オフィスに備えたい防災グッズ|本当に必要な備蓄品リスト、置き場所をご紹介

【連載】防災士おすすめ! 会社員のための防災グッズ

防災士:矢野きくの

オフィスに備えたい防災グッズ|本当に必要な備蓄品リスト、置き場所をご紹介

あなたの会社の災害対策は万全ですか? 連載「防災士おすすめ! 会社員のための防災グッズ」では、防災士の矢野きくの(やの・きくの)さんに、会社員として日ごろから備えておきたい防災グッズをご紹介いただきます。第1回は「オフィスに備えたい防災グッズ」です。会社に置いておくべき、最低限必要なものをリスト化していただきました。

こんにちは。家事アドバイザー・防災士の矢野きくのです。家事アドバイザーとして20年以上、家事の効率化をはじめとする暮らし方をテーマに、テレビ出演や講演、コラム連載の 執筆活動などをしております。その中で元来の「備え体質」もあり、家庭での防災対策について触れてきました。


2011(平成23)年の東日本大震災以後は福島県いわき市の応援をしており、実際に被災された方の生の声を聞く中で、よりいっそう防災に対する考え方も強くなり、きちんと話をしたいと防災士の資格を取得。「当たり前に備えることの大切さ」を提唱しています。


これから3回の連載で、オフィスでの防災についてご紹介していく予定です。オフィスでの防災グッズは何を用意したらいいのか、実際に使える防災グッズはどのようなものかなど、ご紹介します。


【目次】




地震の多い国、日本の現状

1995(平成7)年に阪神・淡路大震災が起こってから今年で30年。また昨年の元日には能登半島地震が発生し、今もなお、不便な生活を余儀なくされている方々がいらっしゃいます。2011年の東日本大震災から14年の間でも、日本国内では震度7を記録した地震が4回も発生しているのです。


・2011年 「平成23年 東北地方太平洋沖地震」


・2016年 「平成28年 熊本地震」


・2018年 「平成30年 北海道胆振東部地震」


・2024年 「令和6年 能登半島地震」


日本は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートという4つのプレートの上に位置しており、 地震が多い国であることは周知の事実でしょう。


さらに、南海トラフ地震や首都直下地震は、今後30年のうちに80%の確率で発生するといわれています。


南海トラフ地震は、予想される"最悪のケース"として死者行方不明者が約32万3,000人といわれており(国土交通省「南海トラフ巨大地震を知る」)、首都直下地震(都心南部直下地震)では、死者 6,148人、負傷者9万3,435人、避難者299万人、帰宅困難者453万人という被害が想定されています(東京都防災ホームページ「首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)」)。


南海トラフ巨大地震 地表震度分布図南海トラフ巨大地震 地表震度分布図
(出典:平成24年8月29日 内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について」―「基本ケースの震度分布」)


都心南部直下地震(マグニチュード7.3)の震度分布都心南部直下地震(マグニチュード7.3)の震度分布
(出典:令和4年5月25日 東京都防災会議「東京都の新たな被害想定~首都直下地震等による東京の被害想定~」)


想定されている2つの巨大地震のみならず、近年は過去にはなかったような集中豪雨などさまざまな自然災害が考えられ、一人ひとりが自分を守る手段を備えておかなくてはならないのが、今の日本なのです。




オフィス防災の重要性とは? 会社に防災グッズが必要な理由

防災グッズや備蓄というと、自宅に備えておくものをイメージされる方も多いのではないでしょうか。しかし会社に通勤している人であれば、1日24時間のうち3分の1ほどの時間をオフィスで過ごしている人も多いはずです。


この場合、災害が発生したときにオフィスにいる確率も3分の1となり、その分の備えをしておかなければなりません。ましてや自宅であれば多くのものがあり、それらを利用できますが、オフィスとなるとそうもいきません。


災害発生時、人命救助のデッドラインは72時間といわれてお り、大きな災害が発生した際には3日間は救助・救命活動を優先させる必要があります 。そのため、一斉帰宅が救助・救命活動の妨げとならないよう、発災後3日間は施設に待機できるよう、企業などが準備する必要があるのです。


これはもちろんケース・バイ・ケースですが、交通機関が壊滅して文字通り帰宅困難になることもありますし、無理に移動せず、オフィスにとどまらなくてはならない事態も考えられます。


そのためにも、自分を守るための防災グッズを会社にも備えておく必要があるのです。




〈会社に防災グッズを備える前に〉勤務先で起こり得る被害や備蓄品を確認!

会社に防災グッズを備える際に、まずは勤務先でどのような被害が想定されるのかを調べる必要があります。大きな地震だったとしても、津波が想定される地域か、土砂災害が想定される地域か、また会社の建物、そして近隣の建物によっては火災被害も想定しなくてはなりません。


まずは各自治体のホームページにある「ハザードマップ」を確認して、会社近辺で起こり得る被害を知っておきましょう。


また、勤務先やオフィスが入っているビルが、防災グッズや食料の備蓄をしている場合があります。この場合、何がどこに備えられているのかも予め確認しておきましょう。




会社に備える防災グッズ【必要なものリスト】 オフィスでの寝泊まりも想定

防災グッズを考えるとき、災害の内容とタイミングに合わせて考える必要があります。


大きな地震であれば、机の下に隠れるというのが昔からいわれていることです。しかし近年は、机の下に隠れることが必ずしも正しいとは限らないともいわれ始めています。これも建物の強度や周りの状態によるので、勤務先ではどのような行動をとるのがいいか、常日頃から考えておいてください。


その上で備えておきたい防災グッズがヘルメットです。

・ヘルメット

上から落ちてくるものから頭を守ることは重要です。勤務先で配られているところも多いでしょう。もしもないようであれば、最近では折りたためてコンパクトになるヘルメットもあるので備えておきましょう。


収縮式ヘルメット「オサメット」(加賀産業株式会社)収縮式ヘルメット「オサメット」(加賀産業株式会社)


折りたたんでコンパクトに収納でき(左)、すぐに広げて被れる(右)折りたたんでコンパクトに収納でき(左)、すぐに広げて被れる(右)


前述のとおり、帰宅困難などでオフィスにとどまり寝泊まりすることも考えられます。少しでも快適な寝泊まりのために、着替えや、女性であればクレンジング、基礎化粧品......と考える方もいるかもしれません。ただし、大きな災害で帰宅できないという切迫した状態であることを念頭におき、防災グッズを考える必要があります。

・水

人が生きていくには1日2Lの水が必要といわれています。生活用水を含めると3Lですが、会社と考えれば2Lでいいでしょう。

・食料

頻繁に防災グッズを入れ替えるのも手間がかかると思うので、できる限り日持ちがするもの、エネルギーとなるもの、喉が渇かないものという視点で考えます。ゼリータイプの栄養ドリンクや、糖分がとれて長持ちするようかん、シリアルバーなどがおすすめです。


長期保存できる災害用の飲料水(左)と、チョコようかん(右)長期保存できる災害用の飲料水(左)と、チョコようかん(右)

・防寒具

人が生きていくために必要なもので、水、食料の次に大切なのが防寒具です。極寒であれば命にも関わりますし、寒いだけでも体力を奪われてしまいます。場所をとらずに暖をとれるものと考えると、着なくなったダウンジャケットがあれば理想的です。ダウンジャケットはコンパクトに圧縮することができます。また防寒用のアルミシートなどもあると良いでしょう。


防寒になるアルミシート「緊急簡易ブランケット」(小久保工業所)防寒になるアルミシート「緊急簡易ブランケット」(小久保工業所)


140×210cmと大きなサイズ。1枚で体全体を覆うことができる(写真提供:小久保工業所)140×210cmと大きなサイズ。1枚で体全体を覆うことができる(写真提供:小久保工業所)

・生理用品

女性の場合は生理用品も防災グッズの中に入れておきましょう。

・除菌ウェットティッシュ

本来寝る場所ではない会社で寝泊まりをすることや、断水の可能性も考えて、この時点で感染症にならないためにも除菌ウェットティッシュがあると安心です。

・ノンアルコールのウェットティッシュ

体を拭きたいときなど、ノンアルコールのウェットティッシュがあると便利です。

・マスク

感染症を防ぐのと同時に、地震のときは場合によっては、周囲の空気がホコリだらけという状態になることも考えられます。

・照明となるもの

停電になることも大いに考えられるので、照明となるものは用意しておきましょう。懐中電灯よりも置いて使えるランタン型のものがおすすめです。


ランタン型ライト「意外と便利なランタン」(鎌倉NaFro)。置いて使えて、コンパクトに収納可能ランタン型ライト「意外と便利なランタン」(鎌倉NaFro)。置いて使えて、コンパクトに収納可能

・ラジオ(防災ラジオ)

災害時の情報収集は命にも関わる重要なことです。スマートフォンの基地局が倒れて使えない場合や混み合って使えないというときでも、ラジオがあればある程度の情報収集は可能です。またできれば、自治体の防災無線が入る防災ラジオが勤務先に1つあると安心でしょう。


(左)防災ラジオ (右)太陽光で充電できるほか、手回し充電も可能(左)防災ラジオ (右)太陽光で充電できるほか、手回し充電も可能

・モバイルバッテリー

これはもちろんスマートフォンを充電するためのものです。モバイルバッテリーは常日頃から持ち歩いておくべきものですが、災害時に会社にとどまることを考えると長時間になるので、防災グッズの中にも1つ入れておきましょう。ただし、定期的に充電状態をチェックしておくことをおすすめします。




会社に備える防災グッズ 備蓄品をどこに置く? 置き場所や収納方法

リュックに入れて足元、またはロッカーに置く

一般的なデスクが1人1つあるオフィスであれば、足元に置いておくのが良いでしょう。いざ防災グッズを持って移動するというときも、両手を空けておけるので、リュックに入れて足元に置いておくのがおすすめです。


リュックはできれば防水タイプのものか、防水カバーを用意しておくことをおすすめします。その後の移動で家まで帰るときなどを考えると、どんな天候にも対応できるようにしておきたいものです。


最近ではフリーアドレスで机が決まっていないという方は、ロッカーに入れておくといいでしょう。


非常用持出袋などのリュックに入れて、オフィスのロッカーに置いておく非常用持出袋などのリュックに入れて、オフィスのロッカーに置いておく


今回はオフィスでの防災として、会社に置いておく防災グッズをご紹介しました。自分の身を守るためには自分で備えるのがいちばんです。災害はいつやってくるかわかりません。まだ準備をされていない方はぜひ、今日から防災グッズを準備してください。


※記事の情報は2025年1月28日時点のものです。

  • プロフィール画像 防災士:矢野きくの

    【PROFILE】

    矢野きくの(やの・きくの)
    家事アドバイザー・防災士・食育指導士・節約アドバイザー
    効率化を考えた家事術、暮らしの中での防災などを中心に、テレビ、講演、コラム連載などで活動。働く人向けの時短家事術、シニア層への家事改革などをアドバイス。「防災士」の資格を持ち家庭での備え、「食育指導士」の資格も持ち、食品ロス削減をテーマにした講演も定評がある。100円ショップや業務用スーパーでのお得な買い物術の紹介や、便利グッズの開発にも携わる。
    【テレビ出演】あさイチ、ニュースウオッチ9(NHK)/情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ)/ゴゴスマ~GOGO!Smile!~、Nスタ(TBSテレビ) 他。【連載実績】HONDA・東芝・イオン等企業のオウンドメディアや、日経新聞・時事通信 他。【著書】「幸せな時間とお金を生み出す! シンプルライフの節約リスト」(講談社) 他。

    公式サイト https://yanokikuno.jp/

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