【連載】大人が楽しめる傑作ゲームたち
2023.10.31
野安ゆきお
販売本数世界No.1の「Minecraft(マインクラフト)」と独創的なデビュー作「Gorogoa(ゴロゴア) 」――大人にこそプレイしてほしい2本の傑作ゲーム
仕事や学業、育児などに追われてゲームは子どもの頃以来やっていない、そんな大人にこそ遊んでほしいゲームをご紹介するゲームコラム第2弾。2本のインディーズゲームをゲームジャーナリストの野安ゆきおさんにご紹介いただきます。
日本の大人だけが知らない傑作「マインクラフト」
発売から総販売本数が2億を突破した「Minecraft(マインクラフト)」。2011年、スウェーデン人クリエイター、マルクス・ペルソン氏がインディーズゲームとして制作すると、あっという間に世界中のゲーマーの心を掴み、世界でもっとも売れたゲームとしてギネス記録を達成しました。
しかし不思議なことに、日本では、世代によって大きく認知度が変化するゲームです。2023年現在、その分岐点は30歳くらいでしょうか。それよりも下の世代の人たちは「子どもの頃、当たり前のようにプレイした、誰もが知る定番ゲームだよね」となるのですが、それより上の世代になると、いきなり知名度が下がるようです。
日本は家庭用ゲーム機が強い市場です。とくに2010年代はニンテンドーDSとニンテンドー3DSの全盛期で、携帯ゲーム機が日本市場を席巻していました。PCを主戦場とする北欧製のインディーズソフトは、大人のライトユーザーに広く知れ渡らなかったのですね。
このため「マインクラフト」発売時点で大人になっていた世代では、「名前は知ってるけど、実際にプレイしたことがないんだよなぁ」といった人が激増します。このコラムをお読みになっている方の中にも、そういう人、かなり多いと思われますが、いかがでしょうか?
子どもが砂場で遊ぶときの気持ちになれるゲーム
でもこれ、端的に言ってめちゃくちゃ面白い大傑作ゲームです。そこで今回は、まったくの未経験者に向けて、「マインクラフト」の魅力をゼロから説明いたします。
まずはゲームの基本から。この世界は、すべてがゴツゴツした四角いブロックで作られています。大地も、木々も、水などの液体も、さらには主人公や、そこに生きる動物たちまで、すべてが四角いブロックの組み合わせで描かれます。動画をご覧ください。
Minecraft Trails & Tales Update: Official Launch Trailer
ゲームの舞台となるのは、自動生成された広大なフィールドです。これは「ワールド」と呼ばれます。わたしたちは、このワールドを自由に冒険し、開拓していきます。なんらかの目的とか課題などはありません。好き勝手に過ごせばいいのです。
このようなゲーム、海外ではサンドボックス(箱庭)ゲームと呼ばれます。でも、日本人にはピンと来ないかもしれませんね。なので、小さな子どもが公園の砂場で楽しい時間を過ごすようなゲームだ、とイメージするといいでしょう。
子どもたちは、砂場を掘り返し、山を作ったり、トンネルを作ったりして夢中になって遊びますよね。「マインクラフト」の面白さは、それと同じです。わたしたちは想像力の赴くまま、ゲーム内の世界を好きなように作り上げることができるのです。
サバイバルするもよし、何かを作り上げるのもよし
ゲームの冒頭を紹介しましょう。基本となる「サバイバルモード」では、プレイヤーはゼロから生活拠点を作っていくことになります。地面を掘って鉱石を集め、木々を切って木材をとり、それらをレゴブロックのように積み上げ、建物を作っていきます。夜になると魔物が出てきますので、それらに怯えることなく眠れる場所を確保しないと、あっという間に死んでしまいます。
安心できる場所(拠点)が作れたら、今度は集めた素材を組み合わせてモノ作りに挑戦しましょう。攻撃のための武器を作ってもいいし、採掘のための道具を作ってもいいし、建物を強化するための素材(レンガやガラスなど)を作ってもいいです。こうして作れるブロックの種類は1,000以上。あらゆるものが作れます。レッドストーンという素材を使えば動力を手に入れることもでき、最終的には電子回路(のようなもの)を作ることすら可能です。
さあ。ここまで来たら、あとはモノ作りに熱中してもいいですし、広いワールドを探索してもいいです。ワールドには草原があり、砂漠があり、豪雪地帯があり、海が広がっています。さまざまな動物が暮らしていて、さまざまな神殿などがあり、すべてが謎に満ちています。
ただし「マインクラフト」のワールドは、とてつもなく広いのでご注意ください。分かりやすく、ゲーム内のキャラを人間の大きさに仮定すると、ワールドの総面積は地球の総面積を超えます。すべて走破することは不可能といわれています(ゲームの製作者自身がそう宣言しています)。
いちおうラスボス的な強い魔物もいます。でも、倒してもいいし、倒さなくてもかまいません。ここは好きなことをして楽しむ「砂場」なのですから、プレイヤーは、好きなように過ごせばいいのです。
「想像力」と「創造力」があれば、無限に楽しめる
いかがでしょうか? 「マインクラフト」というゲームは、こんなものが作りたいとイメージしたものは、すべて再現できるゲームです。プレイヤーの想像力、そして創造力によって、今現在もあっと驚くものが次々と作られ続けています。
こうして作られた作品は、YouTubeなどの動画配信サイトで次々にアップロードされていますので、ぜひ検索してみてください。こうして「マインクラフト」は、世界中のあらゆるゲームの中で、もっとも多くSNS上に登場するゲームになったのです。
もし、あなたがゲームに興味があり、でも「マインクラフト」を体験したことがないのであれば、悩む必要はありません。世界で最もヒットした、そして世界でもっとも自由気ままに過ごせる大傑作を、ぜひプレイしてみてください。きっと夢中になると思います。
さまざまなコラボDLC(追加ダウンロードコンテンツ)も魅力のひとつ。2023年8月には新たなアドベンチャーマップ、ディズニー・ワールド・オブ・アドベンチャーが登場しました。
マインクラフト × ディズニー・ワールド・オブ・アドベンチャー DLC
絵本を読む感覚で楽しめるパズルゲーム「ゴロゴア」
もう1本、大人こそ楽しめるゲーム! と呼ぶべき作品を紹介しましょう。「Gorogoa(ゴロゴア)」です。
まずはゲームの動画をご覧ください。あまりの独創性に「なんだこれ?」と驚いた方もいるでしょう。画面にあるのは2×2に区切られた4つのパネルだけ。それぞれのパネルには、絵本の挿絵のような画像が描かれています。「ゴロゴア」とは、これだけの要素で構成されたパズルゲームです。
GOROGOA | Launch Trailer
画像は静止画だけでなく、アニメーションもあります。ズームイン、ズームアウトすることができるパネルもあります。プレイヤーは、これらのパネルの位置を移動したり、1枚のパネルを分割したり、その逆に2つのパネルを重ねて1枚にしたりして、ゲームを進めていきます。
具体的に説明しましょう。それぞれのパネルに描かれた画像をうまく繋げると、そこで「不思議なこと」が起きるのです。たとえば木に生ったリンゴが描かれたパネルを置いて、その下にボウルが描かれたパネルを置く。するとリンゴがボウルに落ちてくる、といった具合です。
だからプレイヤーは「この絵とこの絵を組み合わせたら、こんなことが起きるかも?」と想像し、パネルを組み合わせていくことになるわけです。さあ、うまいこと主人公(これもパネルで描かれた絵の中にいます)を誘導し、ボウルの中に入れる5つの果実を探し求めていきましょう。これが「ゴロゴア」というゲームです。なんとも独創的で、幻想的なパズルゲームなのです。
絵本を読むように楽しめる不思議なパズルゲーム
こんな独創的なゲーム、どうやって作られたのか? そんな疑問を持った方のために、製作の裏話をご紹介しましょう。
これを作ったのはアメリカ人のジェイソン・ロバーツ氏。もともとはゲームと無関係のソフトウェアエンジニアだったのですが、突如、2011年にゲーム制作に着手しました。そして資金難に苦しみながらも、2017年に「ゴロゴア」を完成させました。つまりこれ、ロバーツ氏のデビュー作です。
もしこれが、大手メーカーで企画されたソフトだったなら、もっと「誰でもクリアできる」ようにヒントを与えながら、プレイヤーを誘導するように作られたかもしれません。でも新人クリエイターのデビュー作である「ゴロゴア」には、そういった商業的な打算はなく、徹頭徹尾、「世界の誰ひとり見たこともない面白さ」を提供しようという熱意に満ちている。それが、とびきりの魅力になっているのです。
といっても、なにも難しくありません。プレイ方法はシンプル。とてつもなく独創的なのに、誰でも楽しく遊べるようになっています。思考力は必要なく、「ひらめき」や「発想力」で謎を解き明かしていくゲームです。
いかがでしょう? これは、しばらくゲームから離れていた人だけではなく、ゲーム未経験者にも、ちょっとプレイしてみるのにピッタリのゲームです。ぜひとも、この幻想的な世界で展開する物語を堪能してください。
【ご紹介した作品詳細はこちら】
対応プラットフォーム:Nintendo Switch/PlayStation4/Xbox One/PC/他
販売元:マイクロソフト
2011年11月18日発売
対応プラットフォーム:Nintendo Switch/PlayStation4/Xbox One/PC/他
販売元:アンナプルナ・インタラクティブ
2017年12月14日発売
※記事の情報は2023年10月31日時点のものです。
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【PROFILE】
野安ゆきお(のやす・ゆきお)
ゲームジャーナリスト。ファミコン時代からゲームライターとして活動開始。プレイしたゲームの本数は1,000本を超える。ゲーム雑誌記事執筆のほか、100冊を超える攻略本を編集・執筆。現在はフリーランスのゲームジャーナリストとして活動中。子どもの頃、海外を転々とした経歴があるため、異文化になじむのが得意。1968年東京生まれ。
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