いまこそ知っておきたい「バランスの良い食事」の基本

MAY 12, 2020

森由香子さん 管理栄養士〈インタビュー〉 いまこそ知っておきたい「バランスの良い食事」の基本

MAY 12, 2020

森由香子さん 管理栄養士〈インタビュー〉 いまこそ知っておきたい「バランスの良い食事」の基本 テレワークや外出自粛など、多くの人にとって、これまで体験したことのない暮らしがはじまっています。そんななか、いま私たちが心がけるべきこととして専門家が口を揃えるのが「バランスの良い食事と充分な睡眠」です。とはいえ「バランスの良い食事」とあらためて言われても、具体的にどうすればいいのかわからない、という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は栄養に関する著書やテレビ番組での栄養指導も多い管理栄養士の森由香子さんに、いまこそ気をつけたい食事の基本について、アドバイスをしていただきました。

主食、主菜、副菜の3品が基本。

主食、主菜、副菜の3品が基本。

在宅ワークが増えたり、外食がしづらくなったり、お子さんの給食がなくなったりで、3食とも家で食べる家庭が増えていると思います。そこで、この状況のなか、バランスの良い食事をとるために、意識したいことをまとめてみました。

まず、食事の基本は主食、主菜、副菜です。主食とはごはんやパン、めん類などのことで、主に炭水化物。エネルギー源になります。主菜は肉や魚、卵、大豆製品などを主材料にしたメインのおかず。主にたんぱく質や脂質を含みます。主材料というのは一人分50gから100gくらいです。副菜は野菜中心に海藻やきのこなどを使ったおかずで、主にビタミンやミネラル源になります。

常に栄養成分のことを考え、栄養計算をしながら調理するのはめんどうですが、もっと気楽に、主食、主菜、副菜の3品が揃っていればいいんだと思えば、長続きするのではないでしょうか。3品に加えて、乳製品、果物、味噌汁などの汁物を1日1回とれば、さらに栄養バランスは満たされます。

私たちはついつい食べ物がエネルギーになり、からだの組織を作っているというイメージを持つことを忘れがちです。お腹がいっぱいになればいい、美味しければいい、と炭水化物だけを食べたり、反対にダイエットだからと主食を抜いたりすることは、どちらもお勧めできません。あくまで3品が揃っていることを意識しましょう。




1日3食、欠食しない。

1日3食、欠食しない。

これも当たり前のことですがとても大切なこと。朝昼晩、1日3食きちんととる。それによって栄養を効率的に吸収できます。特に抜いてしまいがちな朝食をしっかりとるようにしましょう。

もちろんただ食べればいいということではなく、3食とも、前述したように主食、主菜、副菜の3品の組み合わせになっていることが大切です。たんぱく質を夜にまとめてたくさん食べてもうまく吸収されずに、脂肪になってしまうんですね。朝食も3品というと、難しいと思うかも知れませんが、ごはんには納豆と野菜の味噌汁、パンには目玉焼きとサラダなどを加える習慣をつけてみましょう。なにもぜんぶ手づくりする必要はなくて、コンビニで売っているお惣菜で補ってもいいんです。家で食べることが増えるいまが、食生活を変えるチャンスかもしれません。

夕飯は、起床してから14時間以内に済ませましょう。10時間は完全に絶食時間にするわけです。だらだらと1日中食べていると、食べたものを消化しきれず、脂肪になりやすいと言われているからです。加えて、夕食を食べてから眠るまで3時間、何も食べない時間を作ったほうがいいです。つまり、14時間以内に食べ、3時間待ってから、7時間眠る、というようなスケジュールです。




野菜と果物は7色のバランスをとる。

野菜と果物は7色のバランスをとる。

食事の際は、野菜はつい不足しがちなので、意識して食べるようにしましょう。必要な野菜の量の目安は成人で1回あたり120gと言われています。一人あたり生野菜なら両手に乗るくらい。加熱した野菜なら片手に乗るくらいの量を、1回の食事でとるようにします。

近年、野菜・フルーツは7つの色で分ける「カラーコードによる分類」という考え方が広まっています。これは、多く含まれる植物性化学物質「ファイトケミカル」の種類で分類する考え方で、緑はブロッコリーやキャベツ。黄・緑のグループはホウレンソウやアボカド、橙・黄のグループはミカンや桃、橙は人参やカボチャ、赤・紫はブドウやイチゴ、赤はトマトやスイカ、白・淡緑はセロリやタマネギ、といった分類です。これらをまんべんなくとるようにするわけです。なかでも、特に「色の濃いもの」のグループを選んで食べるようにするといいと言われています。

野菜は、ビタミン、ミネラルの他にも、食物繊維の摂取という観点でも重要です。食物繊維は、腸のなかの善玉菌のエサとなって、腸内環境を改善する働きをします。

果物は食べすぎると糖分のとりすぎになります。目安は1日あたり200グラム。これはだいたいリンゴなら1個、ミカン2個、イチゴ12粒くらいです。




20分かけて食事。ゆっくり噛んで食べる。

20分かけて食事。ゆっくり噛んで食べる。

食事はゆっくりとよく噛んで食べましょう。1食にかける時間は20分を目安にします。20分というと短いような気がしますが、実際に時間を計ってみると意外と長くて、けっこうゆっくりだと感じるはずです。

ただ、料理を1品ずつ順番に出されるような場合は、だらだらと食べ続けてしまうかも知れません。そうすると、食べすぎになりがちです。量が多すぎると胃腸に負担がかかります。食事をするとインシュリンが通常より追加で出るのですが、だらだら食べているとその状態がずっと続くということになり、すい臓にも負担がかかってくると思います。

特に、お酒を飲みながら食べるような場合は食事の時間が長く、量も多くなりがちなので、気をつけましょう。




余分な糖質や脂質をとりすぎない。

余分な糖質や脂質をとりすぎない。

ごはんやパン、めん類などの糖質は、食べすぎると余分な脂肪になってしまいます。ごはんの場合、成人なら毎食150gくらいが目安で、これはお茶碗1杯くらいです。コンビニのおにぎりがごはんだけで110gくらいなので、2つだと少し多過ぎかも知れません。

肉や魚の中にもともと入っている油、野菜炒めの油、サラダのドレッシングなど、脂質は、何かしらに必ず入っているので、気をつけて量を減らすようにします。調理するときの油は、1日に大さじ1杯から2杯くらいが目安。油を使った料理は1日1品まで、とよく言われます。

ついとりすぎてしまいがちな糖質や脂質ですが、気をつけたいのは間食です。間食をするなら、お菓子ではなく、チーズや卵、果物などにしたいところ。糖質や脂質ではなく、不足しがちなたんぱく質やビタミンを補うわけです。また清涼飲料水などには思っているよりたくさんの糖分が含まれているので、こちらも気をつけましょう。なるべくノンシュガーやお茶に換えるなどしたほうがいいですね。コーヒーや紅茶にも砂糖を入れるかもしれませんが、1日あたり推奨されている量は小さじ1杯です。とても少なく感じるかもしれませんが、それが適切な量なんです。

よく、人が生涯に使えるインシュリンの量は決まっているなどと言われます。自分のインシュリンを節約するようなイメージで、糖分を減らしてみるといいかもしれません。




塩分は1日あたり6g未満。

塩分は1日あたり6g未満。

日本人は塩分の3分の2を調味料からとっていると言われます。ですから調理の時、特に塩をかける必要はないと思います。塩分のとりすぎで真っ先に問題になるのは、高血圧です。高血圧の予防のために推奨されている塩分の量は1日6g未満、つまり小さじ1杯未満。とりすぎると血管や心臓にも影響が出ると言われます。

また、からだのなかの塩分量が高くなりすぎると、脳が指令を出して、その塩分を外に出そうとして腎臓が働きます。毎回食事のたびに腎臓を酷使すると負担がかかって、腎臓が弱ってきてしまいます。




お酒は1日1合程度に抑える。

お酒は1日1合程度に抑える。

お酒をあまり飲みすぎると、それを代謝するために、エネルギーもビタミンも使います。

日本酒なら1日1合くらいなら、炭水化物の代わりとして考えていいとも言われています。それを超えると、余分なエネルギーとなって、脂肪になりやすくなります。お酒だけでなく、おつまみの食べすぎにも注意が必要です。

また飲みすぎは肝臓の細胞を傷つけて、さまざまな病気のもとにもなります。肝臓はからだの化学工場と言われるくらい大切な働きをしていますので、肝臓が傷つくと、いろいろなところにひずみが出ます。肝臓の細胞を元気な状態に保つため、お酒は控えめにしてみましょう。


◆ ◆ ◆ ◆



「バランスの良い食事」の基本についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。健康なからだを作ってくれるのは、まず食事。そして食事は楽しんで食べることが大切です。バランスの良い食事を楽しみながら、みんなで「ステイホーム」を頑張りましょう。



老けない人は何を食べているのか



おやつを食べてやせ体質に!間食ダイエット


※記事の情報は2020年5月12日時点のものです。

  • プロフィール画像 森由香子さん 管理栄養士〈インタビュー〉

    【PROFILE】

    森 由香子(もり ゆかこ)
    管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。 クリニックにて栄養指導、食事記録の栄養分析、食事管理業務に従事。フランス料理の三國清三シェフとともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場で食事からのアンチエイジングを提唱している。「老けない人は何を食べているのか」「病気にならない人は何を食べているのか」「体にいい『食べ合わせ』」「太らない人の賢い食べ方」「老けない人の献立レシピ」「おやつを食べてやせ体質に!間食ダイエット」など著書多数。
    ⇒管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士|森 由香子 公式サイト https://moriyukako.com/

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