アイデアが止まらない! 絵で発想する商品企画

【連載】イノベーション創出のためのグラフィックレコーディング

三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

アイデアが止まらない! 絵で発想する商品企画

ビジョンデザイナー三澤直加さん(株式会社グラグリッド)、ビジュアルファシリテーター和田あずみさん、関美穂子さん(同)による連載です。ビジュアルファシリテーションやチームビルディングなど、ビジネスの現場で創造力を育てる方法や、イノベーション創出のためのヒントをご紹介いただきます。

こんにちは!
私たちは、「描きながら、ともに考える場をつくる」をモットーに、革新的な活動をする企業や組織を戦略面から支援する仕事をしています。特に多いのは、新規事業開発と組織づくり。3カ月~1年単位のプロジェクトの中で、ワークショップやデザインリサーチに携わり、変革を支援しています。


今回は、私たちが支援した事例として、パナソニック株式会社の取り組みをベースに、「描きながら考えるアイデア発想」についてご紹介します。商品企画の場で、どのようにビジュアルシンキングが活用できるのかをご案内していこうと思います。




未来の姿を考え、発信していく

「Panasonic Laboratory Tokyo(パナソニックラボラトリー東京、以下、PLT)」は、パナソニック全社のイノベーションを支援するための活動を推進している組織です。


未来の世界が描かれている、パナソニックラボラトリー東京の「未来ウォール」未来の世界が描かれている、パナソニックラボラトリー東京の「未来ウォール」
こんな風に、未来のことを絵で考え、意見を出し合いながら、未来を構想しています。




パナソニックのみなさんも視覚化しながら発想!

パナソニックのみなさんも視覚化しながら発想!

PLTでは、商品・サービス企画の場でも、効果的に絵を使ったアイデア出しを行っています。たくさんの絵が描かれた付箋をご覧ください。すごい量ですよね。


この時、半日でおよそ200個あまりのアイデアが生み出されました。予想していなかったアイデアが生まれ、その場で爆発的に飛躍。機能拡張的な発想ではなく、今存在していないような新しい生活シーンが次々と生まれていきました。




絵で描くなんて、恥ずかしい? そんな時も大丈夫

最初は、絵でいきなり発想するなんて、無理! と思いますよね。
「絵心がないので......」
「パソコンに慣れ過ぎていて、漢字も忘れちゃっているよ」
「いきなり絵で描いて、間違ったらどうするの???」


最初は、パナソニックのみなさんも、そのようにおっしゃっていました。
では、どのようにして、絵を使ったアイデア発想ができるようになったのか?


アイデア発想の現場で、ビジュアルシンキングを組織で取り入れていくためのポイントを3つご紹介します。




アイデア発想で活用するグラフィックレコーディングのポイント

Point1:ペンの持ち方から始めよう!

Point1: ペンの持ち方から始めよう!アイデアを絵で共有するには、シャープペンやボールペンなどで描いていては、他の人に見てもらえません。遠くからでも分かるように、サインペンやマーカーペンで描くことが必要です。しかし、ビジネスマンが普段なかなか手にしない太いペン。知っていても書き出すには勇気がいりますよね。
そこで、このペンの持ち方から始めます。ツールを揃えて、みんなでやってみれば恐くない! 直線、曲線、丸、三角、四角。簡単な図形から慣れていきましょう。



Point2:1枚に1アイデア。描くルールを決めよう!


Point2: 1枚に1アイデア。描くルールを決めよう!たくさんのアイデアを出すには、1件1葉、1枚1アイデアが鉄則です。
しかし、普通の付箋だと、ちょっとだけ窮屈。ここは欲張って、大きめの付箋でやってみましょう。
そして、描き方をあらかじめ決めておくことも、描きやすくするポイントです。
タイトルを上に書こう、とか、文章は箇条書きにしようなど。



Point3:時間を区切って、集中!!

あとはやるだけ。伝わらなければ言葉で説明! それでよいと割り切って進めるのがうまくいくコツ。
5分~10分くらいの短い時間で何枚描けるか集中してトライしましょう! そして、「発想→発表」を数回繰り返していきます。2回、3回と繰り返すことで、他の人のアイデアの良い点を活かしたり、アイデア同士を掛け合わせていくことができます。


Point3: 時間を区切って、集中!!

アイデアが飛躍する、3つの描き方

やってみたい! と思った方に。すぐにできるアイデアの描き方をご紹介します!
これがあれば、「どう描けばいいの~???」と迷わなくてよくなります。


描き方1:あったらいいな「理想の姿」をシンプルに描く
「面白いモノを思いついた! こんな未来が見えてきた!」という場合。この「理想の姿」型を使って描いてみるとよいでしょう。この型にあるのは、タイトル/モノ/3つのポイントだけ。細かい説明を書かなくても、アイデアを指し示すタイトルと、その特徴を端的に3つほど添えておくだけで、充分その面白さは伝わります。


描き方1: あったら良いな「理想の姿」をシンプルに描く

描き方2:顧客にとってどんな価値があるのか「顧客体験」を描く
「アプローチがユニークだ! 新しいお客さんに喜んでもらえそう!」というアイデアが生まれたら、この「顧客メリット」型を使って描いてみるとよいでしょう。この型で描くのは、タイトル/顧客の喜ぶ顔/顧客の声。アイデアは文で説明しつつ、目立たせたい顧客の価値にフォーカスして表現します。顧客の顔を描くことで感情に訴える記録ができるので、アイデアの価値に共感を得やすくなります。

描き方2: 顧客にとってどんな価値があるのか「顧客体験」を描く描き方3:変化を見せたいなら「ビフォー・アフター」で比較して描く
「劇的に変化しそうだ! 既存品から確実な一歩が踏み出せる!」というアイデアが生まれたら、この「ビフォー・アフター」型を使って描いてみるとよいでしょう。この型で描くのは、タイトル/ビフォー&アフターの変化です。左側に過去、右側に未来、中央に矢印。変化にフォーカスして表現します。比較して描くことで、存在価値をより明確に表現できます。


描き方3: 変化を見せたいなら「ビフォー・アフター」で比較して描く



モノ・コト・気持ちが描けるから、捉えられる、伝えられる

ご紹介した3つの考え方は、「モノ」「コト」「気持ち」をそれぞれ表現するための描き方です。アイデアには、さまざまな性質がありますので、このフォーマットを選ぶときに、何を生み出したいのか? 考え選んでいくことで、発想も変えられるかもしれませんよ!

モノ・コト・気持ちが描けるから、捉えられる、伝えられる
プロダクトを生み出したい時には、モノの姿を。
体験を生み出したい時には、顧客の体験と感情を。
長期的体験を生み出したい時には、変化を。
描いてみましょう!


そして、モノを生み出すだけでは、ビジネスが難しくなってきた現代において、コトを創出していけるアイデアはとても価値があります。今求められるアイデアを生み出していくためにも、絵を使って意識を変えていくことも、一つの手かもしれません。


グラフィックレコーディング活用テンプレート アイデアスケッチ編




固まる前に書き出すことで、発想は飛躍する

グラフィックレコーディングを活用したアイデア発想では、「とにかくやってみる」という態度が必要になります。

ポイントとしてご紹介したものはすべて、「自分には難しいかも」「恥ずかしいからやめておこう」といった自分の殻を破り、開放するためのステップでもあります。


アイデアは自分の枠を越えて、既存の考えを超えた先に、革新的な種が生まれていくことが多いはず。まずは、自分の殻を破るため。ペンの持ち方から、自分の癖を破ることから始めてみてはいかがでしょうか。


※記事の情報は2020年8月20日時点のものです。

  • プロフィール画像 三澤直加 / 和田あずみ(株式会社グラグリッド) / 関美穂子(株式会社グラグリッド パートナー)

    【PROFILE】

    三澤直加(ビジョンデザイナー)
    和田あずみ(ビジュアルファシリテーター)
    関美穂子(ビジュアルファシリテーター)

    株式会社グラグリッドは、デザイン思考やさまざまな手法を効果的に活用しながら、ともに戦略をつくり出す「共創型サービスデザインファーム」。「企業と、行政と、学校と、明るい未来をつくり出すためにプロジェクトに伴走する」活動を行っている。

    事業戦略やブランド力の強化を支援する「ビジョンづくり」から、イノベーション創出を支援する「商品づくり」、クリエイティブな組織文化醸成を支援する「組織づくり」まで、幅広くサポート。主な事業内容は、商品企画支援、事業戦略支援、コンサルティング業務、デザイン支援、会議活性化支援、 プログラム開発、イベント活性化支援、人事育成支援、 グラフィックレコーディング、ファシリテーション、 地域交流支援、サービスデザインなど。

    株式会社グラグリッド
    https://glagrid.jp/

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