インスピレーションの始まりは、あなた。

JUL 9, 2019

INTERVIEW 「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」シェフパティシエール 岩柳麻子さん インスピレーションの始まりは、あなた。

JUL 9, 2019

INTERVIEW 「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」シェフパティシエール 岩柳麻子さん インスピレーションの始まりは、あなた。 「創造」をキーワードに、各界のクリエーターへのインタビューを行う「創る」のコーナー。今回ご登場いただいたのは東京、等々力にあるパティスリー「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」のシェフパティシエール岩柳麻子さんです。グレーで統一されたスタイリッシュな店内にお邪魔して、連日夕刻前には売り切れてしまうという看板メニュー「パルフェビジュー」開発の裏話や、創作のこだわりについてうかがってきました。

テキスタイルデザイナーからパティシエへ。

もともとテキスタイルデザイナー(染色や織物などの繊維デザイナー)を目指していた、という岩柳さん。高校卒業後は桑沢デザイン研究所のドレスデザイン科に入学。デザインの勉強をするかたわら、学費や教材費、生活費のために始めた料理研究家のアシスタントや飲食店でのアルバイトなどが、フード業界に足を踏み入れるきっかけになった。祖母や母の影響で子どもの頃から趣味でお菓子づくりをしていたこともあり、少しずつ料理の楽しさ、素晴らしさに目覚めていく。

専門学校を卒業して細々とテキスタイル作家の活動をしていた頃、自分より先にテキスタイル作家として身を立てはじめた友人たちから、展覧会に出すお菓子をつくってほしい、と頼まれることが増えた。
いつの間にかデザインよりお菓子づくりをしている時間のほうが長くなった。デザインよりお菓子づくりを極めたほうが、自分には合っているのかも...と少しずつパティシエへの道を歩むことになった。

テキスタイルデザイナーからパティシエへ。


――製菓学校などには通わず独学でお菓子づくりを習得したのでしょうか?パティスリー「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」をオープンするまでの経緯を教えてください。

岩柳:製菓学校には行ってないですね。当時アシスタントをしていた料理研究家の先生が、料理雑誌の巻頭特集などの仕事もされていたので、食べものを美味しそうに見せる方法や技術といった部分は、実際にプロの仕事現場で見て学んで、吸収していった感じです。お菓子づくりは、プロのパティシエに教えてもらいながら、自分なりに研究して、知識やアイデアをストックしていました。そうこうしているうちに縁あって、新しくオープンするカフェのメニュー開発に関わることになったり、友だちと共同経営でパティスリーをやったりと、いろいろな経験をしつつ数年間がむしゃらにがんばってきました。最終的に一人でやってみたいと思うようになり、2015年に独立して「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」をオープンしました。

――ご主人でもある、建築家の宿澤巧さんがお店を設計されたんですよね。内装もグレーで統一されていて美しいですね。

岩柳:内装、特にグレーにはすごくこだわったので話し出すと一日かかるかも(笑)。グレーは白でもなく黒でもない、上品でいろんなトーンがあり、ケーキやグリーンがとてもよく映えます。色味はグレーで統一しながらも、石、左官、ステンレス、鉄、ガラスなどの様々な素材を使用することでクールながらも冷たい印象を与えず、美術館などでも使用される特殊な照明を取り入れることでドラマチックな空間を作りました。

店内のオープンキッチンで行われる菓子づくりの様子を、すべて見ることができる店内のオープンキッチンで行われる菓子づくりの様子を、すべて見ることができる




看板メニュー「パルフェビジュー」の誕生。

PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」の看板メニューといえば、「宝石パフェ」の意味を持つ「パルフェビジュー」。もともと、ある女性誌から限定メニューでつくってほしいと依頼され開発したものが、季節のメニューとして定番化したものだという。ドリンク付きで3000円以上、決して安くはない価格だが、連日夕刻前に完売してしまう、超人気メニューとなった。

「パルフェビジュー」


――「パルフェビジュー」を始めるきっかけになったという、女性誌からのオーダーというのはどんな内容だったんですか。


岩柳:テーマが「ハイジュエリー」だったんです。カルティエやハリーウィンストンなど美術館に並ぶような、最高級ジュエリーをイメージしたお菓子を、雑誌掲載用に作ってほしいといわれました。ジュエリーの輝きをどう表現するかを考えて、ツヤ感のある季節の果物やゼリーなど、光る素材をメインに据え、さらにそれを美しく見せるために層にしようと思い立ちました。そこから試行錯誤を重ねて、グラスの中の宝石をイメージした「パルフェビジュー」ができました。試験的にお店でも出してみることになり、一日限定10台で出したら朝イチで売り切れてしまって、だんだん数が増えて今は平日が50台、土日は80台ずつ出しています。

――価格的には安くないと思うんですが、思い切ってこの価格設定にしたのはどうしてなんですか。

岩柳:一般的な商品開発の場合、お客さまに出すときの最終上代はこれくらいって先に価格を決めて、そこから原価を割り出して進めますが、この「パルフェビジュー」は、自分が使いたい素材を惜しみなく使って、納得のいく仕上がりを追求し、それをお客さまに食べていただきたいと思ったので、上代を決めずにつくりました。売れなくてもいいからとにかく好きにやってみよう、と始めたメニューなんです。結果的に多くの方にご好評いただき、とてもありがたく思っています。

「パルフェビジュー」のデザインは岩柳さんが手描きする。これが制作指示書にもなる。「パルフェビジュー」のデザインは岩柳さんが手描きする。これが制作指示書にもなる。
――デザインを勉強されていたからか、色彩やバランスがすごくきれいですよね。ゼリーの食感も普通とは違って面白いです。


岩柳:「宝石パフェ」なので、見た目にはこだわっています。食感にも気を配っていて、例えばゼリーはいつもゼラチンだと飽きてしまうので、内容によって使う素材を変えます。今お出ししているさくらんぼパフェには、グリオットというダークチェリーを葛でまとめたジュレを入れているので、もちもちした食感になっています。

――生クリームが入ってないのでサッパリしているし、完熟フルーツが本当に美味しい。フルーツは月ごとに変わるんですか?

岩柳:量が多くてもフルーツでサッパリ、最後まで食べ切れる大人向けのパフェがつくりたかったんです。季節によってフルーツが変わることで、飽きずに楽しんでいただければと思っています。フルーツはその年の気候によって時期が変わります。さくらんぼパフェは今年のさくらんぼの旬に合わせて5月下旬から7月中旬までの提供予定です(※6月下旬取材時)。使っているさくらんぼは、山梨県甲州市の「宿沢フルーツ農園」や山形県の指定農家のもの。完熟になるまで丁寧に育てられたさくらんぼが期間中、毎日農園から届きます。

季節限定スペシャリテ、さくらんぼの「パルフェビジュー」(7月中旬で終了)。ドリンク付き3,400円(税別)。ピスタチオジェラートを中心に、ドーナツ型板チョコレートの上にミントとさくらんぼをトッピング。フロマージュブランクリーム、ピスタチオとフリーズドライイチゴのフィユティーヌ、グリオット葛ジュレ、チョコレートプリン、ピスタチオフロマージュブランクリーム、さくらんぼのキルシュマリネ、ハイビスカスジュレ、レモンジュレ、さくらんぼとグリオットのコンポート入り季節限定スペシャリテ、さくらんぼの「パルフェビジュー」(7月中旬で終了)。ドリンク付き3,400円(税別)。ピスタチオジェラートを中心に、ドーナツ型板チョコレートの上にミントとさくらんぼをトッピング。フロマージュブランクリーム、ピスタチオとフリーズドライイチゴのフィユティーヌ、グリオット葛ジュレ、チョコレートプリン、ピスタチオフロマージュブランクリーム、さくらんぼのキルシュマリネ、ハイビスカスジュレ、レモンジュレ、さくらんぼとグリオットのコンポート入り。

notre inspiration,c'est vous!!
インスピレーションの始まりは、あなた。

実はサイクリストでもある岩柳さん、休日には自転車に乗ってイベントやレースに参加することも。出掛けた先でお菓子づくりのインスピレーションを得ることもある。人気のケーキ「峠のモンブラン」は自転車で九十九折りの峠を登ったときに、峠付近に落ちていたイガ栗から着想を得てできたそう。

真ん中が「峠のモンブラン」真ん中が「峠のモンブラン」
――ケーキづくりのインスピレーションはどこから得ているんですか?


岩柳:お客さまからいただくことが多いですね。お客さまがこんなの食べてみたい、と話しているのを聞いたりもします。あとはスタッフとの打ち合わせで、スタッフが食べたいものをヒアリングしたりとか。何気ないコミュニケーションを通してアイデアを得ることが多いです。「峠のモンブラン」のように、印象に残った風景や体験に着想することもありますが、パターンとしてはあまり多くないかもしれません。実は店のコンセプトが「notre inspiration,c'est vous!! インスピレーションの始まりは、あなた」なんですね。この店を立ち上げるときに、自分のクリエイションの根源を見つめ直して気づいたのは、ケーキづくりを通じて出会った人や物からインスピレーションを受けることで、毎日つくり続けられている、ということでした。だからお店に来てくれる人、関わってくれる人の想いや言葉にいつも影響を受けます。

――でもつくられたものを見ると、お客さんの意見を最大公約数的にまとめたイメージのお菓子ではないですよね。もっとずっと個性的なもののように思えますが...。

岩柳:最大公約数ではなくて、お客さまの「個」に注目しているからかもしれません。うちにきてくださるお客さまは感度が高い方が多いし、個性的なんです。例えば「今日はパルフェビジューを食べるのに合わせて、こういうお洋服を着て来ました」とコメントを付けて写真をSNSにアップする方がいらっしゃったり。遊び心があって、お菓子を食べることと一緒に、人生を楽しんでいる素敵な方が多くて、とても刺激を受けます。こういう人に似合うお菓子はなんだろう、と考えるとアイデアが膨らむんです。つまりインスピレーションの始まりは顔の見えない誰かではなく、「あなた」なんです。

インスピレーションの始まりは顔の見えない誰かではなく、「あなた」なんです。

――身近なところからインスピレーションを得ているんですね。魅力的な人が周りに多いのは岩柳さんも魅力的だから、なのではと思います。

岩柳:どうなんでしょうか(笑)。でもスタッフを含め周りの人には恵まれていると思います。いつも助けてもらっています。

――パティスリーの隣に「ASAKO IWAYANAGI PLUS」(アサコ イワヤナギ プリュス)というジェラートやクレープなどが食べ歩きできる、テイクアウト中心のショップも2018年にオープンして、いろんなことをやられていますが、岩柳さんが今後やりたいこと、夢や目標はありますか?

岩柳:幼児教育とまではいかないのですが、いつか小学生ぐらいの子どもたちにお菓子づくりを教えてみたいですね。この楽しさを体験してもらいたい。ボランティアで学校へ行って教えられたら楽しいかもしれないと思っています。


「ASAKO IWAYANAGI PLUS」では焼き立てのクレープがいただける「ASAKO IWAYANAGI PLUS」では焼き立てのクレープがいただける
――ありがとうございました。


取材にうかがったときはちょうどさくらんぼのシーズンで、豪華な「宝石パフェ」を堪能しました。セットに付けていただいたおすすめドリンクは、微発砲の赤ワイン。パフェにワインも合うんだな、と新しい発見がありました。オープンキッチンで30名以上のスタッフ、そして満員の客席。賑やかで活気のあるパティスリーはとても居心地の良い空間でした。



■イベント情報 [pdf:221KB]
hotel koe tokyo × PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI private lounge Afternoon tea

hotel koe tokyo × PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI private lounge Afternoon tea


取材協力:
PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI
取材協力:PATISSERIE ASAKO IWAYANAGI

  • プロフィール画像 INTERVIEW 「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」シェフパティシエール 岩柳麻子さん

    【PROFILE】

    岩柳麻子(いわやなぎ・あさこ)
    東京都出身。2000年、桑沢デザイン研究所卒業。染色家として活動しつつも、アルバイトで始めた飲食関係の仕事がやがて本職となる。フランスに幾度となく足を運び、独学にてケーキの奥深さを学ぶ。

    2015年10月、株式会社creAを設立。代表取締役就任。
    2015年12月、自身の名を冠した『PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI』を世田谷区等々力にオープン。オーナーシェフパティシエール就任。

    ケーキ、焼菓子の他、義両親が営む山梨県甲州市「宿沢フルーツ農園」を中心とした全国の農園さんから直接フルーツを取り寄せジェラートの製造を開始。同時に店内でジェラートとフレッシュフルーツが中心のパフェの提供を開始する。

    雑誌「婦人画報」の特集がきっかけで誕生した”宝石のようなパフェ”「パルフェビジュー」が脚光を浴び、全国から多数のファンが訪れるお店へと成長を遂げる。

    2018年10月、隣の敷地に焼菓子/ジェラート/チョコレート/コンフィチュール/クレープ・ガレット/コーヒー ・日本茶、6つのカテゴリーを専門的に扱う「ASAKO IWAYANAGI PLUS」をオープン。
    自身の理想を追求すべく、日々厨房に立ち続ける。

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