【連載】創造する人に役立つ文房具
2019.09.10
菅 未里
キャップレス「万年筆」で革新的なアイデアを
幼少期、モノを書くことを覚え始めた頃からずっと身近にあるペンやノート、消しゴムなどの文房具。いま改めてその世界を覗きこめば、使い心地、デザイン、遊び心やユニークさなど、驚くほど多様なアイテムがあり、進化をとげていました。新連載「創造する人に役立つ文房具」はその中でも、使うことでクリエイティブな気持ちになれるようなアイテムを、文具ソムリエール菅未里さんにご紹介いただきます。
書き物をするときに、どんな筆記具を使われますか? 多くの方はボールペンをお使いだと思います。子供の頃は鉛筆やシャープペンで、社会人になったらボールペン、という方が大半なのではないでしょうか。
しかし、多くの方が忘れているとても魅力的な筆記具があります。それが万年筆です。
書き味を変えて気分を変える
前回お伝えしたように、書き味を変えると気分が変わり、新しいアイデアが浮かぶことがあります。そして書き味を変えるには紙を変えてもいいのですが、筆記具を変える手もあるのです。
そこで私は、普段使いのボールペンに加え、たまに万年筆を使ってみることをご提案したいと思います。万年筆の筆記の仕組みは先端にボールがあるボールペンとはまったく違い、紙に接触したペン先からインクが流れ出るようになっていますから、筆記の感触も大きく異なります。革新的なアイデアが万年筆から生まれることもあるでしょう。
ノック式万年筆をご存知ですか?
しかし、万年筆は日常的に使うものではないというイメージをお持ちの方も多そうです。たしかに万年筆に趣味のアイテムとしての側面があるのは事実です。
特に万年筆を普段使いから遠いものにしているのはキャップの存在ではないでしょうか。ほとんどの万年筆にはインクの乾燥を防ぐためのキャップがついていますから、筆記時には外さなければいけません。それを手間に感じる方も多いようです。
しかし、実はキャップを必要としない万年筆もあるのです。それが、株式会社パイロットが1963年に発売したベストセラー「キャップレス」シリーズ(定価10,000円+税~)です。
キャップレスシリーズは、ノックをするとペン先が出るノック式です。乾燥を防ぐシャッターが内部にあるため、キャップが無くても乾燥しません。ノック式なのでボールペンのように手軽に使えますが、決してボールペンにはない、万年筆固有の筆記感を楽しめることが大きな違いです。
実用性が高いノック式万年筆はいまいちエレガントではないと感じる方もいるらしいのですが、貝殻の真珠層をちりばめたシリーズ最高峰「キャップレス 螺鈿(らでん)」には、誰もが息を呑む魅力があります。定価は5万円+税ですが、実用的で美しく、しかも一生使えますから、決して高い買い物ではないのではないでしょうか。
【ご紹介したアイテム詳細はこちら】
PILOT「キャップレス」シリーズ
PILOT「キャップレス」螺鈿(らでん)
※記事の情報は2019年9月10日時点のものです。
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【PROFILE】
菅未里(かん・みさと)
文具ソムリエール。
文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具の専門家として独立。
国内外で商品や売り場の企画・監修、各種メディア出演、メーカーのコンサルティング、執筆などを行っている。日経MJなど連載多数。
著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。
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