【連載】食べて、学んで、楽しめる!道の駅
2024.07.23
守屋之克
楽しい体験が盛りだくさん! 夏休みに訪れたい道の駅4選
楽しい夏休みシーズン到来! 車で出かける際に、道の駅に寄る機会も増えるのではないでしょうか。道の駅キュレーターの守屋之克(もりや・ゆきかつ)さんに、道の駅の多様な魅力を伝えていただく連載「食べて、学んで、楽しめる!道の駅」。第3回は「楽しい体験」をテーマに、夏休みに訪れたい道の駅をご紹介いただきます。
懐かしい小学生時代にタイムスリップ! 「道の駅 保田小学校」
「千葉県でいま、廃校になった小学校をリノベーションして道の駅にしているんです」。道の駅専門誌の編集長時代の2015年、関係者にそんな話をされたのが、今回紹介する「道の駅 保田小学校」との出会いでした。既に学校の跡地を道の駅にしたケースは全国に数例あり、珍しい話ではありませんでしたが、実際に訪問してみて、すぐにファンになったのを覚えています。
敷地内に一歩足を踏み入れると、在りし日の面影を上手に生かしながら改修したのがよく分かります。大きく姿を変えているところもありますが、細部をよく見ていくと机やイス、黒板やアルマイトの食器など、懐かしい備品がノスタルジックな世界にいざなってくれます。
この道の駅で体験したいのは、"宿泊"です。なんと、校舎が宿泊施設になっています。しかも各部屋は教室の雰囲気を残し、あたかも学校に泊まっている気分にさせてくれます。温浴施設「里の小湯」も併設されているので、お風呂の心配もいりません。翌朝は、夏休み恒例のラジオ体操に参加しましょう。眠い目をこすりながら参加した、あの夏の日にタイムスリップしたような体験です。
食事は飲食テナントが充実していて、 それぞれ給食メニューを提供しています。 ソフトめん、あげぱん、くじらの竜田揚げなど、懐かしいラインナップが味わえます。また、2023年10月には保田小に隣接する幼稚園をリノベーションした「道の駅保田小附属ようちえん」がオープンしました。屋内遊具などが充実しているので、子どもも退屈しません。ぜひ家族で訪れてほしい道の駅ですね。
自分だけのオリジナル和紙を作れる「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」
2014年、ユネスコの無形文化遺産に「日本の手漉和紙技術」が登録されました。その構成資産として、石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)と一緒に選ばれたのが、埼玉県の細川紙です。「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」は、そんな和紙文化の継承を行うために造られました。
道の駅としてのオープンは2016年。それまであった施設「東秩父村和紙の里」に道の駅機能を付け加えての登録となりました。それだけに昨今の機能性重視の道の駅とは一線を画し、池のある庭園や江戸時代に建てられたかやぶき屋根の紙漉(す)き家屋を移築した建物などがあり、のんびりした空気が流れています。
ここで体験したいのは"紙漉き"。天井の梁(はり)が印象的な紙漉き工房で、はがきや色紙の紙漉きができるほか、本格的な楮(こうぞ)*を使った和紙作りもできます(楮紙の紙漉き体験は要予約)。
*楮(こうぞ):クワ科コウゾ属の植物。古くから和紙の原料として使われている。繊維が太くて長く丈夫なため、障子紙や美術紙など幅広い用途に使用される。
簀桁(すけた)と呼ばれる道具を使ってやってみますが、これがなかなか難しい。すくった紙料液(和紙の原料を煮沸して臼で砕き水に溶解した液)が均等に広がらず、ムラができたり、きれいな四角にならなかったりします。ただそれもご愛敬。敷地内に咲く草花を採取して漉き込むことも可能で、自分だけのオリジナル和紙を仕上げることができます。
体験しなくても、和紙を使った一筆箋などさまざまな商品が販売されているので、お土産に購入するのもオススメ。手打ちそばが味わえる食堂や炭火焼きのイワナが味わえる屋外フードコートなど、素朴なグルメも魅力です。
ウミガメに餌やりができる「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」
南北に長い三重県の最南端。和歌山県との県境に位置する紀宝町(きほうちょう)は、白砂青松の海岸が続く風光明媚な場所にあります。実はこの紀宝町、全国の市町村で初めて「ウミガメ保護条例」を制定したことでも知られており、「ウミガメ水族館」のある「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」は、その拠点施設でもあります。
こちらでは、定置網(ていちあみ)などに引っかかってしまったウミガメをプールで保護しており、ケガから回復したら、再び海に帰す活動をしています。"水族館"と聞くと入館料を徴収して、飼育している生き物を展示しているイメージがありますが、こちらは餌やり体験など以外は無料です(その分、ぜひカメさんに餌をあげてくださいね)。
施設内には大きなプールがあって、ウミガメがその中を悠々と泳ぐ姿を見られますが、間近で見るとその大きさに驚かされます。プールは半地下になっていて、下から水中を泳ぐ姿を見ることもできます。ちなみにプールに近づくと、カメは餌がもらえると思って近づいてきますが、結構な迫力です。ほかにも陸ガメや子ガメのゾーンもあるので、時間を忘れて楽しめます。
また紀宝町は柑橘類の栽培が盛んな場所で、物産館には年間を通じてさまざまな品種の柑橘類が並びます。珍しいものだとオレンジとレモンを掛け合わせた「マイヤーレモン」(収穫期の10月~2月頃限定)がオススメ。完熟のものはそのまま食べられますが、酸味の中にオレンジのような甘みが加わった味わいです。もちろんお菓子やジュースなどの商品も充実しているので、お土産選びにも困らない道の駅です。
マングローブの森でカヌー体験! 「道の駅 奄美大島住用」
2021年、沖縄本島北部及び西表島、徳之島などと共に、ユネスコの世界自然遺産に登録された奄美大島。亜熱帯の照葉樹林が広がり、絶滅危惧種のアマミノクロウサギなども生息する原生林が残る島として、国内外から注目されているスポットです。
そんな自然豊かな土地にある「道の駅 奄美大島住用(すみよう)」は、「黒潮の森マングローブパーク」の一角にあり、道の駅としては2000年に登録されました。世界自然遺産登録に伴い、2022年には「奄美大島世界遺産センター」を併設。物産コーナーや奄美の郷土料理「鶏飯(けいはん)」が味わえるレストランもあり、それだけでも満足できる場所ですが、ここまできたら体験してほしいのが "カヌー"です。
カヌーツアー(要予約)は、午前中に3回、午後に4回開催しています。経験豊富なガイドさんが、初心者にも分かりやすくパドリングの仕方をレクチャーしてくれるので、安心です。川は緩やかな流れなので、水面のキラキラと光る様子を楽しみながらこいでいけます。水辺ではカニなどの生き物を見ることができ、世界自然遺産の美しいマングローブの森の中で、貴重な体験をすることができます。
カヌー体験が終わったら、高台にある展望台にも立ち寄ってみましょう。自分がこいできた場所とマングローブの森が一望できるので、また違った視点で楽しむことができます。なかなか簡単には訪問できませんが、唯一無二の体験ができること間違いなしなので、ぜひ訪れてほしい道の駅のひとつです。
※記事の情報は2024年7月23日時点のものです。
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【PROFILE】
守屋之克(もりや・ゆきかつ)
道の駅キュレーター。地図会社ゼンリン発行の「道の駅旅案内全国地図」の編集長を2006年から2021年まで務め、全国の道の駅の特色や魅力を発信。誌面の編集だけに飽き足らず、プライベートでも愛車の軽キャンピングカーで現地に足を運ぶ。2022年に独立。「道の駅キュレーター」と名乗り、道の駅の専門家としてテレビ、ラジオなど多数のメディアに出演。念願だった全駅走破も果たし、その数は1200駅を超える。
■X(旧Twitter):https://x.com/moriyayukikatsu
■YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC5dzBUllIgFMBHVZMn607gQ (道の駅兄弟)
■Stand FM:https://stand.fm/channels/61f11851299c4d500504ac1e (道の駅 for the Day)
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