【連載】ワクワクの宝庫! ご当地スーパー
2025.07.29
菅原佳己
買い物ってこんなに楽しかった!? 最先端のご当地スーパー「BLΛNDE研究学園店」(茨城県つくば市)
その土地ならではの食材やローカルフードなどが並ぶ「ご当地スーパー」。ディープな「地元食」のあるスーパーマーケットは、地域住民だけでなく観光客も買い物に訪れる人気スポットになっています。新連載「ワクワクの宝庫! ご当地スーパー」では、スーパーマーケット研究家の菅原佳己(すがわら・よしみ)さんに、地域の魅力が詰まった「ご当地スーパー」をご紹介いただきます。第1回は、スタイリッシュな空間が広がる「BLΛNDE研究学園店」です。
写真:菅原 佳己
食のワンダーランド「ご当地スーパー」へ
旅先で食べてみたいのは、地元の人々に愛されてきた「ご当地食」でしょう。それは、地元の人々が毎日食べても飽きないおいしさの地元食、ご当地の調味料、ご当地お菓子、ご当地パン、さらに郷土料理のお惣菜や地元のソウルフードなど。そんなローカルフードの全てがそろう場所が「ご当地スーパー」です。
この連載では、全国にあるさまざまな魅力にあふれたスーパーの中から、商品だけでなく、建物までまるごと楽しめるスーパーをご紹介します。案内役を務めるのは、ご当地スーパーに魅せられた私、スーパーマーケット研究家の菅原佳己(すがわら・よしみ)です。
これまでに全国のスーパー約1,000店舗を自腹で巡り、実際に買って食べたご当地食約4万食を、著書7作と新聞や雑誌の連載などで発信してきました。2023年には念願であったキャンピングカーで全国のご当地スーパーを巡る旅を敢行。「暮らすように、朝昼晩の3食をご当地スーパーで買って食べたい」という夢を叶えたところです。
では、私のご当地スーパーリストから、選び抜いた1店をご案内しましょう。好きにならずにはいられない、見目麗しい建築のご当地スーパー、茨城県つくば市の「BLΛNDE(ブランデ)研究学園店」へ。
自然豊かな街と融合したスタイリッシュな建築
茨城県を中心に、関東地方で200店舗に迫るスーパーを展開する「カスミ」が、2022年よりスタートさせた新業態が「BLΛNDE(ブランデ)」です。カスミのお膝元のつくば市に2店舗と、埼玉と東京に各1店舗の合計4店舗で営業中。とりわけ、「BLΛNDE研究学園店」は、周辺の環境にもマッチした美しい建築が際立ちます。
道路から見ると直線的な屋根が、両サイドの入口の前では大きくせり出した曲線に変化する
2022年2月に開店した「BLΛNDE研究学園店」は、鉄骨造、地上2階建、売り場面積1,997m²。木とガラスのつくり出す曲線と直線が印象的なデザインは、1店舗目の「BLΛNDEつくば並木店」と同じく、つくば市内の中山設計事務所によるものです。
1960年代に防風林として植樹され、大きく育った「テーダマツ」並木の一部を敷地内で保存している
自然豊かなつくばの街と融合する美しい建物の敷地内には、実は市が管理・保存する松並木があるため、公園として整備して地元に開放。自然と人に優しい空間を生み出しています。
買い物だけじゃない! 滞在を楽しむという提案
「BLΛNDE」はカスミが新しい価値を提案する、今までにないコンセプトのスーパーです。買い物をする場所というだけでなく、滞在することを楽しんでもらいたいと用意された、ほかのスーパーにはない商品や体験したことのないサービスと出会えます。
テラスのような2階から美しい売り場を眺めるのも楽しい
開放的な空間で味わうワインとチーズ
では、売り場を見てみましょう。入口は2カ所。松並木のある公園側から入ると、スケルトン天井の吹き抜けの空間が広がります。
屋外のマルシェのような開放感のある通路には、ワインやウイスキーを有料で試飲できるカウンターがあるのです。「BLΛNDE研究学園店」を楽しむなら、まずはここからスタート!
これがスーパー!? 開放感も味わえる有料試飲カウンターは、おひとり様もウエルカム
店内で販売する多彩なワインリストから、月ごとにソムリエが数本選び、オンメニュー。ワインによって価格は異なりますが、例えば、1本数千円する商品でも、グラスでほんのちょっぴり(30ml)や、グラスでたっぷり(90ml)など、1杯わずか数百円で試飲できるというわけです。
量り売りしてくれるので、「ハーフボトルをテイクアウト」なんていうことも可能。カウンターで飲みながら味わうおつまみだって、上質な生ハムやチーズが隣の売り場からやってきます。
私が訪れた日は、筑波山の麓でブドウを栽培し醸造する「つくばワイナリー」のワインを試飲できました
仕事帰りに寄って、まずはカウンターでゆっくり一杯飲んでから買い物を楽しむ人や、週末に「飲む」ために来店する常連客も少なくないのだとか。ソムリエと相談しながらゆっくり吟味する好みの味。ワイン&チーズがそろい、気に入れば買って帰れる。焦って店を後にするいつもの買い物と違って、余裕のある楽しい気分にスイッチが入ります。
人気の高い「響」「白州」「山崎」などウイスキーの試飲もあり。お好みの飲み方でどうぞ
最先端スーパーが大切にする対面販売
買い物を楽しむ余裕を提供してくれる最先端のスーパー「BLΛNDE研究学園店」。実は同店の販売方法は意外にも今はあまりスーパーでは見かけなくなった「対面販売」が主役です。
惣菜、鮮魚、精肉売り場の一部では、昭和世代には懐かしい「量り売り」が取り入れられています。「知識の豊富な店員さんと会話しながら、食を深く理解できるのが楽しい」とは、対面販売についてのファンの声です。
また、つくば市は研究学園都市として発展しながら、周辺には農地も広がる地域。近隣の農家から、レストランでも使われるようなオーガニック野菜や珍しい野菜がフレッシュな状態で届きます。
周辺が産地であることは、ローカルスーパーの強み
そして見ていて飽きないのは、丸魚がそのまま並ぶ鮮魚売り場。全国から集められたおいしい旬の魚介に混ざって、茨城の海で水揚げされた季節の魚も入荷されることも。
冬なら「アンコウ」、夏には「アナゴ」。「茨城産のアナゴ1尾、天ぷら用におろして。アラもください」なんてお願いして、別の売り場で買い物をして戻ってくる常連になってみたいものです。
ご褒美グルメ、知られざるスイーツ天国
筑波山の周辺にはブドウを自家栽培し、醸造するワイナリーもあるほど、気候と風土が果物づくりに向いた土地です。特に小美玉(おみたま)は酪農がとても盛んで品質が良いため、多くの乳製品につけられている「おみたま」の名。県産の卵とおみたまの牛乳を使ったプリンも豊富で、各社で味を競うほど充実しています。
店内にはミカン、ブルーベリー、メロン、サツマイモ、クリ、卵、牛乳を巧みに組み合わせたデザートがいっぱい。知られざる、地元由来スイーツの天国です。
良質な乳製品と季節の恵みが創造したスイーツ天国
プリン専門店の「つくばぷりん ふじ屋」と江戸時代から水戸藩御用達として和菓子をつくり続けてきた「亀印製菓」は、いずれも地元の名店。季節ごとの地元の名産品を原料に、プレミアムなスイーツを生み出しています。こんな専門店の味をスーパーで買えるのは、茨城にこだわり、食を楽しむことを目指す「BLΛNDE」だからできることでしょう。
つくばぷりん ふじ屋の茨城県産焼き芋"紅天使"使用「焼き芋ぷりん」「さしま茶ぷりん」、茨城県産栗使用「和栗ぷりん」(左)亀印製菓の「笠間栗 ふわふわクリーミー生大福」「笠間栗 ふわふわクリーミー生どら焼き」は秋だけの季節限定品(右)
もっとディープな地元食「みねサンド」
お次は、こだわりの食や、ご褒美スイーツだけじゃない、ご当地スーパーの懐の深さを感じてください。
ちょっと変わった具材で人気の「みねサンド」。謎めいた白い具と黄色の卵サラダの2層仕立てで、あっさりとしていながら食べ応えがあり、プチプチとした歯ごたえが最大の魅力となっています。
製造元のパン屋さん「つじや」の先代・辻みねさんが「給食のはるさめサラダがおいしかった」という姪っ子の言葉でつくり始めたという、はるさめサラダパン。考案者のみねさんの名前がついたご当地パンの白い具の正体は、はるさめなんです。最近は、カレー味も加わりパワーアップ。そんな、茨城県土浦市で局地的人気のソウルフードを買えるのも、ご当地スーパーの魅力です。
「みねサンド」(下)とその進化版「カレーみねサンド」(上)のセット
地域とつながる緑のオリジナル商品「MiiL KASUMI」
懐の深さは、自社オリジナル商品にも感じられます。「BLΛNDE」だけでなく、母体となる200店舗近くあるスーパー「カスミ」のオリジナルブランドである「MiiL KASUMI」(ミール・カスミ)は3種類。赤のラベルは食事を楽しむ定番がそろう「original(オリジナル)」。緑の「marché(マルシェ)」は地域とのつながりを持つ商品。金のラベルは安心でこだわりの商品「premium(プレミアム)」です。
緑のラベル「marché」は、地元素材を使用した商品が多いので、お土産探しに役立ちます。紅はるかをじっくり焼き上げた冷凍の焼き芋は、茨城県産の焼き芋メーカーのブランド「mikata」とのコラボ商品。半解凍でアイスのように食べる「冷やし焼き芋」が好評です。
緑の「marché」の茨城県産紅はるか使用「焼きいも」と「生きてるレタス」
栽培地から根付きで運ばれてくる「生きてるレタス」も緑の「marché」。キッチンで必要量を"収穫"すれば、採れたてレタスを味わえます。
地場で穫れた野菜をさらにおいしくするドレッシングも緑の「marché」。地元の有名レストランのシェフたちによる味の競演です
滞在をもっと楽しむために
最先端の滞在型スーパー「BLΛNDE研究学園店」を楽しむには、少しだけ準備が必要です。キャッシュレスによりすべてのサービスをフルに体験するために、あらかじめスマホにお買い物アプリ「Scan&Go」をダウンロードしておくと便利です。
滞在中の食事は、カフェや店内に何カ所もあるイートインスペースを利用できます。特に2階の席がオススメ。1階の美しい売り場を眼下に、大きな窓の向こうには、名峰・筑波山を望む絶景です。
2階からは筑波山を望むことができる
実は、この風景を見ながら、毎日無料でコーヒーを飲める方法があるんです。「BLΛNDE prime」Gold会員(年会費5,000円)になれば、さまざまなサポートを受けられるほか、来店につき1杯コーヒー・紅茶無料サービス付き(私の計算では34日目に元がとれます)。
インテリアやオリジナル雑貨など、スーパーで感じるデザインの世界
いかがでしたか?
毎日の生活と食を助けてくれるスーパーですが、ときには少し遠くのご当地スーパーに足を延ばしてみるのも楽しいものです。新しい食との出会いを、美しいスーパーで体験しない手はありませんね。
電話:029-893-6336
住所:茨城県つくば市研究学園3-23-3
営業時間:10:00~22:00
定休日:なし
電車でのアクセス:つくばエクスプレスTX研究学園駅から車で約5分
車でのアクセス:首都圏中央連絡自動車道つくば中央ICから約5km
駐車場:125台
※記事の情報は2025年7月29日時点のものです。
※価格は税込みです。
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【PROFILE】
菅原佳己(すがわら・よしみ)
スーパーマーケット研究家
1965年生まれ。東京・御徒町で育ち、駅前のスーパー「吉池」で「奥さん」と呼ばれる小学生時代を過ごす。子育てしながら書いた「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」(2012/講談社)の出版後、TBS「マツコの知らない世界」に出演すると、紹介した飛騨の日常食「あげづけ」が大ブレイク。2019年に一般社団法人全国ご当地スーパー協会を設立。5月11日ご当地スーパーの日に、ご当地スーパーブランプリを発表。著書7作目の最新刊は朝日新聞で7年続く連載「お宝発見 ご当地食」をまとめた「47都道府県 日本の地元食大全」(2025/平凡社)。日夜、全国のご当地スーパーを巡り、隠れたご当地食を掘り起こしている。
公式サイト:https://www.gotouchisuper.online/
Instagram:https://www.instagram.com/i_love_supermarket/
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