【連載】創造する人に役立つ文房具
2020.11.11
菅 未里
クリエイティブではない時間を減らす、ちょっとした投資
モノを書くことを覚え始めた幼少期からずっと身近にあるペンやノートなどの文房具。いま改めてその世界を覗き込めば、使い心地、デザイン、遊び心やユニークさなど、多様なアイテムがあり、進化を遂げていることに驚かされます。連載「創造する人に役立つ文房具」では、文具ソムリエール菅未里さんに、数ある文具の中から「使うことでクリエイティブな気持ちになれるアイテム」をご紹介いただきます。
集中しているときは、ちょっとしたことであっても、無駄なトラブルに時間をとられるのは避けたいものです。もう一度集中するまでには時間がかかりますから、生産性が著しく落ちてしまいます。
そんなトラブルの代表例が、実はハサミを使っている最中に生じる、あの問題です。
切れないハサミを使っていませんか?
誰もが日常的にハサミを使っていると思いますが、そのハサミ、ちゃんと切れているでしょうか。ハサミも、包丁や刀と同じ刃物なのです。
いえ、切るだけならば、鈍ったハサミでも可能です。しかし鈍った刃物こそ危険なのはハサミも同じ。へんに力んでしまいますから、ケガのリスクが上がるのです。
ところが、切れなくなったハサミを使っている方が実に多いのです。ケガに気を付けながら、ハサミを開いて刃をそっと爪に当ててみてください。このとき刃が爪に引っかからず、滑ってしまうようならその刃は鈍っています。
そんなハサミを使っていると、思うように切れず四苦八苦する羽目になるでしょう。
さらに、テープ類を切ることも多いと思いますが、困るのはテープがハサミにまとわりついてしまい、切れなくなること。粘着物が刃に残ると、その後の作業にも支障をきたします。
パーフェクトな「パーフェクトバリア」
刃物の街である岐阜県関市にある「林刃物」から、「パーフェクトバリア」というハサミが出ています。
お値段は2700円+税。これって高いと思いますか?
しかし、一度使えばまったく高いと感じなくなるでしょう。それほど圧倒的な切れ味を誇るのです。
まず、ハサミとしての精度が違います。2枚の刃を重ねて作るハサミは、重ね合わせの精度によって切れ味が著しく変わるのですが、そのことが実感できるでしょう。いえ、切らなくても、刃を開け閉めした瞬間に分かります。「しっとり」とした重厚な感覚は、安価なハサミにはないものです。
さらに、刃が違います。
切れ味を手に入れるために複雑な形状をしているだけでなく、粘着物がつかないよう、刃に特別なコーティングを施してあるのです。
もっとも、粘着物対策としてフッ素コートをしたハサミは他にもたくさんありますが、パーフェクトバリアは違います。通常のフッ素コートが厚さ数10ミクロンあるのに対し、1~3ミクロンの厚みしかない、きわめて特殊なコーティングをしてあるのです。
この薄さは重要です。というのも、通常のフッ素コートのハサミは、コーティングをしてから刃を付けるので、どうしても刃の部分にコーティングがない部分が生じてしまいます。
しかしパーフェクトバリアは、コーティングが極端に薄いため、刃の上にもコーティングを施してあります。このことが、粘着物が嘘のように切れる、独特の切れ味につながっています。本当に、べたべたのテープ類が紙テープのようにスパスパ切れるのです。驚きますよ。
ひとたびパーフェクトバリアを使えば、切れないハサミのためにどれだけ時間を無駄にしてきたかに気づくはずです。粘着物がつかないと切れ味も長持ちしますから、2700円はまったく高くありません。これほど効率的な投資は少ないのではないでしょうか。
【ご紹介したアイテム詳細はこちら】
パーフェクトバリア
※記事の情報は2020年11月11日時点のものです。
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【PROFILE】
菅未里(かん・みさと)
文具ソムリエール。
文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具の専門家として独立。
国内外で商品や売り場の企画・監修、各種メディア出演、メーカーのコンサルティング、執筆などを行っている。日経MJなど連載多数。
著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。
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