折り紙も作れる紙漉き職人として、伝統を継いでいきたい。

AUG 25, 2020

有澤悠河さん 折り紙作家・紙漉き職人〈インタビュー〉 折り紙も作れる紙漉き職人として、伝統を継いでいきたい。

AUG 25, 2020

有澤悠河さん 折り紙作家・紙漉き職人〈インタビュー〉 折り紙も作れる紙漉き職人として、伝統を継いでいきたい。 テレビ番組「マツコの知らない世界」に出演し、"折り紙王子"としても知られる、折り紙作家の有澤悠河さん。今回、アクティオのレンタル建設機械「バックホー」(ショベルカー)をお題に、オリジナルの折り紙作品を作っていただきました! 岐阜県美濃市の清流、長良川のほとりにある手漉き和紙工房Corsoyard(コルソヤード)さんにお邪魔し、紙漉き職人としても働く有澤悠河さんに、折り紙作品について、紙漉き職人になったきっかけや、将来について話をうかがいました。

オリジナル作品の制作を通じてのめり込んだ折り紙の世界

有澤悠河さん作「バックホー」(ショベルカー)。手漉き和紙をアクティオレッドに染色いただきました有澤悠河さん作「バックホー」(ショベルカー)。手漉き和紙をアクティオレッドに染色いただきました


――有澤さんが最初に折り紙を触ったのはいつ頃だったんですか。


幼稚園の頃ですね。だから折り紙を触り始めたタイミングはわりと一般的な感じだと思います。でも、紙を折るだけで何かの形になるっていうのがすごく楽しくて、すぐにハマって、幼稚園でやるような簡単な折り紙以外にも、折り紙の本などを見ながら家で折ったりしていました。


――折り紙が好きな人は、本に載っているものじゃなくて、オリジナル作品が作りたくなるものなんでしょうか。


ある程度折れるようになってくると、本に載ってるようなものは大体折れるようになっちゃうので、その次ってなると、自分で考えたい、オリジナルで何かを作りたいという気持ちが出てくると思います。僕は小学校を卒業する頃にはもうオリジナル作品を作り始めていました。


――最初のオリジナル作品は何だったのですか。


昆虫が大好きだったので、昆虫を作りました。本格的に創作を始めたきっかけが、クワガタの折り紙なんですが、まぐれでできちゃったんです。そのときに、オリジナルで折り方を考える、作る楽しみを味わって、もっとこの世界に入っていきたいと思うようになりました。




折り紙で知った日本の手漉き和紙の魅力

――今は手漉き和紙工房で職人としても働いていらっしゃいますが、和紙職人になろうと思ったきっかけも折り紙ですか。


折り紙ですね。中学生の頃から本格的にオリジナル作品を作り始めたんですけど、そうするとどんどん折り方が複雑になっていって、その複雑な折りに耐えうる紙っていうのがやっぱり限られてくるんですね。普通の折り紙だとこんなふうにぐちゃぐちゃになって、破れてしまったり。これだけ折るともう崩壊しかけてますよね。


折りすぎてぐちゃぐちゃになりつつある普通の折り紙折りすぎてぐちゃぐちゃになりつつある普通の折り紙


その点日本の手漉き和紙は、薄くてとても丈夫なのでより複雑な形にも折っていけるんです。その魅力に気づいたのが中学生のときで、日本の手漉き和紙ってすごいんだなーって。自分で紙から作れたら楽しいだろうって思ったのがきっかけです。高校入試の面接でも将来は紙漉き職人になりたいですって言いました。


――折り紙をする人は紙の重要性に気づくんですね。


そうですね。折り紙好きはみんなより良い紙を追い求めて、いろんな文具屋さん、紙屋さんへ行くんですよ。僕も同じように紙を探していた中で日本の手漉き和紙に出合いました。


――有澤さんは北海道、札幌のご出身とうかがいました。


はい。高校3年生まで札幌で過ごして、卒業してから紙漉き職人になるためにこの土地に引っ越してきました。


――紙漉き職人になると決めてからCorsoyardさんに来るまで、他の工房なども回られたんですか。


高校3年生のときに全国の手漉き和紙の工房や機械製紙工場など10軒ほど回って見学したのですが、その中の1つがここだったんです。


――それは自分で調べたんですか。


自分で調べて、母親にも協力してもらって2人で回りました。


――すごい情熱を感じます......!ご両親も応援してくださったんですね。


はい。小さい頃から僕がやりたいって言ったことにはすごく協力的で、応援してくれる両親でとても感謝しています。




展開図を見れば完成形が分かる!?

――先ほど「バックホー」の折り方を見せていただきましたが、最初に付ける折り筋、あれがとても複雑に見えます。折り筋をつけるのは重要なんでしょうか。


そうですね。折り筋はとても重要で、適当に入れているように見えますが全部数学的な計算で成り立ってます。


折り筋の入った折り紙折り筋の入った折り紙


――計算して作るんですか。


最初から計算して折るというよりは、手を動かして折った形が結果的にそういう数字を持っている感じですね。だから折り方を考えてるときは、そんなに数学のことは考えてなくて。でも途中で数学が必要になる場面もあります。例えば表現したい形を作るのに、足りない部分が出てきたら、どれだけ出せばいいのかっていう割合を正方形に落とし込んで計算するので、平方根や三角関数など数学の知識もある程度は必要になります。それに基づいて折り筋を入れていくので、逆にこの折り筋がないと絶対にこの形には折れません。


――最初に手を動かしながら折り筋を決めていく流れなんですね。


はい。折り方がある程度決まったら1回それを全部バラして、折り紙にどんな線が入っているか、パソコンでトレースして折り筋を再現します。この折り筋を再現したものを展開図と呼んでいますが、折り紙ができる人であれば、この展開図を見ただけで、何も説明しなくても完成形が作れるんですよ。でもそれだと素人には絶対に伝わらないので、折り方を分かりやすく順序だてて説明します。


クローラー部分の展開図。折り紙のプロはこれを見るだけで完成形を作ることができるバックホー下部のクローラー部分の展開図。折り紙のプロはこれを見るだけで完成形を作ることができる


――展開図を見ただけで完成形が分かるっていうのが、もう全然分からない世界です(笑)。形の捉え方はどうでしょうか。例えばデッサンのように全体的な形、特徴を捉えて、どう表現するかみたいなことをざっくり考えるのでしょうか。


まさにそんな感じで、今回のバックホーでいえば、最初はクローラー部分まで1枚で作ろうと思ってたんです。僕としては正方形1枚をどう料理するかっていう方が慣れてるので、スムーズに作ることはできるんですけど、そのぶん難易度は上がってしまうんですね。今回はお子さんでも折れるような平易な折り紙に仕上げてほしい、というリクエストだったので、じゃあちょっと上と下は分けてみようかなっていうアイデアが浮かんで。分ければ動かして遊ぶこともできるじゃんっていうところに気がつきました。


次に、上をどうやって設計するか、最初は一番特徴的なこのバケットの部分ですね。


最初は一番特徴的なこのバケットの部分


この折り方をどうしようかっていうところから始まって、アームの構造を生かしながら、ボディ部分は箱状にしたいな......とつなげていきました。


この折り方をどうしようかっていうところから始まって・・・




バックホーが有澤さん初の複合折り紙作品

面白いのがバックホーの形って、左右対称じゃないんですよね。折り紙の作品は生き物を作ることがとても多くて、生き物って大体、左右対称な形をしているんです。だから左右対称な形を作る方が慣れているんですけど、これはアームが右側にあって、左側にボディがあるっていう非対称な形をしているのでより設計は難しいです。左右非対称な形を、左右対称どころか点対称、回転対称な正方形から折っていくのがやっぱり面白い部分で、すごくやりがいがありました。


すごくやりがいがありました。


今回は、複合折り紙といって、1つの題材を2枚以上の紙で折るっていう方法を採用しましたが、他の人の作品で折ったことはあったんですけど、自分で考え出したのは実は初めてなんです。自分史上初めての試みだったので、記念すべき作品になりました。組み合わせの折り紙は今までやってみたいなとずっと思っていたので、すごく新鮮で、考えてる時間も面白かったです。


上のボディ部分と、下のクローラー部分に分かれた複合折り紙作品上のボディ部分と、下のクローラー部分に分かれた複合折り紙作品


――そうなんですね。記念すべき作品になってアクティオとしても嬉しいです!




師匠との出会い。そして"折り紙王子"誕生秘話

師匠であるCorsoyard代表の澤木健司さんと師匠であるCorsoyard代表の澤木健司さんと


――有澤さんは紙漉き職人になるために、Corsoyardさんに弟子入りという形で入られたそうですが、Corsoyard代表で、師匠の澤木健司さんにもご登場いただいて、有澤さんが見学に来られたときのことをうかがいたいと思います。どんなやり取りがあったんでしょうか。


澤木:有澤は子どもの頃から折り紙のスキルを身につけていて、それこそ紙1枚からいろんな形が生み出せます。正直、僕にはそのスキルのすごさがわからなかったんですけど、実はうちは彼が来る前から折り紙のアクセサリーが売れ始めていて、折り紙の可能性はすごく感じていました。だから彼の持つスキルはうちの工房に必要だと思って、来てくれたら嬉しいよって言いました。


ただ彼の場合は、折り紙作家という職業がないから、職業として、紙漉き職人になれば生活できるという思いがあって来てくれたんです。ところが紙作りの方がもう市場崩壊していて、機械製紙業も、手漉き和紙工房もどんどん減って、今はもう百数十軒しか日本にはないという状況です。ちゃんと作れば作っただけ紙は高いし、売ろうと思っても売れない。


紙作りそのものじゃ食べていけない、付加価値が必要で、きつい市場でもあります。でも僕はこれまで折り紙作家、という職業で、誰もご飯を食べてきていないっていうところが、ビジネスとしてはブルーオーシャンだと思いました。だから折り紙の方がご飯を食べる方法があると思うよって話しました。そのあと、高校を卒業する前の、年末ぐらいにうちで仕事がしたいって手紙をくれたんです。すぐに電話して 、すぐ来てって(笑)。


有澤悠河 作 (左)「金魚」ピアス・イヤリング、(右)「ねこ」ネックレス。折り紙作品を樹脂でコーティングしてアクセサリーにしている有澤悠河 作 (左)「金魚」ピアス・イヤリング、(右)「ねこ」ネックレス。折り紙作品を樹脂でコーティングしてアクセサリーにしている


――それは何年前ですか?


有澤:2016年の3月に来たので、4年と5ヶ月前くらいですね。


――その4年とちょっとの間に和紙職人の道を歩みつつ、折り紙作家としても人気のテレビ番組「マツコの知らない世界」にも出演されたんですよね。


有澤:はい。あの番組に出た後は、反響が大きかったですね。実は「いつか出たいね」って話していたらその直後、3日後ぐらいに突然オファーがきてびっくりしました(笑)。 僕はテレビをあまり見ないので、タレントさんをよく知らないんですが、マツコさんは知っていて。


――"折り紙王子"ってどこからきたんですか。


有澤:マツコさんの番組なんです。でも僕も知ったのが本当に視聴者と同じタイミングで、収録のときはそんなこと一切言ってなかったんですよ(笑)。 勝手に王子にされてる......と思ったけど、でももう開き直って、若いうち、王子といえる今のうちぐらいは言っておこうかって。


澤木:そうやって徐々にメディアの方が取り上げてくださっているおかげで、今回のようなご依頼をいただいたりと、折り紙作家が職業になり得る可能性っていうのが出てきました。この工房も彼に継いでもらえばいいと思っています。


有澤悠河
有澤悠河 作 「Dragon2018 -IBUKI-」有澤悠河 作 「Dragon2018 -IBUKI-」




伝統は守ろうと思ったら終わり

――後継ぎですか。もうそこまでお話をされているんですね。


澤木:伝統工芸って老害がすごくて、例えばテレビとかで伝統工芸士のおじいさんが出ると絵的にはかっこいいんですけど、それってもう終わりの象徴なんですよ。本当に次の世代につながってないから、そういうことになっちゃってるだけで。本来の「伝統工芸」って若い人がバリバリやってくものなんです。


僕は老害になりたくはないので、あと10年以内には一線からは身を引くと思います。でも中途半端に放り出すのは無責任なので、彼が紙漉き職人として、折り紙作家として生きていける仕組みを一緒に作ってから譲りたいと思っています。そういうビジョンは、彼が見学に来たときから話していました。


――その頃、有澤さんは高校を卒業する前、二十歳にもなっていないですよね。工房の後継ぎだとか話としては結構大きいし、責任が重いかも? と思うんですが、そういう話を聞いても有澤さんは平気だったのですか。


有澤:むしろそういう話をしてくれる人がいなかったんです。10軒ほど工房を見学してきましたが、そういう話を真面目にしてくれる所はなかった。みんなおじいさんとかで「紙漉きは大変だぞ」って言われるだけで、そういうちゃんと未来の見える話をしてくれる人が誰一人としていなかった。だから、もうここしか入るところがないなって。


――手漉き和紙作りは伝統の技術だと思いますし、折り紙も日本の文化ですよね。有澤さんはそれを掛け合わせて、新しいものを作り出そうとしているという感覚なのでしょうか。


有澤:そうですね。手漉き和紙の技術というのは、すごく歴史のあるものなので、きちんと引き継いでいきたいんですけど、それが仕事にならないと残してもいけないですから。伝統そのままの形である必要はないはずなので、折り紙作家という職業とうまくドッキングさせて、折り紙も作れる紙漉き職人みたいな形で残していっても良いと思ってます。


澤木:伝統って守ろうと思ってやりだしたらもう終わってるんで、やっぱり楽しいとか、こんなものを作りたいというものがないと、本当に守る事って出来ないんです。かっこよく見せたいとか、使って欲しいとか、なんかそういう気持ちが大事で。単純に昔から伝わってる技術だから凄いんです、というのはダメなんですよね。


――Corsoyardさんでは、紙の原料の楮(こうぞ)から育てていますよね。植物から紙へ、最終的にはアクセサリーになることもある。だんだん違うものになっていく過程に喜びや楽しさというのもあるのでしょうか。


有澤:やりがいはあります。でも今はやりがいを求めて栽培してると言うよりは、年々楮の生産量が減っていて、そのうち原料が買えなくなるかもしれないと必要に駆られて作業してる状態なんです。でもそれでもやっぱり毎日、夕方になると農場へ行って楮の世話をして、これがゆくゆく紙になって、自分で折れると思うと農作業も楽しいですね。


工房の裏にある畑、奥に茂っているのが和紙の原料となる楮(こうぞ)工房の裏にある畑、奥に茂っているのが和紙の原料となる楮(こうぞ)


畑の雑草を食べてくれるヤギ。名前は弁慶畑の雑草を食べてくれるヤギ。名前は弁慶


――最後に有澤さんの今後の夢を聞かせてください。


有澤:工房を継ぐという話もありますし、紙漉きという仕事をしつつ、折り紙の制作もやっていきたい。具体的にこんな作品を作りたいというのが今はないんですけど、どっちも楽しくやっていきたいなっていうのはあります。それこそ今回のような、普段の自分では作ろうと思わないような題材も提案いただいて作ってみたらとても楽しかったので、どんどんチャレンジしていきたいなと思っています。


――ありがとうございました。22歳とは思えない落ち着いた口調に、飾らない素朴な佇まい。折り紙について語ってくれる有澤さんはニコニコ嬉しそうで、本当に折り紙が大好きな王子様!という印象でした。工房で作っているアクセサリーも必見です。手漉き和紙の繊細な美しさと、有澤さんの細かな手仕事をぜひご覧ください。




おりがみ王子の カワイイ! けれど難しすぎるおりがみ
有澤悠河(著)



■取材協力
美濃手漉き和紙工房Corsoyard(コルソヤード)
http://corsoyard.com/


美濃手漉き和紙工房Corsoyard(コルソヤード)

  • プロフィール画像 有澤悠河さん 折り紙作家・紙漉き職人〈インタビュー〉

    【PROFILE】

    有澤悠河(ありさわ・ゆうが)

    折り紙作家・紙漉き職人
    美濃手漉き和紙工房Corsoyard所属

    創作作品一覧
    http://orisawa108.blog.fc2.com/blog-entry-57.html

    1997年 北海道札幌市に生まれる
    2002年 幼稚園で折り紙に親しむ
    2009年 難解折り紙に出合う
    2010年 本格的に創作を開始
    2012年 手漉き和紙の魅力に惹かれ、紙漉き職人を志す
    2013年 ブログ「ありさんの折り紙」を開設
    2016年 広尾町長室、札幌市手稲区長室に作品寄贈
    2016年 美濃手漉き和紙工房Corsoyardに所属
    2018年 折紙探偵団関西コンベンション作品コンテストにて優勝
    2018年 「新世代の革命 東京展」にて来場者による作品投票一位
    2019年 初の著書「おりがみ王子の カワイイ!けれど難しすぎるおりがみ」(KADOKAWA)を出版
    2019年 ロールス・ロイスのエキシビジョン「Rolls Royce The 8th Wonder」にて実演・作品制作
    2020年 神戸レザー「KEIOKU折り紙」の監修、作品制作

    テレビ出演
    「めざましテレビ」(フジテレビ) -2013.8
    「FNS番組対抗 オールスター春の祭典 目利き王決定戦」(フジテレビ) -2018.4
    「イッポウ」(CBCテレビ) -2018.10
    「マツコの知らない世界」(TBSテレビ) -2018.11
    「Oha!4 NEWS LIVE」(日本テレビ) -2019.2
    「うたコン」(NHK) -2019.3
    「美の壺」(NHK) -2019.5
    「沼にハマってきいてみた」(NHK) -2019.6
    「チャント!」(CBCテレビ) -2019.8

    その他メディア掲載など
    「tTime」(ZIP-FM) -2019.1
    「日テレNEWS24 the SOCIAL」(日本テレビ) -2019.1
    「マウントレーニア/meets creator」(森永乳業) -2019.4
    「凄腕しごとにん」(朝日新聞デジタル) -2019.7
    「東海ウォーカー/ボイメンの対面TALK」(KADOKAWA) -2019.7
    「多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N」(CBCラジオ) -2019.7
    「WAKEY WAKEY」(ZIP-FM) -2019.8
    「ひととき/この熱き人々」(ウェッジ) -2019.11

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