食
2021.02.12
アクティオノート編集部
秋田の伝統食「いぶりがっこ」を革新 | いぶりがっことチーズのオイル漬
秋田と言えば、きりたんぽ鍋、稲庭うどん、比内地鶏。さらに秋田は日本有数の米どころでもあり、おいしいお米、そして名酒も目白押しと、おいしい料理や食材が盛りだくさん。そんな秋田の「旨いもん」の中から今回は「いぶりがっこ」を取り上げてみました。古くからの伝統的な保存食であるいぶりがっこですが、最近は新たな魅力を加えた「いぶりがっことチーズのオイル漬」なども登場しています。いぶりがっこの伝統と革新を現地に赴いて探ってみました。
秋田の伝統食「いぶりがっこ」とは
そもそも「いぶりがっこ」とはなんでしょうか? 「がっこ」とは秋田の方言で漬け物のこと。「いぶりがっこ」とはいぶったがっこ。主に秋田県南部地方で作られていた保存食で、大根を囲炉裏に吊るしていぶったものを漬け込んだもの。厳しい気候風土の中で育まれてきた秋田ならではの冬の常備食です。ではなぜ大根をいぶったのか? それは秋田の県南地方は根雪の期間が長いため、漬け物にするための大根を外に干すには日照時間が少ないし、外に干すと凍ってしまうため。それで囲炉裏のある室内でいぶす保存方法が編み出されたと言われています。
いぶりがっこは、いうなればスモークされたたくあん。上の写真のようにたくあんに似ていますが、薫製(くんせい)にすることでコクが深くて味わいがあり、カリカリ、コリコリとした歯応えのある食感も楽しめます。
秋田のおいしい白米と一緒に食べてもよし、日本酒との相性もよし。さらにスモーキーな味わいがワインやウイスキーとの相性も良いと言われています。
いぶりがっこの食べ方としてポピュラーなのものの1つで、最近は居酒屋のメニューでも見かけることが多いのが「いぶりがっことチーズ」の組み合わせ。秋田市内の居酒屋では、いぶりがっこの上に溶けるタイプのチーズをのせて炙(あぶ)ったおつまみもあります。
農林水産省:地理的表示(GI)保護制度 登録番号第79号
GI保護制度は、地域に根ざした産品の名称を保護する制度で、この制度に登録され、GIの基準を満たしたものだけが、原則「いぶりがっこ」の表示が可能。
GIいぶりがっこの主な基準は以下
・秋田県いぶりがっこ振興協議会の会員(秋田県漬物協同組合、秋田いぶりがっこ協同組合、横手市いぶりがっこ活性化協議会 傘下の生産者)が生産している。
・生産地は秋田県内
・国内産の大根の使用
・ぬか床に40日以上漬け込む
・着色料(食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ)、保存料(ソルビン酸)、甘味料(サッカリン)などの指定添加物を使用していない
いぶりがっこの作り方|しらかみファーマーズで製造現場を見学
「いぶりがっこ」はどのように作られるのでしょうか。白神山地の麓、北秋田市の「株式会社しらかみファーマーズ」にお邪魔し、製造工程を見学しながら、しらかみファーマーズ営農部長 鈴木信行さんにお話をうかがいました。
――いぶりがっこは秋田県では誰もが食べるソウルフード的な存在なのですか。
鈴木さん:もともといぶりがっこは秋田県の県南のもので、昔は秋田の北部では作っていなかったそうです。今では秋田全県で食べられていて、秋田県民にとっては食卓に普通にある漬物という感覚です。
――しらかみファーマーズの「白神いぶりがっこ」の特徴を教えてください。
鈴木さん:弊社のいぶりがっこ「白神いぶりがっこ」は2016年から販売を開始しました。自社の農園で育てた大根を使い、スモーク、漬け込み、パッケージまでを自社の製造所で一貫して行っています。
――製造過程を教えてください。
鈴木さん:まず大根ですが、いぶりがっこでは主に漬物用の品種である「香漬の助」と「いぶりおばこ」という2種類が使われます。白神いぶりがっこは香漬の助という品種を使っています。作った大根は10月に収穫し、洗浄していぶし小屋に吊るします。
――どうやって大根をいぶすのですか。
鈴木さん:紐を使っていぶし小屋に括り付けて、桜の木のチップを使っていぶします。りんごの木も多少は混ぜますが、これらはりんご農家さんのもう使えなくなった古い枝や捨ててしまう枝を使っています。いぶしは大体3日ぐらいかけて4日目に終了。いぶしの間は1時間おきに火の様子を見て加減を調整します。
――もうもうたる煙でいぶすのですか。
鈴木さん:いえ。煙の中にただ突っ込んでおくのではなく、できるだけ煙を循環させて優しくいぶす感じでやっています。いぶしが強いと大根の水分が抜け過ぎて、細くて干からびた状態になってしまいます。それを漬けると歯ごたえが強過ぎて噛み切りにくい漬け物になってしまいます。昔ながらのいぶりがっこはそういうタイプが多かったんですけど、うちのいぶりがっこは歯切れの良さを目指してます。
――そのあたりが「白神いぶりがっこ」のこだわりですね。ほかにどんなこだわりがありますか。
鈴木さん:白神いぶりがっこは、完全無添加が最大の特徴です。漬け込みもお酒、砂糖、米ぬか、お酢、塩、唐辛子。それだけ。自然のものだけで余計な添加物は入れません。せっかく自分の畑で作った大根ですから、本物を作りたいんです。
――どのくらい漬け込むのですか。
鈴木さん:漬けは40日以上です。その間漬かり具合を調整するために重石の調整を行います。今はそれが終わりつつあって、漬け樽から取り出して洗浄してパッケージングしている段階です。
――本日はご多忙中、製造工程を見学させていただきありがとうございました。
いぶりがっこの革新|「いぶりがっことチーズのオイル漬」
いぶりがっこの持ち味を生かしながら、チーズと組み合わせてオリーブオイルで漬けたものが「いぶりがっことチーズのオイル漬」。秋田のお土産として人気を集めているだけでなく、東京の高級食品店や、雑貨のセレクトショップなどでもピックアップされて販売されるなどグルメから注目されています。また「2020年buyer's room (バイヤーズルーム:旧むらおこし特産品コンテスト)」では、最高賞にあたる「経済産業大臣賞」を受賞。その「いぶりがっことチーズのオイル漬」の開発の経緯などについて、秋田県八峰町の「オイル漬け専門店ノルテカルタ」代表の岡本大介さん、そして製品企画に携わった菅原美里さんにインタビューしました。
――店名のノルテカルタとはどういう意味ですか。
岡本さん:ノルテがスペイン語で「北」でカルタが「紙」。カルタ遊びのカルタですね。北からの手紙という意味で、北のエリアから日本中においしいものを届けたいという気持ちを込めています。
――「オイル漬け専門店」というのも珍しいですね。
岡本さん:学生時代からアヒージョやオイル漬けが好きでいろいろ食べていたんですが、旨いものもあればそうでもないものも多くて、どうしてかなと考えてみると、オイル漬けって、ほとんどが素材ありきの製品なんです。牡蛎屋さんがオイル漬けを作るとか。でも薫製屋さんやジャム屋さんってあるじゃないですか。
彼らは加工がメインですよね。それならオイル漬けでもいけるんじゃないかと思い、「オイル漬け専門店」を立ち上げました。アーティストの聖飢魔II風に言えば「お前もオイル漬けにしてやろうか!」って感じです(笑)。
――「いぶりがっことチーズのオイル漬」はどういった経緯で開発されたのですか。
岡本さん:ノルテカルタではいぶりがっこ以前に「あわびのアヒージョ」や地元の八峰町で採れたしいたけを使った「しいたけバーニャカウダ」「しいたけタプナード」「しいたけオイル漬」といった製品を作っていました。いぶりがっこもぜひ挑戦したいと思っていて、いぶりがっこを加工した商品の先駆者として「いぶりがっこのタルタルソース」があり、それを参考にしつつ、チーズと組み合わせたオイル漬けを考えました。
――「いぶりがっことチーズのオイル漬」の開発は菅原さんがされたのですか。
菅原さん:はい。「いぶりがっことチーズで、オイル漬けをやりたい」と岡本から指示があったんです。でもそんな製品は世の中にありませんでしたから、参考にできるものもなく、とりあえず最初はいぶりがっこをオリーブオイルに入れてみたらどうなるんだろう、というところから始めました。入れるだけではやっぱり全然ダメなので、そこから試作を重ねていきました。いぶりがっことチーズの組み合わせは定番ですが、そこに秋田の「しょっつる」、そして私は発酵食品が好きで発酵食スペシャリストの資格を持っているので、それに秋田の塩麹などの発酵調味料を組み合わせて製品を開発していきました。
――「いぶりがっことチーズのオイル漬」は瓶もとてもきれいですね。
岡本さん:味だけでなくデザインも含めて、「いぶりがっことチーズのオイル漬」は女性をターゲットにしています。地方の物産の場合、あまりターゲットという考え方をしないようです。でも、私は前職がオーディオメーカーで営業や販促をしていましたので、お客さまのターゲットや属性、そして製品のデザイン性は大切だと思っています。
菅原さん:縦長の瓶に入れる予定でしたから、いぶりがっこはスライスではなくコロッとしたダイスカットにして、チーズも同じ形にしています。さらにローリエも入れてオリーブイオルのハーバリウムのような、見ても楽しいきれいな小瓶に仕上げました。
――このたび「いぶりがっことチーズのオイル漬」が「2020年buyer's room」で経済産業大臣賞を受賞されました。どの点が評価されたとお考えですか。
岡本さん:いぶりがっこ単独ではなくチーズと組み合わせたことで、ネーミングだけでもおいしさをイメージさせます。そこにオリーブオイルがかかっていたら絶対おいしいだろうと、誰もが想像できるキャッチーな組み合わせが良かったのだと思います。実際、製品を作ったばかりの時、いつもお世話になっているお店に、「こんなん作ってみました」という感じで持って行ったら店員さんが「あるだけ全部持ってきて」と言っていただいたぐらい、第一印象のインパクトが強かったようです。
菅原さん:それと透き通ったオイルで瓶がキラキラしていて直感的にきれい! と思えるデザイン性があったのも良かったと思います。製造現場でもオリーブオイルを入れると急にオリーブオイルの独特な透明感が出て、瓶がとてもきれいになるんですよ。実際の製造では1瓶ずつレイアウトを考えて丁寧に手順通り入れていかなくてはいけないので、かなり手間がかかって大変なんですけどね。
「いぶりがっことチーズのオイル漬」のおいしい食べ方
ノルテカルタ岡本さんに、「いぶりがっことチーズのオイル漬」のおいしい食べ方と合わせるお酒についても聞いてみました。
――「いぶりがっことチーズのオイル漬」はどんな食べ方がおススメですか。
岡本さん:白ワインを飲みながら、バケットにのせて食べるのがおいしいですね。特にバケットにスライスしたトマトをのせて、その上に「いぶりがっことチーズのオイル漬」をのせてオーブンで少し焼くと、トマトの旨みがぐっと出て、さらにおいしくなります。いぶりがっこという和のイメージがあるのでバケットにのせて食べるという提案は、新鮮で面白いのではないでしょうか。
岡本さん:その他にはサラダのトッピングとしても。オリーブオイル自体をドレッシングのようにかけて使うのもいいですね。パスタに使ってもおいしいですよ。人によってはおにぎりの中に具として入れる、というのもアリです。チーズとおにぎりというのは意外に合いますし、ご飯にかけて食べるという人もいます。
――お酒に合わせるとしたら?
岡本さん:白ワインが一番合うと思いますね。もちろん日本酒との相性も最高です。ノルテカルタがある八峰町には「山本」というお酒があるんですけど、八峰町つながりで是非合わせてみてほしいですね。
いぶりがっこが買えるお店|お土産で、東京で、そして通販で!
最後に、いぶりがっこや「いぶりがっことチーズのオイル漬」はどこで購入できるのかをご紹介します。
●秋田県産品プラザ「あきたの」(秋田市)
秋田市、秋田駅にほど近い秋田県の県産品を集めた「あきたの」。多種多様ないぶりがっこはもちろん、「いぶりがっことチーズのオイル漬」、さらに秋田の名酒の数々、きりたんぽ鍋なども購入できます。お土産にぴったり!
秋田県産品プラザ「あきたの」
秋田県秋田市中通2-3-8 アトリオンB1F
●秋田ふるさと館(東京都有楽町)
いぶりがっこは東京でも購入できます。東京・有楽町交通会館1階にある秋田ふるさと館には秋田県産品がずらりと勢ぞろい。
秋田ふるさと館(東京都有楽町)
東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館1F
●HOZON
東京都江東区の清澄白河にある保存食専門店。ジャムや味噌漬け、オイル漬けなど全国の保存食がそろっています。「いぶりがっことチーズのオイル漬」はここでも購入可能。
東京都江東区三好2丁目13-3 HOZON
●katakana - カタカナ
日本のカッコイイを集めたお土産屋さん。素敵なストールやバッグなどと並んで「いぶりがっことチーズのオイル漬」も販売されています。
東京都世田谷区奥沢5-20-21 第一ワチビル1F
●Fridge
東京都世田谷区の上町にある古着屋兼ライフスタイルショップで、「いぶりがっことチーズのオイル漬」を販売中です。
東京都世田谷区世田谷1丁目22-5
http://central.fridgesetagaya.com
●ノルテカルタwebshop
ノルテカルタのオンラインショップ。「いぶりがっことチーズのオイル漬」を通販で購入するならこちらで。
秋田県内のアクティオ営業所
下記の営業所・出張所でお待ちしております。お気軽にご用命ください。
【秋田営業所】
住所:秋田県秋田市寺内字神屋敷295-56
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000502.html
【秋田南営業所】
住所:秋田県秋田市御所野下堤4-1-2
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000505.html
【大館営業所】
住所:秋田県大館市釈迦内字山神台16-6
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000508.html
【大曲営業所】
住所:秋田県大仙市下深井字板口端32-1
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000503.html
【象潟営業所】
住所:秋田県にかほ市象潟町西中野沢字浜ノ田19-1
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000512.html
【能代営業所】
住所:秋田県能代市五雲岱16番地6
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000519.html
【本荘営業所】
住所:秋田県由利本荘市東梵天6
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000511.html
【湯沢営業所】
住所:秋田県湯沢市桜通り6-6
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000513.html
【横手営業所】
住所:秋田県横手市柳田字笹崎156-1
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000504.html
【東成瀬出張所】
住所:秋田県雄勝郡東成瀬村岩井川字川通15-3
https://www.aktio.co.jp/network/prefectures/akita/1000522.html
※記事の情報は2021年2月12日時点のものです。
※追記:2023年10月11日に再編集しました。
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