自分たちの意思で自由にできる競技ゆえの難しさ。

スポーツ

吉田亜衣さん「ビーチバレースタイル」編集長〈インタビュー〉

自分たちの意思で自由にできる競技ゆえの難しさ。

ビーチバレー界を長年見つめ続け、その魅力を紹介し、サポートしてきた雑誌「ビーチバレースタイル」編集長の吉田亜衣さんへのインタビュー。【Vol.2】では、ビーチバレーでペアを組む難しさや、吉田さんのお仕事、これからの目標などについてうかがいます。

遠距離、週末婚、元サヤ...ビーチバレーのペア事情。

遠距離、週末婚、元サヤ...ビーチバレーのペア事情。
――前回からの続きで、選手同士の関係の部分をもう少し知りたいのですが、ペアってどうやって組むんですか?

それが面白いんですよ。ただ仲がいいだけじゃだめだし、自分がその人と組みたいと思っていても振られることもあります。普段仲がよくても、何も言わず水面下で違う人にアプローチに動いていたりとか、人間性がでます(笑)。ただ、ペアが決まる時は上位ランクから決まっていきます。上が決まらないと、下が決まらないので。

――でもランク1位と2位の組み合わせがいいとは限らないですよね?

そうですね、相性もあるし、ブロッカーとレシーバーという役割もありますからね。ペアの組み合わせは、遠距離、週末婚、元サヤとか、活動スタイルによっていろいろな言われ方をするんです(笑)。2人がうまくいかなくて険悪なムードになった時に、監督やコーチが間に入って仲裁したり調整してくれるとは限らないので、メンタルの強さがないとなかなか継続するのは厳しいですね。

――確かにビーチバレーってコートサイドやベンチに監督やコーチもいないし、ずっと2人ですよね。それもすごいなと思うんです。

そこに難しさがありますね。コーチとか監督の言いなりにやるのではなくて、自分たちで考えなきゃいけない。でも逆を言えば、2人の意思や考えだけで、自由にできる競技なんですよ。他の競技、野球にしてもサッカーにしても、監督の采配って大きいと思うんですけど、ビーチバレーにはそれがない。

――プレイヤー一人ひとりにクリエイティビティ、創造力が必要ですね。

そうなんです。だからこれからの時代には合ってますよね。若い世代、10代の成長期に、主体性や人と共同作業する力を育てるのに最適な競技なんですよ。今年からついに国体の少年種目でもビーチバレーがはじまるんです。ビーチバレーをとりまく環境も大きな転換期に来ていると思っています。

――国体って各県から必ず出ることになるので、選手も数多く育てないといけないのではないですか?

そうです。あとコートを作ったりといった環境面も整えなくてはいけないですね。まだコートがない県もありますし。競技の普及という面で、まだまだやるべきことはたくさんあると思います。




今どき雑誌なんて、って思うけどやめられない。

今どき雑誌なんて、って思うけどやめられない。
――雑誌「ビーチバレースタイル」の編集長としてはどうですか? 今後内容が変わってきたりしますか?

そうですね。正直さっき言った転換期というのは雑誌作りにおいても言えることなんですよね。マーケットが変わってきているのと、インドアも似た傾向があると思っていますが、ビーチバレー界もスター選手が育っていないのもあって、ファン向けの企画を作るのがだんだん難しくなってきています。雑誌を作るのは好きなので、読者の方に求められている以上はやっていきたいんですけど、雑誌以外のメディアもいろいろ出てきているので、内容も、伝えるカタチもどうしようか悩んでいるところではあります。

――「ビーチバレースタイル」の編集で、実際に吉田さんがやっているのはどんなお仕事ですか?

「ビーチバレースタイル」は、昔は年4回出していましたが、ここ7年くらいは年2回の発行です。一部の記事はライターさんに頼むし、写真やデザインもプロに任せますが、企画構成から編集、印刷管理まで基本は1人でやっています。雑誌は印刷代を捻出するのがやっぱり大変です。メディアとしてはネットのほうがお金がかからないし、早いですよね。

――でも「ビーチバレースタイル」は表紙の写真も素晴らしくて、企画も記事も面白いと思いました。作っていて楽しいなと思うのはどんな時ですか?

ありがとうございます。企画を考えたり、カメラマンやデザイナー、プロのクリエイターたちと話して作り上げる時が一番楽しいですね。ほんと今どき雑誌なんて、って思うんですけどね。やっぱりゲラがあがってきた時に、一番初めの読者になれるあの時の感動、その時伝えたいものが封じ込められていて、一生残るんですよ。だから苦しいけど、いったいいつやめるんだよって思うんですけど、やめられないなって(笑)。

――選手たちから見て、吉田さんの活動はどう思われているんでしょうか?

いやー、私めちゃくちゃ辛口なので、恐れられているのではないかと思います(苦笑)。最近よく思うのは、自主性が重んじられる競技の特性上、自己管理と自由度のバランスが悪いことが、今の日本の競技レベルにつながっているのではないかと思っています。環境面でも自由度の高い競技だからといって、チームとして勝つためには協調性も必要ですし、そこに甘えがあってはいけない。つらいことも苦しいこともしっかり自分と向き合って自己管理していかないと、結果にもつながっていきません。

――そうやって批判してくれる人がいないと、客観的に見れなくなってしまいますね。

だからこそ現場に行かなければいけないと思っていて、じゃなきゃ言えないじゃないですか。だからずっと現場取材だけは続けています。

――やっぱりビーチバレーが好きだから、雑誌を作るのも含め、いろいろな活動を通してビーチバレーを普及していくことが一番の目標ですか。

そうです。大好きだし本当に楽しいスポーツなので多くの人に知ってもらいたいです。伝えるカタチとしての雑誌はいつまで続けられるかはわかりませんが、伝えることは一生やっていきたい。ライフワークですね。


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できる限りコートの近く、砂かぶり席で楽しんでほしい。

できる限りコートの近く、砂かぶり席で楽しんでほしい。
――7月にある「FIVBビーチバレーボールワールドツアー2019 4-star 東京大会」は国際大会だと聞いています。いま強い国はどこなんですか?

インドアのバレーがもともと強いアメリカ、ブラジルはビーチバレーも強いですが、最近はヨーロッパも強くて、ドイツとか北欧、ラトビアとかノルウェーなどにも注目してます。選手たちもみんなかっこいいし、かわいいし素敵ですよ。7月の東京大会はいろんなスタイルのビーチバレー、試合が楽しめると思います。

――2020年もありますし、今年ビーチバレーをはじめて見るという方も多いと思うんですけど、はじめての方でも楽しめる見方とか、ポイントはありますか。

ポイントは人それぞれだと思うんですけど、やっぱりコートと観客席が近くて、砂かぶり席で見られるっていうのが、観客の一番の特権だと思うので、できる限り近くで見ていただければ、すべてが面白いのではないかなと思います。暑いですけどね。

――確かに大迫力ですよね。

試合中に選手たちがしゃべっている内容だったり息遣いだったり、肌の汗の質感とかがめちゃくちゃかっこいい。試合以外でも会場内をウロウロしている選手たちとの距離感が近いところも楽しんでもらえると思います。

――本当にビーチバレーの選手って日焼けした肌といい、スタイルもいいし健康的で美しいですよね。7月を楽しみにしています!ありがとうございました。

吉田さんに取材しつつ、はじめてのビーチバレー観戦でした。いろいろ教えていただけて、勉強になり、楽しかったです。ビーチバレーはコートの近くで迫力あるプレーを見るのもいいですし、気持ちいい海風の中で、ビール片手にノンビリ観戦するのもよさそうだなと思いました。来年も楽しみです。


※記事の情報は2019年6月21日時点のものです。


Vol.1はこちら


〈FIVBビーチバレーボールワールドツアー2019 4-star 東京大会〉

日程:

7月24日(水) 予選
7月25日(木) プール戦
7月26日(金) プール戦/Lucky Loser Round of 16
7月27日(土) Round of 16/準々決勝/準決勝
7月28日(日) 3位決定戦/決勝戦

会場:
潮風公園(東京都品川区東八潮)


〈マイナビ ジャパンビーチバレーボールツアー2019〉 日程


「マイナビジャパンビーチバレーツアー2019」

【BVT1】※オリンピック、国際大会出場を目指す選手が参加

第1戦 平塚大会:
5月18日(土)・19日(日)
湘南ベルマーレひらつかビーチパーク(神奈川県平塚市)

第2戦 立川立飛大会:
6月8日(土)・9日(日)
TACHIHI BEACH(東京都立川市)

第3戦 沖縄大会:
7月6日(土)・7日(日)
豊崎美らSUNビーチ(沖縄県豊見城市)

第4戦 東京大会:
7月20日(土)・21日(日)
潮風公園(東京都品川区東八潮)

第5戦 松山大会:
8月24日(土)・25日(日)
松山城 城山公園(愛媛県松山市)

第6戦 都城大会:
9月21日(土)~23日(月・祝)
霧島ファクトリーガーデン(宮崎県都城市)

第7戦 名古屋大会:
9月28日(土)・29日(日)
名城公園 tonarino(愛知県名古屋市)

ファイナル:
10月12日(土)・13日(日)
グランフロント大阪 うめきた広場、毛馬桜之宮公園 大阪ふれあいの水辺(大阪府大阪市)

*株式会社アクティオはマイナビジャパンビーチバレーボールツアー2019に協賛しています。

  • プロフィール画像 吉田亜衣さん「ビーチバレースタイル」編集長〈インタビュー〉

    【PROFILE】

    吉田亜衣(よしだ・あい)
    埼玉県出身。ビーチバレーボールスタイル編集長、ライター。
    バレーボール専門誌の編集 (1998年~2007年)を経て、2009年に日本で唯一のビーチバレーボール専門誌「ビーチバレーボールスタイル」を創刊。オリンピック、世界選手権を始め、ビーチバレーボールのトップシーンを取材し続け、国内ではジュニアから一般の現場まで足を運ぶ。その他、スポーツナビ、ビクトリーなどのWEB媒体の執筆、実業之日本社、メイツ出版などのバレーボールや他スポーツの実用書の編集も行っている。また、公益財団法人日本バレーボール協会のオフィシャルサイト、プログラム、日本ビーチ文化振興協会発行の「はだし文化新聞」などの制作にもかかわっている。
    ビーチバレーボールスタイル:https://bvstyle.net/

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