援、人事育成支援、 グラフィックレコーディング、ファシリテーション、 地域交流支援、サービスデザインなど。

    株式会社グラグリッド
    https://glagrid.jp/

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