【連載】創造する人に役立つ文房具
2021.07.13
菅 未里
モイストキープインクでアイデアをキープ
モノを書くことを覚え始めた幼少期からずっと身近にあるペンやノートなどの文房具。いま改めてその世界を覗き込めば、使い心地、デザイン、遊び心やユニークさなど、多様なアイテムがあり、進化を遂げていることに驚かされます。連載「創造する人に役立つ文房具」では、文具ソムリエール菅未里さんに、数ある文具の中から「使うことでクリエイティブな気持ちになれるアイテム」をご紹介いただきます。
アイデア出しにはサインペン
アイデア出しをするときには、何のペンを使いますか? 私が知る限り、サインペンを使う方が多いようです。
理由はいくつかあるでしょう。さらっとした軽い書き味も魅力ですが、いつでも・どこでも書ける利便性もサインペンの強みなのです。
ボールペンは机の上での筆記を想定されているため、例えばクリップボードなど机以外の場所で書くことは得意ではなく、インクが出にくくなる場合があります。しかし、アイデアは机の前にいるときに限って降ってくるとは限りません。歩いているときや立っているときかもしれません。
そんなときも、サインペンなら大丈夫。インク切れしにくく、キャップを取ったらすぐに書ける「即応性」がサインペンの魅力です。
ただし、サインペンにも弱点があります。それはキャップ式が多いので、外す手間がかかること。空気にさらしておくとペン先が乾いてインクがかすれてしまうため、キャップが必要なサインペンが多いのです。
その弱点を克服したサインペンを、今回はご紹介します。
空気中の水分を集めるインク
ゼブラの「クリッカート」は、非常に珍しいノック式のサインペンです。キャップがありませんから、ノックすればすぐに書き始められます。
気密性の高いシャッターを採用しているわけではありません。シャッターはなく、ペン先は外気に触れています。シャッターがあると構造上ペン軸が太くなりがちなのですが、クリッカートは決してそんなことはありません。
インクが外気に触れても乾かないこの不思議なインクを、ゼブラは「モイストキープインク」と名付けています。インクに吸湿性のある成分を配合することで空気中の水分を集め、乾くことを防ぐ仕組みなのです。
構造が比較的単純だからか、1本110円(!)と価格が非常に安いのもいいですね。
アイデア出しに、思考のビジュアライズに
サインペンの弱点を乗り越えたこの革新的なペンなら、いろいろと便利な使い方ができそうです。
1つは冒頭に書いたように、アイデア出しです。ノック式サインペンなので、思い立ったらすぐに書き出せる瞬発力は、他のペンにはないものです。
しかもカラーラインナップは全36色もあります。これを活かし、アイデアのビジュアライズに使ってはいかがでしょうか。文字にもイラストにも使いやすい絶妙な太さのペン先なので、イラストや図も描きやすいからです。
インクは水性なのですが、異なる色のインク同士を重ねてもにじまない加工がなされています。だから、店頭のポップなど手描きイラストも綺麗に仕上がります。
気密性の高いシャッターがなく、軸の直径が細いため、たくさん持ち歩いてもコンパクトです。実はクリップがないのですが、これもコンパクトにするための工夫でしょう。クリップの代わりに小さな凸(とつ)がありますが、これは机の上から転げ落ちないようにするための回り止めですね。
12色・36色のセットもあるのですが、36色セットのケースはハンドル付きの立派なケースになっており、しかもこのケース、ハンドルを支えに斜めに自立させられる仕組みになっています。魅力的な色がたくさんあるので目移りしてしまう方は、思い切って36色セットをケースごと買ってしまうのも手ですね。
繰り返しになりますが、安価でコンパクト、しかもすぐに書けて、書きやすい。たくさん買って、アイデアを形にするには最適ではないでしょうか。
デジタル機器もいいですが、形のないアイデアを形にする作業には直観的に使える筆記具が向いています。その点では、クリッカートは最高の「アイデア実現ペン」になり得るでしょう。
【ご紹介したアイテム詳細はこちら】
ゼブラ「クリッカート」
※記事の情報は2021年7月13日時点のものです。
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【PROFILE】
菅未里(かん・みさと)
文具ソムリエール。
文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具の専門家として独立。
国内外で商品や売り場の企画・監修、各種メディア出演、メーカーのコンサルティング、執筆などを行っている。日経MJなど連載多数。
著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。
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