内田恭子|自分のメンタルに気づいてあげる。マインドフルネスの考え方をより多くの人に知ってもらいたい

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内田恭子さん フリーアナウンサー〈インタビュー〉

内田恭子|自分のメンタルに気づいてあげる。マインドフルネスの考え方をより多くの人に知ってもらいたい

フリーアナウンサー、タレントとして活躍中の内田恭子さん。国際基準であるマインドフルネストレーナーの資格を持ち、企業やアスリート、幼児、一般の方に向けたマインドフルネスプログラムやセッションを行う「kikimindfulness(キキマインドフルネス)」を主宰されています。パフォーマンス向上やストレス軽減効果などで、欧米でもトレンドになっているマインドフルネスについて、実践方法などお話をうかがいました。

写真:三井 公一

「マインドフルネス瞑想」とは、過去や未来ではなく、今ここにあるもの、目の前のことに集中している状態を指します。自分の心の状態や周りの状況に集中し、自分の思考、感情、行動などについて善悪の判断や評価をせず、ありのままを観察する行為や心のあり方を指します。「マインドフルネス」と「マインドフルネス瞑想」は広義に同じ意味を指します。



日本では日々きちんと自分のメンタルと向き合う場がない

――もともと心理学に興味を持たれていたそうですね。


思春期からずっとアメリカにいて、カウンセリングやセラピーというのが身の回りにあるのが当たり前の環境で育ってきました。日本に帰ってきてテレビ局に入社した後、あまりにも仕事が忙しくて、そこで改めて自分のメンタルと向き合うきっかけがありました。 働き方改革という言葉もない時代だったので、忙しい中で自分自身のメンタルをどうケアするかということが必要だったんでしょうね。日本は今ようやくメンタルウェルネスのことが取り上げられるようになりましたが、外国に比べるとまだメンタルに対するハードルが高いような気がします。


メンタルは体と違って目に見えにくいものなので、バランスを崩したことに気づいてから慌ててクリニックに行きますよね。でもそのクリニックと普段の生活の間に、アメリカだったらカウンセリングやセラピーがあったりするんですけど、日本の場合は第三者に相談せずに自分や家族の中で溜め込んでしまうので、日々の生活の中で元気なときもメンタルと向き合う習慣が必要なんだと思うのです。


日本では、臨床心理士や公認心理士がそれに近い職業ですよね。実は20代の頃からその道に興味があったんですが、仕事が忙しく、30代はずっと育児に必死で。コロナ禍になった時に、自分のやりたかったことを思い出して、これはラストチャンスだなと臨床心理士になるための勉強を始めようといろいろ調べました。



――そこからマインドフルネスに興味を持ったのはどういう経緯なんですか。


実際に受験勉強を始めて、近代心理学の中にあるマインドフルネスに出合ったのです。プラクティカルで理論的。まさに私がやりたかったことだ! と一気に興味がそちらに向きました。




マインドフルネスを学ぶのが純粋に楽しかった

――マインドフルネスのどんなところに惹かれたのですか。


メンタルだけじゃなくて、自分の思考とか脳の働きのところも勉強していくんですね。私はもともと内省すること、自分に問いかけるのがすごく好きで、幼い頃もベッドに入って寝る時に「今、私は考えごとをしてるけど、この考えごとをしてるのは誰だろう」って、眠れなくなっちゃったりしてたんですよ(笑)。


「誰が頭の中にいるの?」って。なんで自分はこういう考え方をするんだろうとか、思考の勉強をするのが面白くて。私は長らく海外で暮らして、そして日本に帰ってきて、文化が全く違う中での生活にすごく戸惑いもありました。


英語を話すときは外国で暮らしていた時の自分に戻って、日本語を話すとすごく日本人らしい自分が出てきて。でもどっちが本当の自分なんだろうって、自分のアイデンティティにもがいていたところもあったので、そういうのを紐解いていくのが面白い、純粋に楽しいと感じたからなんですよね。


――マインドフルネスの瞑想とはどういうものですか。瞑想というと、座禅を組んで頭を無にしなきゃいけない、みたいなイメージがあります。


よく勘違いされますが、人間は1日最低でも約6万回の思考をする生き物なので、それを無にしていくのは相当難しいことです。ただ、考えごとをしてしまうというのは、意識が思考にいっているだけなので、その意識を一つのところ、自分の呼吸や感覚に集めていくイメージで瞑想を行います。


分かりやすく言うと、意識のコントロールです。例えば、誰かと話していても、今日これからどうしよう、とか、明日のスケジュールなんだっけ、と意識が別の思考にいってしまうことってありますよね。それに気づいて、もう一度話していることに意識を戻してあげる、みたいなことを行っていきます。さまざまな感情や思考が浮かんでも、それを追わずに意識を一つの場所に戻す、ということです。


そうやって意識をコントロールするトレーニングを続けていくと、自分の意識が散漫になっているときでもすぐに戻すことができるようになるから、その結果、集中力が上がるとか、パフォーマンスが上がるというところに繋がっていきます。他にも、良く眠れるようになったり、ストレス耐性が向上することも実証されています。





キックボクシングもマインドフルネス!?

――内田さんが主宰されている「kikimindfulness」では、欧米で学ばれたマインドフルネスと、茶道や華道などの日本文化と組み合わせて実践されているそうですね。


私は茶道も10年以上やっていて、マインドフルネスを学び始めてから、茶道への理解がぐっと深まったと感じています。例えば、茶事一つとっても、季節を感じて、衣擦れの音を聞いて、器やしつらえを見て触って、お茶の香りを嗅いで......と、五感をフルに使います。


まさに侘び寂びの精神、静寂さを感じていくという場所で、五感すべてに意識を向ければ、より深い体験が得られます。ほとんどの日本の「道」文化にはマインドフルネスが存在していますので、慣れない方にも分かりやすいですし、現代では忘れられがちな日本文化の良さも再認識できます。


――テレビ番組でキックボクシングをされていました。キックボクシングとマインドフルネスにも共通点があるそうですね。


もうびっくりするくらい共通点がたくさんあって(笑)。マインドフルネス瞑想で「呼吸の瞑想」という、自分の呼吸にただ意識を向けていくものがあるんですが、呼吸って人によって速かったり、遅かったり、深かったり、浅かったりしますよね。


でも「呼吸しましょう」って言うと、みんな深くて大きい呼吸をしないといけないって思い込んで、スーッと思い切り息を吸い込みます。でも、本当に自分にとって心地いい呼吸を探っていくと、それぞれに違いますよね。


マインドフルネスは自分のペースが大事なんです。日々の情報の速さ、他人のペースに合わせていることを、自分のペースに戻すことで、自分らしさにゆっくり落ち着くことができる、という考え方をします。


キックボクシングは必ずステップを踏みます。それも自分のリズム、呼吸なんですよ。だから相手がいて、ガッとパンチやキックをした後に自分のリズムに戻る、という行為が、自分自身を今この瞬間に繋ぎ止めて相手に持っていかれないようにする、振り回されないようにする、自分のアンカーになるイメージです。キックボクシングのそういう動きがマインドフルネスとリンクしていて、瞑想は「静」、キックボクシングは「動」、両方でやっていくのが私にはいいと思っています。





理解しているつもりでも、知らない自分はいっぱいいる

――常に人に見られているお仕事で、人との複雑な関わりやプレッシャーなどがあると思います。マインドフルネスをやることで、良かったことはありますか。


タレントさんと違い、もともと会社員だったので、「常にあなたは会社の顔だからね」みたいなことを言われ続けてきました。そういう、見えない目みたいなものにずっと縛られてきたんです。仕事柄たくさんの人に会いますが、人に対してすごく壁をつくってしまっていた時期もありました。


マインドフルネスをやることで、自分って本当はどんな人間なんだろうって見るようになって、自分が心地いいと思える人間でいればいいんじゃない? って思うようになりました。それによって人から何かを言われても、別にそれはその人の考え方だし、その考えによって私がどうなるわけでもないのならば、自分自身でいた方がずっと楽だなと思えるようになりました。


そういうマインドでいると、人に対してつくっていた壁がなくなってきて、こういう自分でいないといけないっていうのもなくなって、結構ありのままの自分でいられるようになりました。楽になっていますね。


――内田さんのSpotifyのポッドキャスト番組「内田恭子の一旦お茶しよ」で、「自分がどんな人間で、何が欲しくて、どんな人生を歩みたいか」、マインドフルネスを通して見つめていると話されていました。「自分はどんな人間だろう」って考えたとき、「自分には何もないんじゃないか」となった場合、逆に落ち込んだりしないでしょうか。


マインドフルネスは、なぜ、どうして、といった直接的に答えを求める思考をするわけじゃなくて、日常の小さな出来事や感覚に意識を向けて観察します。私はこれが好きなんだなとか、これをしている間は気が紛れているとか、逆に苦手なことにも。そういう小さなことに気づいていって、自然とそのピースが集まってくると、私ってこういうことがしたいのかも、こういう人間なのかも、が結果的に見えてきたりします。


理解しているつもりでも、知らない自分っていまだにいっぱいいると思うんですよ。「あなたってどういう人間ですか?」って聞かれたときに、私はこういう人間ですって答えても、全然それだけじゃない。付き合う人によって、いろんな自分がいたり、いろんな考え方をする自分がいたりして、どれも全部自分だと思うんです。そのいろんな自分に、意識的に気づいていくことが、自分がどんなことが好きでどんなことをやりたいか、どんな風に人生を歩みたいか、に繋がっていくんです。





自分のペースでやることが大事

――内田さんは日々どのようにマインドフルネスをされているんですか。キックボクシングと瞑想がメインなのでしょうか。


そうですね。でも座って目を瞑(つぶ)る瞑想じゃなくて、自分の五感の一つに意識を向けるだけで瞑想になるので、例えば、あまりにも強い思考がずっと出てきちゃうときにおすすめなのがキャンドルに火をつけて、炎をずっと見ることです。


目を開けて、炎だけをずっと見続けるのも最初は難しくて、目を瞑ってしまうことがあります。でもそうするとまた強い思考が意識に出てきてしまうので、あえて目を開けて、炎を見ているようにします。それだけでもマインドフルネス瞑想になります。楽器を弾く人は楽器を弾くのもいいと思うし、読書もいいです。読書は読むという一つのことに意識を向けている状態なので、ただじっと座っていることができないという人にはおすすめです。


あとは目を瞑って2〜3分、自分の呼吸に意識を向けること。意識を向けるってどういうこと? ってよく言われるんですけど、例えば呼吸するとお腹が動くじゃないですか。お腹に手を置いて、呼吸とともにお腹が上下するのを感じる。感じることを、2〜3分やるだけでもすごくちゃんとした瞑想になります。2〜3分という短い時間でも続けていくことが大切です。


――一つのことに没頭するというか、入り込むみたいな時間を持つということなんですね。例えばスポーツ観戦や音楽ライブなどはググッと入り込むと思うんですが、それはどうですか。


スポーツ観戦やライブはちょっと情報が多すぎるかな。それに興奮した状態になっていて、すごく楽しい時間ですけど、基本的に相手のペースに合わせるものですよね。自分のペースでできるものがいいです。読書も自分のペース、何かを見るとしても自分のペースでやることが大事です。




瞑想に良いも悪いもない

――日本人は特に「マインドフルネスがいいよ」と言うと、マインドフルネスを頑張りすぎてしまう人がいそうな気がします。


そうですね。頑張りすぎる方たちはいます。私がマインドフルネスを続けていられる大きな理由の一つとして、マインドフルネスって、めちゃくちゃ自分に優しくしてあげていいということがあります。だから、瞑想するのにも、まず自分の体の状態を聞いてあげて、今日は疲れ切っていて体が横になりたいと思ったら横になって瞑想をしてもいいんです。


あとは日本人だけじゃないんですけど、大人になるとみんな正解を求める傾向にあります。リラックスするはず、これで落ち着くはずだと思って瞑想をやって、落ち着かないと何かやり方が間違ってるんじゃないかって、よく言われるんです。けれど、瞑想は今の自分の状態を見ていくものなんですね。それによってリラックスしたり、落ち着きを得ることはあるけど、そうでないこともある。


だから瞑想に良いも悪いもないと私は言っていて、集中できたから今日は良い瞑想ができた、ではないんです。思考ばっかり出てくるのであれば、今自分はそういう状態なんだ、すごい思考優位になってるんだな、と気づいてあげることが瞑想です。


どんな自分でもOKだし大丈夫だよ、と。今ちょっと意地悪なことを考えちゃって、そんな自分が嫌だなと思っても、別にそれは単なる感情だから。感情なんてずっと続くものじゃなくて、流れていくものだから、「今はそういう感情があるんだね」でいいんです。


――否定も肯定もせず、ただ気づくということ。それがポイントなんですね。


人間の状況なんて毎日変わります。昨日うまくできたから、今日もうまくできそうって、期待して求めている自分にも気づく。毎日やるとそういうちょっとしたことが、少しずつ分かってくるんです。自分に目を向けないと気づかないことです。




自身のメンタルに気づいてあげることを、広げていきたい


――企業やスポーツ選手など、マインドフルネスのワークショップを精力的にされていますね。


はい。幼稚園の子どもたちにもやっています。5歳児たちは毎日2~3分の瞑想を私の音源を聴きながらやっているんですが、すごく一生懸命で可愛いです。


子どもたちは座って呼吸に意識を向ける、ということがまだできないので、ストーリー仕立てにしてお話しします。その中で、例えば彼らが嫌な気持ちになったときに、その嫌な気持ちとどういうふうに向き合っていくのか、自分の感情との向き合い方を教えていきます。


大人は子どもに対して、怒っちゃダメとか、泣いたら恥ずかしいよって言ってしまいがちですよね。けれどもそう言われ続けていると、怒ったり泣いたりすることがネガティブなことになってしまいますよね。怒りを感じている自分が嫌だ、みたいな。 けれども喜怒哀楽はどれも人間にはある感情で、それをネガティブなものとして無視したり、気づかないふりをするのではなく、きちんと向き合っていくことのほうが大切なんです。


疲れたときに、ちゃんと休むことも教えます。興奮して、夢中になっちゃって限界を超えないように、自分の「ストップボタン」を体の中に見つけようって。ストップボタンはどこでもいいよって言うと、子どもたちは「じゃあここー」って、口の中を指差したりして(笑)。


ものすごく疲れたときとか、なんかイライラしちゃったなってときにストップボタンを押す。ストップボタンを押したらちょっと横になって、一人で静かになってもいいし、怒ってるときは周りの大人に話してみようって。そうすると、普段の幼稚園の生活の中で誰かがワーッと興奮状態になると、「ストップボタンを押して」ってみんなが言うんですよ。自分がそうなっている時の気持ちが分かるからこそ、人のことも分かってあげられるんです。


――ストップボタンすごくいいですね。大人にも必要そうです。最後に今後の活動予定や目標などをお聞かせください。


9月に淡路島の「禅坊 靖寧(ぜんぼうせいねい)」という、建築家の坂茂(ばん・しげる)さんが設計された施設で、日常をちょっと離れたリトリートのセッションを行います。素晴らしい建築物があって、360度森に囲まれた中、1泊2日で。そんなワークショップやイベントをやっていきます。


マインドフルネスそのものもそうですが、マインドフルネスの考え方をより多くの人に知ってもらいたいと思っています。私は心の専門家ではないので、本当に疲れてしまった方たちはきちんと専門家に見ていただいて。日々の仕事や生活で疲れてしまわないように、健康に働きつつも、自身のメンタルに気づいてあげることの大切さを、広げていけたらと思っています。


※記事の情報は2026年9月8日時点のものです。

  • プロフィール画像 内田恭子さん フリーアナウンサー〈インタビュー〉

    【PROFILE】

    内田恭子(うちだ・きょうこ)
    フリーアナウンサー
    元フジテレビアナウンサー。1999年、慶應義塾大学商学部卒業。2006年フジテレビを退社、以降フリーアナウンサー、タレントとして活躍。明るく親しみやすいキャラクターで幅広い世代に支持されている。私生活では2児の母でもあり、そのライフスタイルは多くの同性の共感をよんでいる。国際基準であるマインドフルネストレーナーの資格を持つ。

    MBSR(マインドフルネスストレス低減法)IMA認定講師
    MBCTL(マインドフルネス認知療法)Oxford Mindfulness認定講師
    子供のためのマインドフルネス講師(Eline Snel method)
    Mindfulness Compassion Yoga teacher IMCJ認定
    U. Mass Memorial Healthy Center MBSR修了
    Stanford Medicine Parenting Center Mindfulness Parenting 修了
    David Treleaven氏 Trauma Sensitive Mindfulness Program 修了
    日本マインドフルネス学会正会員

    Instagram https://www.instagram.com/kyoko.uchida.official/
    kikimindfulness公式HP https://www.kikimindfulness.com/
    内田恭子の一旦お茶しよ https://creators.spotify.com/pod/profile/ochashiyo-kiki/episodes/1-e3jjbd0

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