歴史的建築物も地元食も味わえる! 鴨川のほとりのランドマーク的ご当地スーパー「フレスコ河原町丸太町店」(京都府京都市)

【連載】ワクワクの宝庫! ご当地スーパー

菅原佳己

歴史的建築物も地元食も味わえる! 鴨川のほとりのランドマーク的ご当地スーパー「フレスコ河原町丸太町店」(京都府京都市)

その土地ならではの食材やローカルフードなどが並ぶ「ご当地スーパー」。ディープな「地元食」のあるスーパーマーケットは、地域住民だけでなく観光客も買い物に訪れる人気スポットになっています。連載「ワクワクの宝庫! ご当地スーパー」第2回は、歴史的建築物の中で京都の日常食と出会える「フレスコ河原町丸太町店」をご紹介します。

写真:菅原 佳己

歴史の街の" 登録有形文化財内スーパー"

「先の戦争と言えば、応仁の乱」とは、京都人らしい時の流れの尺度を感じる笑い話。もしかすると今回ご紹介するスーパーの建築物は、古都においては「新しいビルディング」と認識されているのかもしれません。


そんな京都の鴨川のほとりで重厚な雰囲気を醸すのは、「フレスコ河原町丸太町店」。大正時代に建てられた建築物で、現在は国と京都市の登録有形文化財となっています。


「フレスコ河原町丸太町店」が入っている建物建物の設計は当時の逓信(ていしん)省技師・吉田鉄郎によるもの。鴨川の右岸に位置し、鴨川の四季折々の風景と不思議とマッチする


「フレスコ」は、株式会社ハートフレンドが京都を中心に大阪、兵庫、滋賀に100 店舗以上展開するスーパーマーケットです。ほとんどの店舗はスーパーらしい建物ですが、2010 (平成22)年6月にオープンした「フレスコ河原町丸太町店」が入っている建物は、ほかとは一味違います。この建物は1923(大正12)年、京都中央電話局上分局の庁舎として、逓信省技師・吉田鉄郎の設計で建築されました。1959(昭和34)年に廃局されてから、ほかの用途に活用されてきたため、営業を開始した時点ですでに当時の内部の形態はかなり失われていたそうです。


フレスコ河原町丸太町店大正時代の姿を残すレトロな外観で、地域のランドマーク的存在となっている


ちなみに、吉田の代表作にはほかに、近代建築の傑作といわれる、かつての東京中央郵便局庁舎(KITTE丸の内に一部保存)や大阪中央郵便局庁舎(KITTE大阪に一部保存)があり、いずれもモダニズム建築の特色をもちます。




歴史的価値ある建物が誘う、古都の食文化への入り口

「フレスコ河原町丸太町店」の建物は100年以上の歴史がありますが、京都の食文化の歴史はさらに長く、店内に並ぶ商品を通して、1000年以上続いた都の伝統を感じることができます。それでいて京都に暮らす人々が毎日の買い物をする場所でもあるため、観光ではなかなか味わうことができない京の日常食にも出会えます。


フレスコ河原町丸太町店店内は天井が高く、直線的な通路が続く


では、店内を見てみましょう。まずは入り口を入って左へ。惣菜売り場がおすすめです。客層は近くに暮らしている方だけでなく、働く人や学生さん、鴨川散策をする人なども多く、お弁当やお惣菜の品揃えが豊富です。


フレスコ河原町丸太町店つくりたてのお惣菜が並ぶ店内。店名の「Fresco(フレスコ)」はイタリア語で「新鮮な」という意味で、まさにみずみずしさが感じられる売り場


「おいなりさん」「黒酢 鯖棒寿司」「ひじきの炊いたん」「だし巻き(しらす・ねぎ)」「あご出汁じゅわっと高野豆腐」「おからの炊いたん」など、京のおばんざいも充実。本格的なおばんざいをお手頃価格で味わうことができます。


フレスコの「昔のコロッケ」本格的な京都のおばんざいをお手頃価格で買うことができる




愛される、フレスコ名物やオリジナルの味

伝統の味を好む一方で、いち早く洋食文化を取り入れた「新しもの好き」といわれる京の人々の味覚。フレスコオリジナルの商品は、そんな京都人の舌も好奇心もわしづかみにするお惣菜・お弁当から生鮮食品、スイーツ、調味料までを網羅します。


フレスコ名物「こぼれおはぎ」は、九州&滋賀県産もち米の上に風味豊かなあんこを、こぼれるほど盛りつけた、見た目も楽しい和スイーツ。甘すぎず、小豆のおいしさで2個はぺろりと食べられます。緑色の「ずんだこぼれおはぎ」も人気です。


フレスコ名物「こぼれおはぎ」フレスコ名物「こぼれおはぎ」


京都はパン消費量の多さでも有名で、フレスコの看板商品のひとつである「自家製カツサンド」は、「あごが痛くなるくらいカツが厚い」と言われるほどのカツが自慢です。散策にちょうどよい季節になれば、鴨川のほとりに持ち出して食べたら楽しそうですね。


フレスコの「自家製カツサンド」看板商品の「自家製カツサンド」


じつは「自家製カツサンド」の陰には、もうひとつの人気商品があるんです。それは、カツサンドの製造過程で出てしまう、カットされたパンのミミ。パンのミミとはいえ、たっぷりのソースと辛子マヨ、そしてカツの端っこもちゃんと入っています。熱烈な「カツサンドのミミ」ファンもいる、陰の人気者です。


フレスコの「カツサンドのミミ」隠れた人気商品の「カツサンドのミミ」


そして、創業以来30年以上も高い人気を誇るのが、「昔のコロッケ」です。じゃがいものおいしさがしっかり味わえる素朴なビーフコロッケで、街歩きで小腹がすいたときにもぴったり。


フレスコの「昔のコロッケ」「昔のコロッケ」3個入り




京都の伝統の味はお土産にもぴったり

京都の伝統を感じる商品も豊富に揃います。例えば、錦市場で90年以上、京の人々に支持されてきた「野村佃煮」のおかず。京料理を基本とした昔ながらの味わいが特徴で、特にちりめん山椒(さんしょう)や角切山椒昆布といった佃煮は、野村佃煮の定番中の定番。まさに京都の味です。


野村佃煮「野村佃煮」の佃煮は、お土産にも最適


もちろん、京都ならではの漬物もあります。京漬物ブランド「匠洛庵(しょうらくあん)」の「きざみすぐき」や「志葉漬(しばづけ)」などが、京都を感じるデザインの袋に入って並んでいます。ご飯のおともとしてだけでなく、酒のつまみやぶぶ漬け(お茶漬け)など、乳酸発酵させた本物の味をぜひ体験してください。京都の食卓は漬物なしには語れません。


匠洛庵の漬物旬の野菜をつかっている京都・伏見の「匠洛庵」の漬物各種


「フレスコ河原町丸太町店」の入り口を入って右側には、京都の酒造会社の商品やおつまみやあられが並ぶコーナーがあります。お店の担当者が、純米酒「聚楽第(じゅらくだい)」720mlと柳本製菓のあられ「桂川」という、京都らしい酒とあられのマリアージュを楽しめる組み合わせを教えてくれました。「聚楽第」は京都出身の俳優、佐々木蔵之介さんの実家として知られる佐々木酒造製。その土地のお土産を探すのも、ご当地スーパーの楽しみ方のひとつです。


「聚楽第」と「桂川」京都らしい酒とあられのマリアージュを楽しめる「聚楽第」と「桂川」は、お土産にしても喜ばれそう




街並みになじむ京町家風「フレスコ堀川店」

最後に、同じ地域にある、もうひとつのフレスコを紹介しましょう。「フレスコ河原町丸太町店」とはまた別の魅力ある建築で人気を得ている、京町家風の「フレスコ堀川店」です。


フレスコ堀川店堀川を渡ると見えてくる、京都の街になじむ店構え


「フレスコ堀川店」の入っている建物は歴史的建築物ではありませんが、元離宮二条城の北、堀川通沿いにあり、「京都らしい外観」として、街に溶け込む配慮を感じます。「フレスコ河原町丸太町店」とは、京都御苑を挟んだ東と西の位置関係。歩きやバスなどで2軒をハシゴしながら二条城や京都御苑の観光も楽しめます。


フレスコ堀川店ディテールにもこだわった建物は、外国人にも人気のフォトスポットになっている




京都の日常食を非日常な建築とともに!

今回は京都のご当地スーパー「フレスコ」の、特徴のある建築の2店舗をご紹介しました。京都市内にあるフレスコなら、今回ご紹介したオリジナル商品や京都の老舗メーカーの商品の取り扱いがありますが、京都の日常食との出会いを非日常な建築物と一緒に楽しめるのが、「フレスコ河原町丸太町店」と「フレスコ堀川店」です! ぜひ訪れてみてください。

【SHOP DATE】

■フレスコ河原町丸太町店
電話:075-231-7211
住所:京都市上京区丸太町通河原町東入ル駒之町561-1
営業時間:24時間営業
定休日:不定休
電車でのアクセス:京都市営地下鉄烏丸線「丸太町駅」下車、徒歩14分
駐車場:なし

■フレスコ堀川店
電話:075-813-5931
住所:京都市上京区下立売通堀川西入ル西橋詰町290
営業時間:9:00~21:45
定休日:不定休
電車でのアクセス:京都市営地下鉄烏丸線「丸太町駅」下車、徒歩15分
駐車場:なし


※記事の情報は2025年9月30日時点のものです。

  • プロフィール画像 菅原佳己

    【PROFILE】

    菅原佳己(すがわら・よしみ)
    スーパーマーケット研究家
    1965年生まれ。東京・御徒町で育ち、駅前のスーパー「吉池」で「奥さん」と呼ばれる小学生時代を過ごす。子育てしながら書いた「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」(2012/講談社)の出版後、TBS「マツコの知らない世界」に出演すると、紹介した飛騨の日常食「あげづけ」が大ブレイク。2019年に一般社団法人全国ご当地スーパー協会を設立。5月11日ご当地スーパーの日に、ご当地スーパーブランプリを発表。著書7作目の最新刊は朝日新聞で7年続く連載「お宝発見 ご当地食」をまとめた「47都道府県 日本の地元食大全」(2025/平凡社)。日夜、全国のご当地スーパーを巡り、隠れたご当地食を掘り起こしている。
    公式サイト:https://www.gotouchisuper.online/
    Instagram:https://www.instagram.com/i_love_supermarket/

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