【連載】新しい扉を開く“ひとりホテルステイ”
2023.09.26
まろ
めくるめく、クラシックホテルの世界。ストローの袋まで愛でられる、独特な魅力
歴史ある「クラシックホテル」で、細部までこだわり抜かれた空間を堪能する――。おひとりプロデューサーとして活躍するまろさんに、ひとりで過ごすのにぴったりなホテルを教えていただく連載「新しい扉を開く"ひとりホテルステイ"」。今回のテーマは「クラシックホテル」です。
こんにちは! ひとり時間の過ごし方を提案する「おひとりさま。」というメディアを運営している、まろです。この連載では、ひとりステイを通して"新しい扉"が開くような、自分の感性が刺激される国内のホテルを、テーマ別にまとめて紹介していきます。第2回は、私がドはまりしている「クラシックホテル」です。
クラシックホテルとは?
クラシックホテルとは、日本のホテル黎明期に創業し、戦前・戦後を通して西洋のホテルのライフスタイルを具現化してきたホテルと定義されています。
認定を受けた9つのホテルが加盟する「日本クラシックホテルの会」があり、クラシックホテルパスポートまで発行されているのです(私も持っているのですが、加盟ホテルに宿泊してスタンプを貯めると、お食事券や宿泊券があたるチャンスも!)。
今回は、この「日本クラシックホテルの会」にも加盟しているホテルを、3つ紹介します。古き良き時代にできたからこその、ディテールに至るこだわりは圧巻ですよ!
クラシックホテル界の王様。憧れの「富士屋ホテル」
箱根・宮ノ下にある「富士屋ホテル」。言わずもがな日本を代表する、1878(明治11)年創業のクラシックホテルです。"クラシックホテル界の王様"と言っても過言ではないでしょう。
創業以来、数々の増改築を経て、箱根を象徴する壮大な建築群のホテルとなり、現在約7,600坪という広大な敷地に4つの宿泊棟で構成されています。それぞれ趣が異なるので、どこに宿泊しようか悩むところから、ワクワクしますね。
また敷地内には、庭園やレストラン、ラウンジ、バー、さらには富士屋ホテルの誕生から現在までの道のりが分かる「ホテル・ミュージアム」が! それぞれの場所で空間を堪能した後、ミュージアムに行くと「こういうことだったのか!」と、点と点とがつながる感覚があり、とても面白かったです。
このディテールが素晴らしい! と語りたいことはたくさんあるのですが、とてもひとつの記事に収められないので (笑)、私の一番のお気に入り、「メインダイニングルーム・ザ・フジヤ」の柱のお話を。
じーっと鬼の形相でにらんでいる人が見えますよね?! 実はこの柱の彫刻、ホスピタリティーに特に厳しかった3代目社長・山口正造(やまぐち・しょうぞう)氏をモデルにしているそうで、サーブしているスタッフを常に監視しているんだそう(笑)。ホスピタリティーを重んじる富士屋ホテルの"イズム"が、こんなユーモアに体現されているなんて、素敵ですよね。
私が一番感動したのも、そんな彼らのホスピタリティーとホテルへの愛でした。ディナー中もとにかくひとりでディテールに目を凝らし、ストローの袋にまで見惚れていたら、スタッフの方が「そんなところまで愛でていただいてうれしいです! ほかにもロゴがいろいろな場所に隠されているので、ぜひご覧ください」と。さりげない声掛けでしたが、この感動を共感できたことがとてもうれしかったです。皆さんもぜひ、スタッフの方との会話を通して、富士屋ホテルをじっくり味わってみてください。
全ての"不思議"が愛おしい。日本最古のリゾートホテル「日光金谷ホテル」
続いては、1873(明治6)年創業の、現存する日本最古のリゾートホテル「日光金谷ホテル」をご紹介します。漫画「おひとりさまホテル」第1巻でも登場します!
本館・新館・別館が国の有形文化財に登録されるなど、歴史が詰まったクラシックホテルの代表格です。白亜の本館に入る前から、美しい、趣のある建築に圧倒されるのですが、回転扉をくぐった先には、さらにタイムスリップしたような異世界が広がっています。
和洋折衷の不思議な魅力が詰まった空間で、創始者・金谷善一郎(かなや・ぜんいちろう)氏が日光東照宮に勤めていたこともあり、日光東照宮をイメージしたものがちりばめられているのも特徴的。このほかにも愛らしい生き物の彫刻が多くてほっこりするのですが、そのいっぽうで白亜の階段に赤い絨毯が敷かれていて......このなんとも言えないカオスな感じが、私はすごく好きなんですよね。
こちらのダイニングのサインもお気に入り! いい意味で手作り感があって、愛おしいんです。金谷ホテルはもともと、創始者・金谷氏の自宅の一部を宿泊施設として開業したのが始まりと伝えられているようで、その名残か、アットホームな空気感が心地いいんですよね。
ダイニングでいただいた朝食の光景も、忘れられなくて......。秋に訪れたので紅葉がとてもきれいでしたが、雪景色も美しいそうなので、いつかまた冬に行ってみたいなと思っています。
日光金谷ホテルでは館内ツアーも定期的に開催されているので、宿泊の際にはぜひ参加してみてください。
豪奢かつ華麗な意匠の「奈良ホテル」。"関西の迎賓館"で、優雅なひと時を
1909(明治42)年、奈良公園内に"関西の迎賓館"として誕生した「奈良ホテル」。東京駅や日本銀行本店などを手掛けた建築家・辰野金吾(たつの・きんご)氏が設計した、風格のある瓦葺(かわらぶ)き建築です。
内装は桃山風の豪奢かつ華麗な意匠で、重厚感たっぷり。館内入ってすぐ、格子天井と大階段、和風シャンデリアの光景は圧巻です。息を飲む美しさとは、このことだなあと......。
赤絨毯の階段・廊下もとても荘厳で、美しいんですよね。こういった一瞬の日差しが入った美しさを見逃さずにいられるのは、ひとりステイの良いところ。
そして、私が奈良ホテルの中で一番好きなのが、本館のこのお部屋。創業当時の木造建築に泊まれるうえ、格天井で、創業時のマントルピース(暖炉)も残っていて、優雅でノスタルジックな時間を過ごすことができます。朝、木漏れ日が差し込んだときの美しさといったら......。
いかがでしたか? クラシックホテルには、100年を超える歴史的な意匠が随所にちりばめられているので、ひとりでディテールまでじっくり味わうのがおすすめです。特に夜は人も少なく、館内をゆったり散策しやすいですよ(宿泊者の特権!)。
ぜひ、クラシックホテルパスポートを片手に、それぞれのホテルのストーリーに思いを馳せながら、いろんなクラシックホテルを巡ってみてください。
※記事の情報は2023年9月26日時点のものです。
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【PROFILE】
まろ
おひとりプロデューサー。ひとり時間の楽しい過ごし方を提案するメディア「おひとりさま。」をInstagram(@ohitorigram)中心に運営。Instagramのフォロワーは6万人超 (2023年10月現在)。 自身が原案のマンガ「おひとりさまホテル」(漫画:マキヒロチ氏)のコミックス第2巻が発売中。「Hanako.tokyo」での「まろが行く。ひとりホテルのすゝめ」(https://hanako.tokyo/tags/maro-hotel-alone/)連載など執筆活動を行うほか、ホテルなどとコラボして、おひとりさま向けプランの企画・プロデュースも手掛ける。2023年7月には"ひとり時間をみんなでつくる"会員制コミュニティー「おひとりくらぶ。」をオープン。
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