ビジネスにおける創造性とは

MAY 14, 2019

石見幸三 ビジネスにおける創造性とは

MAY 14, 2019

石見幸三 ビジネスにおける創造性とは 企業の人材育成において注目を集める「コーチング」。現代人のマインドを整えるためのコーチングとは何か。コーチングができる人、できない人。コーチングが効く人、効かない人。現場のエピソードを盛り込んでコーチングの最前線を紹介します。

「創造」は誰しもに与えられたもの。

石見幸三

社員一人ひとりの創造性を伸ばしたい、社内イノベーションを起こしたい、クライアント(経営者)からの相談の中に、こうしたリクエストが入ることは珍しくありません。
つまり「社員一人ひとりの創造性を伸ばして、イノベーションを起こす」こと...言葉にすると、なんだか仰々しいというか、ちょっとわかりづらいですよね。実際これがどういうことなのか、今回はビジネスにおける創造性とはなにか、という部分からひも解いて見ていきたいと思います。

まず「創造」あるいは「創造力」というワードだけを見てみましょう。「創造」というとなにかクリエイターやアーティスト、発明家、起業家、誰も見たことのないような突飛なもの、アイデア、無から有を生み出すといった、特別な才能を持っている一部の人たちだけのものと思いがちですが、まったくそんなことはありません。

「創造」はもっとずっと開かれた言葉です。日常生活をもっと豊かにするとか、楽しくするための行いであり、子どもから老人まで、年齢性別問わず誰しもに与えられたものです。それを踏まえて、私はビジネスにおける創造とは「第3の道を作る」ことだと考えています。



ビジネスにおける創造性とは。

例えばビジネスの現場では、AとBの両方を入れたシステムを作りたいけれど、Aを入れたらBが機能しない、Bを入れたらAが機能しない、どちらか一方しか生かせない(トレードオフになる)というケースがよくあると思います。

でもどうしてもAとB両方とも機能させたものを作りたい、となった場合、両方が生かせるCというシステムを作るという答えに行き着く。これが「第3の道」であり、それを実現すること、またはその過程を私は「創造」とか「創造力」と呼んでいます。
例で「システム」にしていますが、ここを「企画」や「デザイン」「プロダクト」にしても通じますし、さまざまなビジネスシーンで適用できると思います。

コーチとして現場で見ていると、一つひとつのアイデアややり方は特に新しくないけれど、組合せや組合せ方によってうまくいく事例が圧倒的に多いです。さっきの例でいえば、AとBというのはもともとあるもの、特に目新しいものではないんです。でもそれを裏返して合わせたリ、俯瞰してみたり、こねくり回したりすることでCというシステムを作った、それは紛れもなく「創造」です。Cというシステムは昨日まで存在していなかったんですから。

つまりビジネスの現場における創造性というのは、まったく新しいものをイチから作るということではなく、アイデアや知恵を絞りながら、既存のものに手を加えて形を変えることで、行き詰まった難しい局面を打開したり、解決に導いたり、プレゼンで競合に勝って仕事を受注したり、何らかの成果をもたらすということを意味します。



創造性を邪魔するもの。

ビジネスの現場で創造性を生かす=行き詰まりを打開して解決に導く、という視点からモノゴトを見ると、今までとまったく同じやり方や同じ思考で取り組むのではなかなかうまくいきません。同じところでぐるぐると悩んで、抜け出せないんですね。

行き詰まったとき、うまくいかないとき、その要因が、技術や知識が足りないという能力的な問題なのか、予算や時間がないといった物理的な問題なのか、もしくは会社のルールや価値観といった環境的なことが問題なのか、そのすべてが問題なのか...など「何がストッパーになって自分の行動や思考を遮っているのか」について気づくのが最初の大事なポイントです。

コーチングではそういった要因を一つひとつ整理していくのですが、今までの経験上、普段から自分が「常識」と思っていること(思い込んでいること)が、ストッパーになって思考や行動をブロックしてしまう例が一番多いです。こうするのが常識だから、当たり前だから...という考え方ですね。

常識の種類には、社会通念的なことから、その組織の中だけで通じる常識など、さまざまなものがあります。もちろん、秩序や常識(と思われていること)、組織の歴史を重んじることが悪いのではなく、否定するものでもありません。ただ、そういう常識や価値観を大事にしている人の思考は変わりづらいし、創造性は発揮しづらいという事実は事実としてあります。

ただ、そんな人でも(変わりたいと思えば)その人なりの受け入れ方やスピードで、徐々に変わることができます。例えば、私が「会社からは絶対ダメと言われるかもしれないけど、この問題を打開するために思い浮かぶアイデアはありますか?」というような質問をすると、その答えを持っていたりする。「絶対ダメと言われる」というストッパーがあるせいで、言葉にできなかったり、考えても無駄という結論に到達し、そこから思考が進まなくなっているんですね。

ですからまずそのストッパーが何かを自覚してもらって、「ダメと言わせないようにする方法はないか」、「ダメと言われないように、他部署にも協力を募ってアプローチを変えてみよう」など、いろいろやり方がありえる、ということに気づいて、考えてもらうようにしています。



イノベーションは起こるべくして起こる。

前述したように創造力というのは誰もが持っているものです。子どもの世界であれば、セミとカブトムシの両方を効率よく捕獲するにはどうすればいいか、といったことを解決するにもその力が必要です。他にも、仕事と家庭をどう両立させるかといったワークライフバランス、遊びや趣味の世界でも同じで、自分の持っている創造性を発揮することで、生活が豊かになったり、楽しくなったり。それはビジネスの世界でも同じなんですね。

ただビジネスの現場では、それをどう生かしていいかわからなかったり、そもそも持っていることに気づいていない人も多いのです。だからビジネスコーチングの現場では、じっくり話をすることでまずは自分に創造力があることを自覚してもらいます。そうすると最初は無理だと思った局面も突破できるようになるんです。


創造性を発揮してアイデアを実現できることに、やりがいや楽しさを見出せれば、自分の考えを積極的に発言できるようになるし、自信にも繋がります。こうして組織の中にいる一人ひとりが自分の持っている創造力に気づいて、発揮できるようになれば、イノベーションは起こるべくして起こるんです。
だから冒頭の「社員一人ひとりの創造性を伸ばして、イノベーションを起こす」というのは、創造性を定義し、一人ひとりにその可能性に気づいてもらうことがスタートになります。


※記事の情報は2019年5月14日時点のものです。

  • プロフィール画像 石見幸三

    【PROFILE】

    石見幸三(いわみ・こうぞう)

    株式会社コーチングファームジャパン 代表取締役
    http://saikyou-team.com/

    <専門分野>
    ビジネスコーチング、経営者・エグゼクティブコーチング
    チームビルディング、チームコーチング(ファシリテーション)
    事業仲介(ファシリテーション)リーダーシップ

    <資格>
    ギャラップ社認定ストレングスコーチ
    ハーマン・インターナショナル認定ハーマンモデル・ファシリテーター
    米国NLP(TM)協会認定NLPマスタープラクティショナー

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