童心に返れる「コンストラクション シミュレーター 3」とアイディアが巧妙な「デジボク地球防衛軍2」――久しぶりに遊ぶときのハードルの低さが魅力のゲーム2本

NOV 21, 2023

野安ゆきお 童心に返れる「コンストラクション シミュレーター 3」とアイディアが巧妙な「デジボク地球防衛軍2」――久しぶりに遊ぶときのハードルの低さが魅力のゲーム2本

NOV 21, 2023

野安ゆきお 童心に返れる「コンストラクション シミュレーター 3」とアイディアが巧妙な「デジボク地球防衛軍2」――久しぶりに遊ぶときのハードルの低さが魅力のゲーム2本 子どもの頃以来ほとんどゲームに触ってない、そんな大人にこそ遊んでほしいゲームをご紹介するコラム。最終回は、海外発、コアなファンが多いシミュレーターゲームと、アクションシューティングゲームを、ゲームジャーナリストの野安ゆきおさんにご紹介いただきました。

童心に返れる業界シミュレーション

しばらくゲームから離れていると、大作ゲームの最新作に対して気後れすることがあります。きっと面白いのだろう。でも前作も前々作もプレイしていないし、自分はこれを楽しめるだろうか? 世界観についていけるだろうか? と不安に襲われるためです。


ゲーム開発者の名誉のために書いておきますと、大作ソフトと呼ばれるS級ゲームは、初めてプレイする人に対する配慮が行き届いており、そんな心配をする必要はありません。お好きなゲームを手にしてOKです。


とはいえ、どうしても不安が拭い去れない方は、いったんシミュレーターと呼ばれるジャンルに手を伸ばしてみてはいかがでしょう。「シミュレーター」と聞くと、なにやらマニアックなゲームかと思われがちですが、いやいや、これらのゲームは、むしろ童心に返れるジャンルであり、ゲームから離れていた人にピッタリなのです。




ドイツから生まれた土木・建築シミュレーション

そこで今回は、世の中にたくさんあるシミュレーターの中から「コンストラクション シミュレーター 3」を紹介しましょう。


ひとことで説明すると、これは土木・建築シミュレーターゲームです。開発したのはドイツのゲーム企業、アストラゴンエンターテインメント。登場する車両・建設機械は、すべて実在するホンモノばかりで、キャタピラー社やリープヘル社など、14ブランドから50種類以上の重機が登場します。これらを駆使して、小さな住宅から超高層ビルまで、さまざまな建築物を作っていくのです。まずは紹介動画をご覧ください。


【Construction Simulator 3 - Console Edition】公式トレーラー


いかがでしょう? 子どもの頃に「はたらく車」に憧れたことのある方は、この動画にワクワクしたのではないでしょうか。そこにはトラック、クレーン、ショベルカーをはじめ、建設業界の人でなければ名を知らないような特殊な機械まで、あらゆる本格的な重機が登場します。本来ならば特殊免許を要するこれらの重機を、自在に操縦できるのです。


ゲームの流れを簡単に説明しましょう。あなたは建設会社の社長となり、会社の成長を目指します。とはいえ購入したばかりで会社の社屋はボロボロ。まずはクレーン車を使って自社の社屋を修繕します。資材置き場へ行き、クレーンのフックをかけて持ちあげ、それを社屋の屋根のところまで持っていって――と、ひとつひとつ手順を踏んで作業していきます。クレーンの操作は、すべて「ホンモノの重機と一緒」ですから、途中の作業を端折ることはできません。


会社を建て直したら、次第にいろいろな依頼が舞い込んできます。それらをこなして資金を得て、どんどん重機を増やしていきましょう。地面を掘り、地面をならし、アスファルトを敷き、建造物を建て......と、あらゆる土木・建築作業が可能になっていきます。


最後には、超大型クレーンなどを駆使し、巨大建造物を作れるようになります。その頃には、子どものときに砂場遊びに夢中になっていたのと同じように、ゲームに夢中になっていることでしょう。あっという間に数十時間を食い潰す、なんとも魅力的なシミュレーターです。




細部まで妥協なし! の本格派ゲーム

もうひとつの魅力は、建設作業以外の部分も、すべて細かく再現されていることです。


建設の依頼を受けたら、その現場まで重機を運転していくことになります。子どもの頃に憧れた、大型重機で一般道を走る楽しさが、しっかりと味わえます。広い世界を、日常では扱うことのできない大型マシンで疾走しちゃいましょう(注:お金を払えばショートカットすることも可能です)。


とはいえ一筋縄ではいきません。このゲーム、交通法規もしっかりと再現されています。信号無視をすれば罰金、ちょっと制限速度をオーバーすれば罰金......と、気の緩みが会社の経営を圧迫していきます。こんなところまで再現しなくてもいいのになぁ、と思うかもしれませんが、これはドイツ製ゲーム。ここまで厳密に再現するからこそ、本格シミュレーターは面白いのです。


ただ建設をするだけでなく、会社の財務管理、そして設備投資やメンテナンスも要求されます。細部まで一切の妥協は許されない、なんとも緻密なゲームなのですが、その緻密さが評価され、シリーズを重ねている人気ゲームなのです。


このため、老若男女誰もが楽しめるゲームだとは断言しませんが、ハマる人はめちゃくちゃハマるゲームであることは保証いたします。大型重機は操作にクセがあり、作業そのものも大変なのですが、それが楽しくなってくるんですよ。このコラムを見て興味を持った方には、ぜひ挑戦していただきたい1本です。




人気シリーズを自ら破壊!? 「デジボク地球防衛軍2」

次に紹介するのは、かなり異色のソフトです。大手ゲーム企業が、20年近くも人気を維持していた自社の人気ブランドを自ら破壊し、再構築したという不思議なシリーズの2作目。それが2024年発売予定の「四角い地球に再びシカク現る!? デジボク地球防衛軍2 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS」です。


言葉で説明するよりも、中身を見ていただいた方がいいでしょう。とにかく動画をご覧ください。


Switch/PS5/PS4『四角い地球に再びシカク現る!? デジボク地球防衛軍2 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS』ティザートレーラー


カクカクしたグラフィックで描かれる、コミカル風味のゲームという印象を抱いたかと思います。キッズ向けに作られた新規ゲームなのかな? と感じたかもしれません。


でも違うんですよ。「地球防衛軍」シリーズは、2003年から続く老舗ブランド。地球を襲う異星人との戦いを描いた本格的な3Dアクションシューティングゲームです。2022年には当時の最新作「地球防衛軍6」が、東京ゲームショウで日本ゲーム大賞の優秀賞に輝いています。比較するために「地球防衛軍6」のトレーラーもご覧ください。


『地球防衛軍6』1stトレーラー 絶望の未来に生きる。


全然違いますよね。自社の看板ブランドである本格派ゲームを、あえて大幅に画質を落として再構築。いわばセルフパロディにしてしまったのが、この「デジボク」シリーズです。その大英断によって、ゲームファンの高い評価を得ることになった異色のゲームです。




「デジボク」の「ボク」が意味するものは?

ここでポイントとなる言葉が「ボクセル」です。


みなさまは「ピクセル(pixel)」という言葉はご存じでしょう。日本語でいうと「画素」。2D画像の最小単位を指し示す言葉です。このスマホのカメラは〇〇万ピクセルだよ――などと、いまでは世の中で普通に使用する言葉になっています。


この画素(pixel)に、体積(volume)を組み合わせて生まれた造語が「ボクセル(voxel)」。たくさんの小さなドットを組み合わせて2D画像が作られているように、たくさんの立方体を組み合わせて3Dモデルを作ってしまおう、という考え方です。その立方体のことをボクセルと呼ぶのです。


「デジボク地球防衛軍」シリーズは、意図的に大きな「ボクセル」を使用し、コミカル風味なカクカクしたグラフィックで3D世界を再現しました。これにより、やや上級者向けゲームであり、初心者が手を出しにくい空気を醸し出していた「地球防衛軍」シリーズを、一気に大衆向けゲームへと変貌させ、キッズ層を主体にした新たなファンの獲得に成功したのです。




画質ではなくアイディア勝負の時代

じつはこれ、いまのゲーム産業の潮流でもあるのです。


ひと昔前まで、大手ゲーム企業は競い合うように美麗なグラフィックのゲームを作っていました。そのようなグラフィックのゲームを作るには膨大な予算と人員が必要となるため、後発の新興企業はおいそれと作れません。大手企業は他社との違いを見せつけるため、こぞって高画質のゲームを作っていたのです。


ところが時代は変わりました。いまはゲームエンジンと呼ばれる、いわば「ゲームを作るためのソフト」が全世界に普及しました。これらのソフトを使うと、小規模制作のインディー系ゲーム企業であっても、さほど予算をかけずに、そこそこ見栄えのいいソフトを作ることが可能になったのです。


こうなると、ただ「凄いグラフィックのゲーム」を作っても差別化ははかれません。ゲーム産業で生き残るため、いろいろなアイディアで勝負するべき時代が到来しつつあるのです。


そんなアイディアの成功例のひとつが、この「デジボク地球防衛軍」シリーズです。グラフィックの精緻さを意図的に下げるという、これまでの進化とは逆の発想でゲームを作り、大成功を収めました。人気シリーズとしての地位を確立した要因である「ゲームバランスの妙」とか「操作の快適さ」はそのままに、コミカルな見た目で差別化をはかったわけですね。


見た目がコミカルになったため、誰でも手を出しやすくなりました。もし、あなたがしばらくゲームから離れていて、すぐに本格的な3Dゲームに復帰するのは気後れするなぁ......と考えているのなら、まずはこのシリーズから挑戦してみてはいかがでしょう?



【ご紹介した作品詳細はこちら】

コンストラクション シミュレーター 3

(英語版の公式サイトはこちら

対応プラットフォーム:Nintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X、Xbox Series S、Xbox One/PC
販売元:アストラゴンエンターテインメント
発売日:2020年4月7日


四角い地球に再びシカク現る!? デジボク地球防衛軍2 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS

対応プラットフォーム:Nintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4
販売元:ディースリー・パブリッシャー
発売日:2024年予定


※記事の情報は2023年11月21日時点のものです。

  • プロフィール画像 野安ゆきお

    【PROFILE】

    野安ゆきお(のやす・ゆきお)
    ゲームジャーナリスト。ファミコン時代からゲームライターとして活動開始。プレイしたゲームの本数は1,000本を超える。ゲーム雑誌記事執筆のほか、100冊を超える攻略本を編集・執筆。現在はフリーランスのゲームジャーナリストとして活動中。子どもの頃、海外を転々とした経歴があるため、異文化になじむのが得意。1968年東京生まれ。

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