
【連載】Beaches! ビーチバレーと私
2025.12.16
西堀健実
海外ツアー編<南アフリカ>リズミカルでカラフルな国で、マインドセットの大切さに気づいた|西堀健実【連載⑩】
ビーチバレー選手の西堀健実さんが、バレーボールとビーチバレーにかけた青春の日々を綴ります。海外ツアー編5回目は南アフリカ共和国。あふれるリズムと色の思い出とともに、自身の試合を振り返っていただきました。
見ているだけで楽しくなる、リズムが溶け込む国民性
今回ご紹介するのは、南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)です。この国は私のビーチバレー人生の中でも特別な思い出がある場所です。それではスタート。
南アフリカと言えば、皆さんどんなイメージがありますか? 喜望峰やテーブルマウンテンといった雄大な自然をイメージする方が多いのではないでしょうか。南アフリカは試合で4回ほど訪れていて、ケープタウン、ダーバン、ブルームフォンテーンという都市へ行きました。
それぞれ、とても素敵な場所で日本からの距離も忘れてしまうほど。11月前後に行くことが多くて、朝晩は寒いくらいで、昼間は日が差せばとても過ごしやすい気候です。
町では、いたるところで楽器の演奏や歌などのパフォーマンスを見ることができます。とてもリズミカルなパフォーマンスで、リズム感が抜群な南アフリカの人たちにいちいち感動して、見入ってしまいます。
南アフリカでは、音楽は伝統的に人々のコミュニケーション手段としての役割を担ってきたという歴史があり、日常生活の中でも音楽は切り離せないものだということを知りました。まさに、流れる血の中に、リズムがしみ込んでいるという感じがします。
言葉が通じなくても、見ているこちらも楽しくなって、踊りだしたくなるような感覚になるのは、そういう歴史が関係していると思わずにはいられませんでした。町中にあふれる色もとてもカラフルで、陽気な国民性を表しているようでした。
町中で見られるリズミカルなパフォーマンス
露店に並んだ作品もカラフル
テーブルマウンテンの名前の由来がよくわかる場所から
テーブルマウンテンの頂上までロープウェイで登ることができます
テーブルマウンテンの頂上から眺める景色。絶景です
野生のアザラシと遭遇
棄権も考えた大会で、準優勝という結果以上の価値をもたらした経験
先に、南アフリカは特別な思い出があると書いたのですが、その思い出というのは、忘れもしない2014年、「FIVBマンガウングOPEN」(ブルームフォンテーン)で、銀メダルを獲得したことです。ビーチバレー日本勢では、14年ぶりの国際大会のメダル獲得でした。
帰国前からこの結果に沢山の反響をいただき、帰国した日、新幹線の電光掲示版に結果が流れてきたのを見てとても嬉しかったことを覚えています。優勝することは叶いませんでしたが、それまでの試合で感じたことのない感覚をつかむことができました。
「自分でも、世界と戦える」
ビーチバレーの世界はとてもシンプルで、一目置かれると、強い相手と練習ができて、自分たちが強くなるために使える手段も増えていきます。この大会から海外の選手の、自分たちへの評価も変わった気がしました。
現地の大会役員たちと。とてもフレンドリーでした
実はこの大会、体調は万全とはほど遠く、大会直前まで練習ができないくらい最悪でした。棄権も考えるほど、ほとんど練習ができない状態でしたが、「今の状態でできることを全力で」、ただそれだけで挑みました。むしろ、それしかできない状態でした。
でも不思議と徐々に体が動くようになり、いわゆる"ゾーンに入る"という状況に。攻撃が面白いように決まって、相手がどこに打ってくるのか面白いように分かって、試合をこなすごとに、自分の中に自信が満ちているのを感じました。
勝ち上がるにつれて相手は強くなっていき、体は疲労しているはずなのに、それとは反比例してどんどん感覚が良くなっていきました。万全な状態で臨んだ試合ではなかったのですが、なぜいいパフォーマンスが出せたのか。何度か、自分自身で分析してみました。
一番は、「今の状態でできることを全力で」というキーワードがよかったのだと思いました。ほどよく力が抜け、いろんなことが好転したのかなと思っています。今の状態でできることを実行するのが精いっぱいで、いつもは考えてしまう、勝たなきゃとか、さまざまな不安感を考える余裕もなかったのです。
それまでの、積み重ねがあったことは大前提ですが、マインドがパフォーマンスを大きく左右するということが私の中で証明された大会でした。毎回、体調を崩して試合に入るというのは非現実的ですが(笑)。逆に自分やチーム、パートナーの良さまで半減させてしまうマインドもあるのですよね。
試合に臨む時の自分自身のマインドとの向き合い方、何にフォーカスすると好転するのか、それを考える上で、今でもこの大会での経験は大切にしています。こんな感覚になれるなら、マインドセットの工夫は私の重要課題で追求すべきことなのです。
こういう経験がなかったら、目を向けることもなかった部分だと思います。練習が全て、技術が全てということだけに執着してしまっていたと思います。マインドセットと技術力向上は、比例している。銀メダル獲得、それと同等の価値のある経験を得たのでした。
以上が、私の南アフリカでのお話でした。今年より連載の機会をいただき、拙い内容でしたが温かくご覧ただいた皆さまには心より感謝申し上げます。2025年の連載は今回で最後になります。来年も、私の体験談を面白おかしく書いていきたいと思いますので、お付き合いいただけたらうれしいです。
※記事の情報は2025年12月16日時点のものです。
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【PROFILE】
西堀健実(にしぼり・たけみ)
1981年生まれ、長野県中野市出身。身長171㎝。
所属:biid株式会社
経歴:小布施スポーツ少年団→裾花中学校→古川学園高等学校
得意なプレー:相手選手の観察
好きな言葉:一意専心
【2023年国内大会】
・ジャパンビーチバレーボールツアー2023
第2戦平塚大会 ガラナ・アンタルチカ杯 3位
第3戦渋谷大会 3位
・ジャパンビーチバレーボールツアー2023サテライト
第1戦横浜大会 3位
【2023年国際大会】
・アジアツアー
サラミオープン9位
・FIVB Beach Pro Tour 2023
Futures/Satun(サトゥーン) 9位
Futures/Seoul(ソウル) 5位
Futures/Geelong(ジーロング) 5位
【2024年国内大会】
ジャパンビーチバレーボールツアー2024
第8戦JBG須磨大会 3位
第9戦マイナビ松山大会旭食品杯 3位
【2024国際大会】
・アジアツアー
ヌバリオープン 9位
天津オープン 9位
ヌバリチャンピオンシップ 19位
・FIVB Beach Pro Tour 2024
Futures/Mollymook 9位
Futures/Coolangatta 9位
Futures/NUVALI 3位
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